※本ページ内の情報は2023年11月時点のものです。

高齢化の加速が止まらない日本。厚生労働省が2022年に公表した「介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について」 という報告によると、2025年にはさらに約32万人、2040年にはさらに約69万人の介護職員が新たに必要になるとのこと(2019年度(介護職員数211万人)比)。

日本では介護職員の数が足りず、将来的に介護サービスを満足に受けられない「介護難民」が増えるといわれている。そのような中、介護業界の人材不足をワークシェアリングサービスで解決しようと挑戦しているのがカイテク株式会社だ。

一体どのようなビジネスでこの大きな社会問題の解決に取り組んでいるのか、代表取締役社長の武藤高史氏に事業の特徴や強み、今後の展望を聞いた。

介護のワークシェアリングサービスで人材不足問題の解決を目指す

――はじめに、どのような事業をしているのか教えてください。

武藤高史:
私たちはワークシェアリングサービスを通して、介護・医療分野の人材不足を解消することを目指しています。具体的には、介護職や看護師の資格を持った方が専用のアプリで単発の仕事を探し、空いた時間を活用して介護施設や医療機関で働けるオンラインサービスを提供しています。介護職や看護職の方はすぐに収入を得られますし、介護施設や医療機関は人材不足を解消できるので、双方にとってメリットがあります。

――どのような人がワーカーとして登録されているのでしょうか。

武藤高史:
弊社では事前にワーカーの本人確認や資格証の確認を済ませ、即戦力として活躍できる有資格者のみをマッチングしています。

登録者のタイプは大きく2つに分かれており、1つ目のタイプはすでにほかの介護事業所でパートとして働いているけど、さらに収入を伸ばしたい人。そしてもう1つのタイプは、資格は持っているけど子育てなどで現在仕事をしておらず、家事や育児との兼ね合いを見ながら都合の良いタイミングで不定期に働きたい人です。

有資格者の中で、もっと働きたい方々や現在働いていない方々へ働く機会を提供できれば、業界が慢性的に抱える人材不足の課題解消にもつながると考えています。

また、必要なときにだけ働いてもらうスタイルになるので、施設や事業所側はコストを抑えられるのもメリットです。

祖父の認知症をきっかけに介護分野で起業

――武藤社長が介護事業で起業されたきっかけについてお聞きしたいです。

武藤高史:
大きなきっかけは、祖父が認知症になったことです。私は起業家だった祖父に憧れていたのですが、そんな祖父が認知症であっという間に別人になってしまったことにショックを受けました。それと同時に、介護サービスは社会にとって非常に大切なものだと実感しました。

それから介護業界について調べていくうちに、高齢者が増えている日本にとって介護は非常に重要な社会インフラサービスであるにも関わらず、人材が少ない持続性の低い状況だと知りました。

このままだと将来、まともに介護サービスを受けられない介護難民が多数出てくるかもしれない。自分自身も介護職で働く中で、現場のリアルな人材不足の問題を痛感しました。どうしたら人材不足の問題を解消できるのかを考えたとき、介護医療業界でワークシェアリングサービスを実装すれば問題を解消できる可能性があると思いました。

現場を知る経験豊富な社員によるコンサルティングが強み

――ワークシェアリングサービスは今注目を集めており、参入している企業も多いかと思います。どういった点で他社との差別化を図っていますか。

武藤高史:
即戦力として顧客のニーズを満たせるワーカーだけをマッチングしている点は弊社の強みであり、実際に顧客からも高い評価をいただいています。

また、アプリにはそれぞれのワーカーの信用度を測るスコア機能を設けており、評価によってインセンティブが変わるようにもしています。

さらに、担当者による施設へのコンサルティングを通して、その施設ではどのような人材が必要なのかを把握し、顧客ニーズを満たせるような提案もしています。

――コンサルティングとはどういったものなのか教えていただけますか。

武藤高史:
たとえば介護施設の施設長のもとへうかがって、その施設の一日の業務の流れを聞いて分解します。そしてそれをもとに、「入浴介助の人材を増やせばもっと業務が上手くまわるのではないか」や「日勤よりも夜勤の人材がさらに必要なのではないか」など、その施設のニーズを満たす提案をしています。

ひとまとめに介護といっても、日勤や夜勤、老人ホームやデイサービスなど、勤務時間帯や施設によって業務内容は大きく変わります。弊社には現場経験のある社員もおり、それぞれの顧客に個別に最適なソリューションを提案できるのが大きな強みです。

伸び盛りの市場で「超高齢社会を救う立役者」になれる

――貴社に入社して介護事業に挑戦する面白さや魅力などを教えてください。

武藤高史:
弊社の事業は日本の社会課題に大きく関わっているので、弊社で働くことで「自分はこの超高齢社会の問題を解決に導く立役者だ」という実感ややりがいを得られるはずです。高齢化がさらに進んだ将来、周囲から「高齢社会でも問題なく介護サービスを受けられるのはカイテクのおかげだね」と言われることができれば、それは大きな喜びにつながるでしょう。

また、日本の介護業界の市場は伸びていて、弊社もこれからどんどん会社を急成長させていく予定です。これからさらなる成長が期待できる環境であるため、急成長を望む方にとって、カイテクはぴったりだと思います。

編集後記

今後は事業範囲をさらに開拓し、全国のエリアに拡大させたいと語る武藤社長。起業家の祖父の認知症がきっかけで起業した武藤社長と、カイテクの社員たちが、介護の人材不足問題を解決し、超高齢社会の日本を救う一助となるのに期待したい。

武藤高史(むとう・たかふみ)/1988年愛知県生まれ、立命館大学出身。同大学院の情報工学科を卒業。前職のエムスリー株式会社にて、主力サービスのプロダクトマネージャーに従事。2018年に介護医療人材不足という深刻な社会課題の解決を志し、カイテク株式会社を創業、代表取締役社長に就任。2020年に経済産業省ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテストグランプリ、2021年に総務大臣賞を受賞。