※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

楽天市場やauPAYマーケットなど、競争率の高い日本の大手ECモールで圧倒的な売り上げを誇る通販サイト「ソムリエ@ギフト」。カタログギフトをはじめ、スイーツやグルメ、おしゃれな家電など、6500品目を超える贈答品のネット通販をおこなうこの企業こそが、今回紹介するベルヴィ株式会社だ。

兵庫県の市川町からはじまったこの事業は、ネットの知識がない状態から宮﨑社長自らパソコン技術を学び、1人でサイトを立ち上げたのだという。実家の家業を継ぎ、「第12回 全国ネットショップグランプリ2020」でグランプリを受賞するほどのサイトを生み出した経緯と今後の展望について話を聞いた。

仕事人生の運命を変えた丁稚奉公

ーーご実家であるベルヴィを継ぐ前に、渡米経験があるとお聞きしました。入社までの経緯を教えてください。

宮﨑義則:
小さい頃から会社を継ぐ意識はあり、幼稚園の作文には「将来の夢は父の仕事を手伝うこと」と書いていました。高校時代は遊び呆けており、大学受験に失敗して浪人の許可を父に取りに行ったところ、「アメリカに行って来い」といわれて渡米しました。

帰国後、山口県の株式会社アデリーというギフト商社に丁稚奉公に出ました。当時の社長が父の大親友で、僕の第2の父親ともいえる存在の方に厳しく仕事を教えていただき、1年間弱の期間、寝る間を惜しんで働きました。そこで社員と社長の関係を肌で感じ取り、仕事の厳しさを学んだ経験を生かすべく、満を持してベルヴィに入社しました。

ターニングポイントとなったネット通販のスタート

ーー社長就任後は何に着手したのですか?

宮﨑義則:
当時は農協に力を入れており、農協と阪急百貨店の間に入り、代理店としての仕事をしていました。あるとき阪急百貨店の部長に「それだけ多くの商品を扱っているなら、インターネットで販売してはどうか」と言われ、楽天市場でサイトを運営していた方を紹介されました。

そうして楽天市場への出店を果たし、兵庫県の野菜や肉を出品していましたが、2年間全く売れませんでした。当時は僕の妻がネット販売を担当していたのですが、赤字続きで来年売上が立たなければやめようと話したとき、「どうせやめるなら最後にギフトを出品したい」と妻が言ったのです。

すると月200万円分ほどの商品が売れるようになり、本格的にネット販売に移行する決意をしました。しかし、僕も妻もネットの専門的な知識は持ち合わせておらず、人を雇う余裕もないため、自ら姫路のパソコンスクールに通い、勉強を始めました。父に「ネット販売で3億円分の商品を売ってみせるから、3年間時間が欲しい」とお願いし、自分でホームページをつくりました。

ーーネット通販を開始してからどのくらいの期間で軌道に乗ったのでしょう?

宮﨑義則:
2005年にネット通販を開始して、約5年で月商1000万円を突破しました。しかし年間で言えば1億2000万円で、粗利も5〜10%程度と大きな利益が出ている状況ではありません。そこで妻と他サイトの商品を調べていくうちに、雑貨店などのオシャレなサイトを目にして「僕だったらこんなお店でギフトを買いたい」と感じました。そこから商品ページに力を入れていくことになります。

今でこそ商品ページのクオリティは売上を左右する大きな武器ですが、当時は社会全体のネットリテラシーが低く、弊社が先駆者的なポジションだったと思います。実際に自分たちで商品を試食して感想をコメントしたり、写真の見せ方から売り文句の工夫まで1つずつ愛を込めてページをデザインしました。

ギフトというのは送る人のセンスが問われる商品です。同じ中身でも百貨店の包装紙が巻かれているだけで1つのステータスになります。「ここで買ったら自分の格が上がる」と思ってもらえるような世界観をつくり出すという、今後の会社の核となる方針が定まったのです。

勝算は「ちょっと安い、ちょっとキレイ、ちょっとアクセスが多い」の三拍子

ーー商品ページに対する工夫として、何を意識してきましたか?

宮﨑義則:
「ちょっと安くて、ちょっとキレイで、ちょっとアクセスを多くする」の3つがそろうと勝てるのです。1つ1つの商品を丁寧につくり込んでいく作業を15年間続けたことで、現在では6500品目を取扱い、楽天市場のトップに踊り出て、他社に圧倒的な差をつけてきました。

弊社は全て自社でフォトグラファーやデザイナーを抱えているため、徹底的に写真の質やサイトのデザインを追求することが可能です。たとえ大手でも真似することはできず、EC市場のプロ集団としての立ち位置を確約しました。

ーーサイトの質をここまで上げていくにあたって、人材集めには苦労したのではないですか?

宮﨑義則:
実は現在の役員のうち3名が、各ジャンルでトップの店舗を運営していたプレイヤーだったのです。ベビー用品、ゴルフグッズ、タイヤなど、それぞれのジャンルでトップの売上を誇った方々が「一緒にサイトをつくりたい」と言ってくれて、4店舗の日本一が弊社に集結しました。

お互い職人肌で徹底した販促へのこだわりを持っており、そこに居心地の良さややりがいを感じることが多いですね。気を抜くところではふざけ合い、メリハリをつけて仕事ができているので4人とも楽しく仕事をしています。

すべてのジャンルでトップを取り、ビジネスの強さを証明する

ーー今後の展望を教えてください。

宮﨑義則:
モールの売上も伸ばしながら、自社サイトの顧客増加を目指しています。

また実店舗も出しているのですが、2号店と3号店を本格的なギフトショップとしてブラッシュアップし、さらに軌道に乗せていこうと思います。12月にオープンしたばかりの「babuuu.」というベビー用品専門店を含め、4店舗全てでナンバーワンを取りに行きます。来期はふるさと納税の取り扱いも多くなる見込みです。

編集後記

ネットの知識が全くないところから、自ら学びにいき、サイトの開設まで手掛けた宮﨑社長。全て自分が経験してきたことだからこそ、プロのデザイナーやウェブディレクターにも臆することなく意見を伝えられるのだという。

「“強い独自性と突き抜けた感性を持つプロがそろったワンチームであること”が最大の強みです。」と語った。トップを走り続けるベルヴィ株式会社の躍進は勢いを増していくだろう。

宮﨑義則(みやざき・よしのり)/兵庫県立姫路西高等学校卒業後、アメリカへ留学。その後1年間のギフト商社での勤務を経て、父親の経営するベルヴィ株式会社に入社。実店舗の営業職を8年間経験するも自分の商才のなさを痛感する。2005年、取引先の勧めでインターネットショップをグルメ商材でスタートするも、納得のいく成果を得られずにギフト商材へと転換。2007年、同社代表取締役に就任。