近年のコロナ禍では、エッセンシャルワーカーとして医療従事者が果たす社会的役割の重要性が改めて社会で認知された。しかし、その一方で、医療従事者にかかる精神的・肉体的負担など、労働環境におけるさまざまな課題も存在する。
そんな医療の現場で、医師や看護師の働く意欲を支える要素の1つが、実は白衣だ。そのことを販売実績により証明したのが、国内外から注文を集めるメディカルアパレルブランド「クラシコ」だ。
クラシコブランドの企画・製造・販売を行うクラシコ株式会社は2008年創業。従来の無味乾燥な世界観を覆すデザイン性の高い白衣で知られ、多くの医療従事者から支持されている。
同社を創業し、素材からの開発に取り組み、品質の改革のみならず、新しいビジネスモデルも確立した大和社長に話を聞いた。
友人医師の声をきっかけに、メディカルアパレルブランドを創業
ーーそもそもメディカルアパレルという業界は新規参入が少ないと思うのですが、なぜ白衣に特化したブランド、会社をつくられたのでしょうか。きっかけをお話しいただけますか。
大和新:
創業のきっかけは、医師になった同級生の言葉でした。とてもおしゃれが好きな友人なので、病院まではビシッと決まった服で通勤するけれども、病院にはペラペラの白衣しかなく、羽織った瞬間にモチベーションが下がるというようなことを言っていたのです。
そんな彼の悩みに触発されて、テーラードスーツの職人をしていた友人と協力してプロトタイプを作成しました。インターネットで販売してみると、問い合わせがどんどん来て、好評を得ることができました。
実際に事業を進める中で実感したのは、大きな意義のあるビジネスだということです。医療従事者の方々から「仕事のモチベーションにつながる」「患者さんとのコミュニケーションのきっかけになった」など、肯定的な反応を多くいただいたことにやりがいを感じましたね。この実感が弊社のミッション「世界中の医療現場に、人間的で、感性的で、直感的な革新を生む。」にもつながりました。
共同創業者が元々最高級のスーツを仕立ててきた職人でもあるデザイナーなので、創業当初から素材メーカーと協力してオリジナルの素材の開発に取り組みました。糸だけではなくて、ボタンなど細部にまでこだわり、耐久性とファッション性の両立を追求し続けています。
医療業界の課題に挑みながら、海外市場開拓の好機を掴む
ーー創業以来、常にいろいろな角度で新しい商品を作り続けていらっしゃいますが、今後特に注力したいことや、すでに実現されている海外展開のさらなる展望についてお聞かせください。
大和新:
弊社の商品はドクターの皆さんにはかなり普及してきているので、今後はナース向けの商品にもっと挑戦したいと考えています。
2017年にルームウェアブランドの「ジェラートピケ」とコラボしたあたりからだいぶお客様が増えましたが、まだまだ開拓の余地があります。さまざまな現場ごとに課題もあるので、新しい切り口でナース向けの商品を提案すべく、現在準備しているところです。
また、すでに昨年から始めたことではありますが、入院する患者さん用の患者衣にも着目しています。入院すると、皆さん気持ちが落ち込むじゃないですか。そこで少しでもホッとして楽になれるようなものを作ろうということで、入院セットを提供している企業さんと新ブランド「lifte(リフテ)」を共同開発しました。これをさらに広げていきたいと考えています。
海外展開は、弊社では特に中国に注力しています。中国では近年ファッションが成熟している上に、人々の年収も上がっていますから、今が良いタイミングです。少し前までは古いタイプのユニフォームが多かったのですが、最近は白衣よりも動きやすいスクラブの着用が急に増えてきています。
もともとメディカルアパレルという業界は、世界でもプレーヤーが少ないことが特徴です。しかも日本は素材開発の面で強いと感じているので、そこは弊社にとっても強みになるところだと思っています。
グローバルナンバーワンのメディカルアパレルを目指して
ーー業績が成長するに従い、貴社の規模も大きくなり、入社を希望される方も多いと思いますが、どのような人物を求めていらっしゃいますか。
大和新:
メディカルアパレルの世界で最も愛されるブランドになるべく、グローバルナンバーワンという高い目標を掲げているので、そこを一緒につくりたいという方を求めています。急成長するためには変化や挑戦が不可欠なので、新しいことにもどんどんチャレンジしたいというマインドを持った方にはぜひ入社していただきたいと思います。
私たちと一緒に働いていただいたらわかると思いますが、メディカルアパレルというものを通して医療業界に貢献できることには、大きなやりがいがあります。
社会貢献、そしてグローバルに挑戦するという2つの側面がミッションに含まれますので、そこに共感していただける方と一緒に働きたいと思っています。
編集後記
医療従事者から求められる新しい白衣を生み出すクラシコ株式会社。創業以来、成長を続けているのは、医療業界のニーズを正確に捉えて、常に商品をアップデートし、期待以上の価値を生み出しているからだろう。
「ニッチなことをやっているようで、目標は非常に高いところにある」と語る大和社長の言葉に、確かなベンチャーマインドと、メディカルアパレルという分野が持つ大きな可能性が感じられた。
独自の視点で医療業界へアプローチする大和社長の挑戦は今後も続く。中国をはじめ世界を舞台に活動するブランド「クラシコ」の未来が楽しみだ。
大和新(おおわ・あらた)/1980年栃木県出身。立命館大学卒業後、IT関連企業の営業や事業開発を経て、友人医師の「ペラペラでクタクタの白衣ではモチベーションがあがらない」という言葉から、差別化できるかっこいい白衣を作ろうと決意。高校の友人であり、カッターとして銀座のオーダー専門店「サルト」で経験を積んでいた大豆生田伸夫(おまめうだ・のぶお/現・CQO兼デザイナー)を誘い、2008年クラシコ株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。