※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

株式会社池田金属は、非鉄金属を買取・販売するリサイクル事業を主軸に、2006年の創業以来、急成長を遂げている企業である。2010年に21億円規模だった売上高は、2023年には200億円台までに上昇している。

その急成長を支えるのは、人材力。「採用に困ったことがない」と話す代表取締役の池田聡之氏は、従業員にすべての決定権を委ねる自由な社風を重んじている。平均年齢35歳の若い会社が目指す行方は?急成長の秘密についてうかがった。

200万円借りてペットショップ経営を開始

ーー池田金属を経営するまでの経緯をお聞かせください。

池田聡之:
高校を中退し、親に200万円借りてペットショップ経営を始めたのが、社会人生活のスタートでした。しかし、経営はうまくいかず、1年で店をたたむことになりました。その後は、大手農機具メーカーでの設計やアウトドア業界などを経験し、全国展開している大手アパレルショップに就職しました。6年ほど勤務した後、父が独立し事業を始めるというタイミングで、この業界に飛び込みました。

業界有数の取扱量を誇る非鉄金属貿易事業

ーー池田金属という会社の事業内容について教えてください。

池田聡之:
弊社は銅や真鍮(しんちゅう)などの非鉄金属を仕入れてリサイクルなどを行う原料問屋です。年間の取扱量は3万トン以上を誇っています。同業他社と大きく違うのが、一般のお客さまとは取引を行っていない点です。一般のお客さまから非鉄金属を集める会社との取引のみ行っているため、取扱量が必然的に多くなります。

この業界は、利益率が決して高くありません。だからこそ、取扱量を増やすことで年間売り上げ規模200億円を達成しています。

ーー拠点は現在何ヶ所ありますか?

池田聡之:
本社と倉庫を構えている大阪府泉佐野市に加え、岸和田市に2ヶ所の倉庫を保有しています。また、大阪市西成区、泉大津市にも支店を開設。2024年には三重県に、今後は広島にも拠点を拡大していく予定です。

急成長の秘訣は営業力と人材力

ーー急成長を遂げている背景にある経営戦略は?

池田聡之:
弊社が急成長を遂げている理由のひとつが、営業力です。仕組みとしては、同業他社と比べて、買い取り価格を入金するまでのスパンが1週間と短い点が強みです。これは無借金経営で、資金力があるからこそできることです。

また、社員一人ひとりに決定権を与えることで、社員自らが考えて行動する力も成長を支えています。弊社で働く従業員はコミュニケーション能力が高いメンバーがそろっています。

ーー人材力を高めるために取り組んでいることはありますか?

池田聡之:
経営者の姿勢として「従業員を信頼する」ということに尽きます。社員の行動を管理するのではなく、自分たちの判断で自由に行動し、決断してもらっています。顧客とどう交渉するか、いくらで取引をするかなどは従業員自身が経営者のように判断できるのが弊社のスタイルです。

社内で上司に承認を得るなどの無駄な時間や手間をなくすことで、顧客対応が柔軟かつスピーディーになるというメリットもあります。

ーー福利厚生面でも工夫していることはありますか?

池田聡之:
私が「あったらいいな」と思うものは積極的に取り入れています。たとえば、社員旅行の行先は基本的に海外です。海外で視野を広げてもらいたいという思いがあるので、現地で何をするか、どこに行くかは完全に任せており、自由行動にしています。

また、従業員同士の飲み会はすべて経費で精算。個人が持ち出すことがないので、気軽に社員同士交流ができ、コミュニケーションも活発になります。営業メンバーが使う車は、一人ひとりに希望を聞いて、好きな車種を社用車として準備しています。アルファードやミニクーパーなど、好きな車に乗れると仕事へのモチベーションが上がるのではないかと考えています。

ーー従業員の平均年齢は35歳と、業界でも若い企業ですが採用戦略は?

池田聡之:
特に何もしていません。従業員が知り合いに「池田金属はいい会社だから入社した方がいい」と声をかけてくれるので、採用に困ったことはありません。

従業員の既婚率は約9割と、家庭を持つ社員が多いため、離職率も低いです。

売上高500億円達成の先に見据えるものは

ーー今後の展望をお聞かせください。

池田聡之:
今後は拠点を増やし、売上高は500億円規模になると見込んでいます。

会社を大きくするための目標達成の道筋は、ある程度見えています。私が次に目指すのは、新たな事業です。ゆくゆくはホールディングス化を考えています。小さな商社のような組織にし、顧客のニーズに何でも対応できる存在になるのが理想です。弊社では、これまで貿易を中心に事業を展開していましたが、今後はもっと一般顧客向けの事業で売り上げを伸ばしたいという思いが強いです。2025年は売上300億を目指し、広島拠点を立ち上げます。ゆくゆくは売上500億を目指していく予定です。従業員からも毎年事業アイデアを募っているので、いろいろと挑戦していきたいですね。

編集後記

エネルギッシュな話し方が印象的だった池田社長。社員をとことん信頼し続ける、自主性を重んじる姿に「人としての器の大きさ」を感じた。非鉄金属貿易事業として関西では業界でも屈指の存在となっている同社が、今後どのような面白い事業をスタートさせ、展開していくのか期待がかかるところだ。

池田聡之/1976年生まれ。高校中退後、大手農機具メーカーの設計やアウトドア業界、アパレル業界など複数の企業でキャリアを重ねる。父親の起業を機に、株式会社池田金属に入社。非鉄金属とステンレスを主に取り扱うリサイクル事業および卸販売事業に携わり、業界を担う次世代の人材育成と資源循環型社会の貢献に尽力している。同社代表取締役に就任。