※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

株式会社シェーンコーポレーションが運営する「シェーン英会話」は、2023年の「オリコン顧客満足度ランキング」の「子ども英語 小学生 総合」において、2年連続で第1位を獲得した。また、コロナ禍による渡航困難で苦境に立たされた留学業界にあって、株式会社国際交流センターが運営する「ISS留学ライフ」は、海外への道筋を築き、いち早くV字回復を果たした。

英会話と留学という2つのグローバル事業の代表取締役社長を兼務し、コロナ禍という未曾有の危機を乗り越え、現在は5期連続で過去最高益を更新し続ける石谷雄也氏。AI技術が進化する現代において、あえて「対面」の価値を問い直し、法人・学校向け領域への拡大にも注力している。変化の激しい教育業界で着実に成果を積み上げる同氏に、次代を見据えた成長戦略と、社員の力を信じる経営信念について話を聞いた。

英会話教室と留学事業で実績をあげ、数社の社長を兼任する敏腕社長

ーーまずは、英語事業に進んだきっかけについて教えてください。

石谷雄也:
アメリカの大学で培った英語力を活かし、「仕事としてやっていける」と思い、株式会社栄光に入社しました。当初は、栄光ゼミナールで講師や教室長として現場に立っていました。転機が訪れたのは、入社して5〜6年経った頃です。「これからは英語の時代が来る」という潮流の中、創業者が引退するタイミングで子会社化された株式会社シェーンコーポレーション(以下、シェーン)の経営に携わることになりました。当時20代でしたが、取締役として任されたのが本格的に英語事業へ進んだきっかけです。

全く異なる企業文化の中に飛び込むことになり、最初は信頼関係もゼロからのスタートでした。20代という若さで塾業界から飛び込んだ私に対し、当初は「どこの誰だかわからない」という戸惑いの視線もあったはずです。しかし、そこから一人ひとりと対話を重ね、コミュニケーションを取りながら信頼関係を築き上げていきました。

その後、シェーン英会話の実績を順調に伸ばし、2015年に栄光に戻るのと並行して、子会社化された株式会社国際交流センター(ISS)で留学事業に取り組むようになりました。2017年にはグループ会社の豪州の子会社の経営を引き継ぎ、ニューヨークに複合教育施設をつくるという新規事業も任されることになりました。私の出身大学がニューヨークにあったため、現地のコネクションなどを活かし、立ち上げた翌年には法人化を実現できました。

ーーいろいろと事業を任され成功させていますが、最初に社長に就任されたのはいつですか。

石谷雄也:
2015年にISSの社長に就任したのが最初です。その後、海外2社の社長を兼任し、2019年にシェーンに戻り、社長を任されて6年以上になります。現在は、全国外国語教育振興協会の理事やいくつかの団体の理事も兼任しており、1か所にじっとしていないので、周囲からは「今はどこで何をしているんだ」とよく言われています。

ーー仕事をする上で大切にされていることはありますか。

石谷雄也:
弊社のスタッフにも伝えていることなのですが、私たちが大切にしている「A・B・C・D・E」という指針があります。その具体的な内容は、

A:当たり前のことを
B:馬鹿にしないで
C:ちゃんとやる
D:できるだけ
E:笑顔で

です。ビジネスにおいて、特別な秘策のようなものはありません。「挨拶をする」「約束を守る」「相手の立場に立つ」。こうした当たり前のことを、どれだけ徹底して継続できるかが、最終的な結果の差になると考えています。たとえば、100メートル走の世界記録は約9秒台ですが、一般の人でも本気で走れば15秒前後で走れるでしょう。その差はわずか数秒です。しかし、その数秒を縮めるためには、毎日の地道なトレーニングの積み重ねが必要です。

ビジネスも同じで、人の能力にそれほど大きな差があるとは思いません。しかし、頭で「分かる」ことと、実際に「できる」ことの間には、大きな違いがあります。当たり前のことをコツコツと積み上げられる力こそが、プロフェッショナルとしての成果を生むと信じています。

「質」も大切ですが、最初から高い質を求めるのではなく、まずは「量」をこなすことで自然と質が向上します。これは学習塾の講師時代に、多くの生徒を指導してきた経験から得た確信でもあります。そのため、弊社では特別な能力よりも、粘り強く続けられる力や、見えない努力を積み重ねる姿勢を高く評価しています。先ほどお話しした「A・B・C・D・E」という指針には、こうした「当たり前のことをやりきる人」を大切にしたいという強い思いを込めています。

創業以来の「直接教授法」とAI時代における対面の価値

ーーシェーン英会話ではどのような教育方針をお持ちなのでしょうか。

石谷雄也:
シェーンは1977年の創業以来、ネイティブ講師が英語のみでレッスンを行う「直接教授法」を採用しています。ネイティブ講師が話す英語を日本語を介さず、英語を英語のまま捉えて理解するスタイルです。

