EVの普及や、半導体のAI、再生可能エネルギー、5G基地局での新たな役割など、時代の流れとともに各業界で多くの変化が起きている。
市場が急速に変化する中、技術と技術、企業と企業をつなぎ、革新的なサービス、製品を生み出し続けているのが株式会社コシダテックだ。1930年に創業した老舗の技術商社で、自動車や半導体、通信など、幅広い分野の事業を手がけている。
特に、踏切事故を防止するためにAIを活用した画像解析技術が注目を集めている同社だが、どのようにして次々と新しい分野で結果を出しているのか。取締役執行役員の越田渓氏に、同社の強みと経営者としての考え方を聞いた。
技術を活用して自動車・半導体・通信など多分野で活躍
ーー越田取締役執行役員は2023年6月に就任されたばかりだそうですが、今後どういったことに力を入れていきたいですか。また、貴社の事業について簡単に教えてください。
越田渓:
弊社ではいくつかの事業を手がけていますが、そのうちの1つに自動車関連事業があります。アフターサービスを行う事業所が東日本を中心に全国にあり、ETC、カーナビやドライブレコーダーなどのアフターマーケット品のサポートを幅広いエリアで対応できるのが強みです。
自動車業界は今、EV化を含むCASEが注目を集めており、弊社としても今後はそういった新しい技術を使った事業にどんどんシフトしていきたいと思います。
また、半導体の事業も手がけています。半導体は更なる成長が期待される車載、産業用途に加え、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーやEV充電設備などにも使われるので、今後は市場全体の伸びが期待できるそれらの分野にも展開していくつもりです。
更に、通信事業としてドコモショップの代理店を運営しています。携帯ショップの数自体は減る傾向にあるので、単に携帯を買いに来るだけの場所ではなく、更なる付加価値の提供を考えているところです。
自動車リテール事業から派生した、二輪用品店事業も全国で展開しており、独自ブランドの確立、インバウンド需要の取り込みを進めております。
ーー新たに踏切関連の事業も始めたとお聞きしました。
越田渓:
従来の踏切は、車などある程度の大きさのものは検知できますが、ベビーカーなどの小さなものの検知にはまだ課題があります。そこで弊社はNTTコミュニケーションズ様、ヤシマキザイ様、関東鉄道様と共同で、小さなものも検知できるシステムを開発し、今後は鉄道業界に展開していく予定です。
企業と企業をつないでコミュニケーションを起こせるのが強み
ーー貴社の強みを教えてください。
越田渓:
人材、技術に関する知見に加え、自動車業界、通信業界などで蓄積した関係性や信頼を活かして、それぞれの企業をつないで、コミュニケーションを起こせることが弊社の強みです。これからの時代は1つの企業だけで新しいことを立ち上げることはより難しくなり、いろいろな企業と協力して事業を生み出していくことが大事だと思います。
ーー会社を経営するうえで、どういった点に課題を感じていますか。
越田渓:
課題として感じているのは、1年、1年の短期的なことに加え、変化が激しい中においても、いかに長期的な目線を持つかということです。EVの普及や再生可能エネルギーの活用などは、この1年間で状況が大きく変わるものではありませんが、数年後には確実にやってくる未来です。
そのため、今年1年間を乗り切れば良いという短期的な目線ではなく、数年後の未来に向けて種をまく意識を持つ必要があります。
失敗を気にせず挑戦するからブレイクスルーを起こせる
ーー会社を経営する上で大切にしている考え方を教えてください。
越田渓:
たとえ何か失敗したとしても、その失敗が次につながることもあります。失敗しても落ち込みすぎず、そこから学び、次にどうやって活かすかを考えることが大切です。
挑戦しない人は失敗しないかもしれませんが、ブレイクスルーも起こせません。最大損失やリスクを精査した上で、積極的に挑戦して、失敗するかもしれないけれど、ブレイクスルーを起こせる可能性を少しでも高めたほうが良いのではないでしょうか。
ーーこれから何か取り組んでいきたい事業はありますか。
越田渓:
まだデジタル技術が十分活用されていない分野に、積極的に技術を導入していきたいと考えています。たとえば、農業や工場の生産ラインは、デジタル化を進める余地がまだあります。こういった分野に、AIを用いた踏切の画像解析のような技術を導入していくことも考えています。
――最後に、貴社で働く際の魅力やアピールポイントを教えてください。
越田渓:
EVの普及、半導体市場の変化やAIの導入など、各業界でいろいろな変化が起きています。弊社はそういった時代の変化を意識しながら事業に取り組み、新しいことにどんどん挑戦しています。
老舗の企業ではありますが、時代の流れに柔軟に対応する組織風土がありますので、新しい領域に積極的に挑戦して頂けると思います。
編集後記
顧客自身がまだ認識できていない課題を見つけ出し、複数の企業や技術を組み合わせてソリューションを生み出す株式会社コシダテック。同社は、不確定性の高い時代の中でも、失敗を恐れずに挑戦することで成長を続けている。
90年以上にわたり自動車や半導体、通信など、人々の生活に欠かせない分野で活躍する同社が、次はどのようなソリューションを提案するのか楽しみだ。
越田渓(こしだ・けい)/1986年神奈川県生まれ、慶応義塾大学大学院修了。2011年に三菱商事入社、金属グループにて非鉄金属取引などを経験。2015年に豪州系投資銀行に転職し、コモディティ取引に従事。2022年にコシダテック入社、2023年4月に執行役員イノベーション推進室室長、同年6月に取締役に就任。