ダイレクトに音として取り入れることは、「間違えたら恥ずかしい」という羞恥心を持ちやすい日本人にとって、ハードルが高く感じるかもしれません。しかし、英語を母国語としない他のアジア圏の人々は、文法が完璧でなくとも「伝えたい」という気持ちを優先して堂々と話します。

シェーンでは、その「間違えたら恥ずかしい」というブレーキを取り払い、失敗を恐れずに発話できる「楽しい環境」をつくることを最優先しています。講師たちは、生徒が英語を話す勇気を持てるよう、温かくサポートするトレーニングを受けています。

ーーAIや翻訳ツールが進化する中で、あえて「対面」で学ぶ意義をどうお考えですか。

石谷雄也:
AIやオンラインツールは、知識のインプットや予習・復習において非常に有効です。私たちも自宅学習用に「Reading Oceans Plus(リーディング オーシャンズ プラス)」というAIを活用した多読教材を導入しており、生徒が自分のレベルや好みに合わせた英語の絵本や歌に触れ、圧倒的な「量」を確保できる仕組みを提供しています。

しかし、先ほどもお話ししたように、「分かる」ことと、実際のコミュニケーションで「できる」ことは別物です。画面上で知識を得ても、実際に人と対面したときの空気感、間合い、表情の変化などは、リアルの場でしか学べません。海外旅行先のホテルで拙い英語でも通じたときの喜びや、相手と心が通じ合ったときの感動は、対面だからこそ得られる体験です。

私たちは、AIやデジタルツールで効率的に知識を習得しつつ、週に1回のスクールでのレッスンや留学という「実践の場」でそれを試す、というハイブリッドな学びを推奨しています。デジタルとアナログを対立させるのではなく、それぞれの良さを融合させることで、「使える英語」を身につけていただきたいと考えています。

理念は「ENGLISH FOR LIFE」 質の高い講師を世界から採用

ーーシェーンならではの強みについて教えてください。

石谷雄也:
創業時から「ENGLISH FOR LIFE」という理念を一貫して掲げています。私たちにとって英語は、単なる教科やスキルではありません。人生をより豊かに彩り、世界とつながるための「生涯のコミュニケーションツール」であると考えています。

英語を身につけることは、まだ見ぬ人々との出会いや、新しい価値観への気づきをもたらし、人生の選択肢を大きく広げてくれます。しかし、学習は継続しなければ力になりません。だからこそ、私たちは「とにかく楽しいスクール」であることにこだわり、生徒様が自ら「行きたい」と思える環境づくりを徹底しています。楽しみながら異文化に触れ、学び続ける機会を提供する。この「楽しく英語に触れてほしい」という取り組みは、SDGsの一環として外務省からも評価を受けています。

ーー安定したクオリティのスタッフ陣はどのようにして採用していますか。

石谷雄也:
スタッフは国籍、年齢、性別に関係なく、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用しています。ロンドンに採用拠点があり、海外にいるリクルーターが質の高い講師を直接採用しています。そのためイギリス人講師が多いのが特徴ですが、現在はダイバーシティを重視し、さまざまな国籍の講師が活躍中です。

コロナ禍に耐え留学業界でいち早くV字回復したISSの一点突破術

ーーISSがコロナ禍で活路を見出した「Co-op(コープ)留学」とはなんですか。

石谷雄也:
「Co-op留学」は、カナダなどで実施されている、学校での座学と企業での有給インターンシップがセットになった留学プログラムです。コロナ禍で渡航制限や隔離期間が生じ、短期留学が事実上不可能となる中、多くの留学エージェントが休業を余儀なくされました。しかしISSは、国内5支店(東京・横浜・名古屋・大阪・福岡)を休業せず、スタッフの雇用を守りながら、「今、お客様ができる留学は何か」を模索し続けていました。

そこで辿り着いたのが「Co-op留学」です。この制度なら、長期間の滞在が可能で、現地で働きながら実践的なスキルを身につけられます。「ISSならコロナ禍でも留学ができる」というメッセージを打ち出し、一点突破を図りました。当初は動けば動くほど赤字が増える状況でしたが、スタッフがお客様にしっかりと向き合い続けた結果、これが大ヒットとなりV字回復の原動力となりました。現在、ISSはコロナ前の水準を超え、5期連続で過去最高益を更新しています。

ISSがコロナ禍後の留学業界を牽引している理由

ーーいち早く有給インターン制度に特化し、業績が躍進した理由は何でしょうか。

石谷雄也:
学生の立場に立って考えた結果、有給インターン制度に辿り着きました。どこよりも早く扱い始めたものの、その後、他のエージェントも扱うようになり、それによって、どこが選ばれるかは金額が勝負になりました。そこで、ISSでは「金額ではなく誰から買うかが重要」ということに集中し、社員で勝負しようと考えました。

ISSには留学コンサルタントとしての社員が50人ほどいます。その社員たちはお客様と一緒に考えられる社員であり、提案する知識もたくさん持っているため、それが満足度の高さにつながったのだと思います。お客様の期待を超えるサービスを提供できるかけがえのない社員たちです。

ーー社員の育成方法について教えていただけますか。

石谷雄也:
ISSの社員は全員留学経験者で、自身の経験を踏まえて相談に乗ることができます。しかし、留学には多くの選択肢があり全てをカバーするのは難しいため、定期的に勉強会を開催しています。

また、ISSにはカナダ専門、イギリス専門など各国の専門チームがありますが、それぞれの最新情報を共有しながら、横のつながりを大切にしていることも私たちの強みの1つです。
それぞれの国に行ったことのない社員には、留学プログラムの引率や視察の機会を提供しています。現地体験によって知識を深め、よりお客様にマッチした提案をできる社員になってもらうためです。そして、個々の強みを活かせるバランスのよい採用や配置をしています。

法人や学校への展開を強化し、一人でも多くの方に海外への扉を

ーー今後の成長戦略として、特に注力されている領域はありますか。

石谷雄也:
今後は、法人や学校向けのサービスをさらに拡大していきたいと考えています。現在、法人・学校向けの売上比率はシェーンで約2割、ISSで約4割ですが、インバウンド需要の回復やグローバル人材育成の加速により、企業や教育機関からのニーズが急増しています。

たとえばシェーンでは、大手航空会社の客室乗務員(CA)向けに、オリジナルの「スピーキングテスト」を提供しています。英会話研修の効果は見えにくいという課題に対し、発音や流暢さを可視化したしたことで高い評価を得ました。当初数名から始まった取り組みですが、現在は約9000名のCAの方々に導入されています。また、ホテルや飲食、小売業界など、インバウンド対応が急務な企業からの研修依頼も増加しています。

ISSにおいては、従来の個人留学に加え、学校単位での海外研修や教育旅行の取り扱いが伸びています。特に最近では、1年間や3年間の長期留学ではなく、日本の学校に在籍しながら1学期間だけ海外の現地校に通う「ターム留学」が非常に好評です。留年することなく海外体験ができ、単位認定も可能なため、リスクを抑えて挑戦したいという生徒や保護者のニーズにマッチしています。

ーー今後の目標などはありますか。

石谷雄也:
おかげさまで、シェーン、ISSともに5期連続、コロナ禍を脱して以降は連続で過去最高益を更新しています。しかし、私は打ち上げ花火のような一時的な売上をつくることよりも、着実に歩みを進めることが重要だと考えています。法人向けの案件は、短期的に数字を伸ばしやすい反面、景気の影響を受けやすく不安定になる側面もあります。だからこそ、私たちはそこだけに注力するのではなく、持続的な成長に重きを置いています。

当たり前のことをちゃんとやるという積み重ねができてこそ、持続的な成長は実現できるものです。これからもお客様が何を求めているかを常に考え、一歩ずつ着実に歩みを進めていきたいと考えています。

英語をより身近に感じてもらうための展望

ーー今後のお客様の開拓についても教えてください。

石谷雄也:
シェーンもISSも含め、私たちは「お客様に私たちのサービスを理解してもらうための努力が不足している」と感じています。このような場でもっと、英会話や留学の楽しさやお客様の可能性の広がりを伝える機会を増やしていこうと思います。

「Co-op留学」はコロナ後のV字回復の原動力となりましたが、こうした良い商品やサービスであっても、まだまだ認知度が高くないものが多くあります。ビジネスの拡大というより、より多くの方に魅力的な提案を伝えて、さらにお客様の求めているものを探していきたいと思っています。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

石谷雄也:
日本人は真面目さゆえに、「完璧に話さなければならない」と思い込みがちです。しかし、世界に出れば、多少の文法ミスや発音の違いを気にしている人はほとんどいません。気にしているのは自分だけなのです。「間違ってもいい」「失敗してもいい」。その一歩踏み出す勇気を持つだけで、英語学習はもっと楽しくなり、世界は大きく広がります。失敗しないために何もしないことこそが、一番もったいないことです。私たちは、その勇気を後押しし、挑戦する皆さんの人生を豊かにするお手伝いをしていきたいと思っています。

編集後記

コロナ禍で低迷する企業も多いなか、社員を誰一人手放すことなく業績を上げ、語学・留学業界を牽引しつづける石谷社長。「過去最高益」という華々しい実績の裏には、顧客ニーズを徹底的に考え抜く姿勢と、「当たり前のことをちゃんとやる」という堅実な経営哲学があった。AI時代においてあえて「対面」の価値を信じ、BtoB領域への拡大や新しい留学スタイルの提案など、挑戦を止めない同社。英語を通じて人々の「勇気」を支えるその姿勢に、今後も注目していきたい。

石谷雄也/2004年、株式会社栄光に入社。2010年に「シェーン英会話」の経営に取り組み、2015年ISS(株式会社国際交流センター)の代表取締役社長に就任。豪州と米国の子会社の代表取締役社長も務める。2019年には株式会社シェーンコーポレーションの代表取締役社長に就任。全国外国語振興協会やNY州NPO団体の理事も兼任している。