※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

グローバル・オーシャン・ワークス(GOW)グループは、「人と社会、そして地域に貢献し、『おいしさ』の世界を拡げ、『健康・安全・安心』への期待に応える」というミッションのもと、水産物の養殖から加工、販売までを一貫して手がける企業グループだ。

傘下には、米国向けの冷凍ハマチ加工を行うグローバル・オーシャン・ワークス株式会社や、冷蔵品の加工・販売を行うアクアブルー株式会社、ブリの養殖管理を行う鹿児島水産株式会社などを持つ。

今回は同グループの代表である増永勇治氏に、起業のきっかけや事業の強み、今後の展望などについて話をうかがった。

水産業界へ飛び込み、病の経験が起業を踏み出すきっかけに

ーー水産加工会社に入社したきっかけを教えてください。

増永勇治:
もともとは別の仕事をしていたのですが、体力的に長くは続けられないと感じ始めたこと、また結婚してそのご縁でオーナーと知り合ったことがきっかけとなり、指宿市の水産加工会社に入社することになりました。

ーー魚や海に関わる仕事に就きたいという思いはもともとあったのですか?

増永勇治:
私の出身である指宿市は温泉やホテルといった観光業が盛んで、漁業が目立っていたわけでもなかったので、魚とは無縁の生活を送っていました。そのため、水産業の仕事に就いたのは本当に偶然の流れでした。

ーー起業をしたいという思いはいつ頃から抱いていましたか?

増永勇治:
同級生に聞くと、小さい頃から「社長になる」と言っていたそうです。大人になっても「何か事業をしたい」という思いを持ち続けてはいましたが、20代の頃は考えるだけでなかなか行動に移せずにいました。

ーーそこから起業するまでの経緯を教えてください。

増永勇治:
就職して働く中、他の人の指示で仕事をすることに違和感を抱き始めました。その後33歳で癌が見つかり、療養期間を過ごしたことがをきっかけで、36、7歳の頃には「使命があれば死なない」という考えを持つようになりました。

以前から持ち続けていた思いを実現する決意を固め、養殖業や水産加工業の現状を変える事業をしようと思い、39歳の時にグローバル・オーシャン・ワークス株式会社を設立しました。

「養殖の近代化」をテーマに掲げ、持続可能な産業を目指す

ーー貴社が掲げる使命について教えてください。

増永勇治:
「養殖の近代化」を掲げ、安心安全な食品の安定供給ができるように取り組んでいます。将来、世界では人口増加にともない、水不足の関係で牛や豚、鳥や作物を含むタンパク源の飼育が困難になり、供給量が不足し、争奪戦が起こることが予測されています。

その中で大きな活路を見出せるのは魚介類などの海洋資源です。しかしそれを持続可能な産業にするためには、現在の旧態依然とした法律やマインドでは不可能だと考えています。

私たちの主な事業はハマチの養殖・加工なので、そこから産業の持続可能性を高めるための取り組みを進めています。

ーー今までの歩みの中で印象に残っているエピソードを教えてください。

増永勇治:
事業を始めたころ「魚は両手で扱ってください」「365日、お客様の要望があったらいつでも出荷しましょう」など、当時の概念を覆すようなことを業界内で伝えていましたが、周りからは「何を言っているんだ」と笑われていました。抵抗勢力もありましたが、陰ながら弊社を応援してくれる同業者や地元の方々、そして社員などの理解者もいて、その存在をありがたく思っていました。

そういった環境の中でも、一緒の思いを持ってサポートし、弊社に目線を合わせてくれた方々のおかげで、弊社の商品はトップブランドに成長できたと感じています。

世界中に美味しいブリを届けたい

ーー貴社の商品は8割が海外向けとのことですが、海外とやり取りすることは起業当初からイメージしていましたか?

増永勇治:
人口減少により国内のマーケットが縮小することを予想していたため、海外の割合が高くなることは必然だと考えていました。

弊社を創業したのが2009年のリーマン・ショックの直後だったので、当時の金融機関にとっては、海外に事業を展開するなんて信じられないことだったと思います。

それでも、確固たる自信があったので、国内・国外と分けて考えず、世界のテーブルに美味しいブリを届けるというビジョンで事業を進めました。

仕事の基盤である「人」に目を向けた会社であり続けたい

ーー貴社の強みを教えてください。

増永勇治:
弊社の強みは何よりも「人」です。もちろん、水の使用を最小限にして行う加工など技術面の強みもありますが、それも「人」がいないとできません。優秀な社員が多く働いているからこそ、弊社の事業は成り立っています。

ーー「人」に対する思いや考えを教えてください。

増永勇治:
私は仕事において「人」が全てだと思っているので、社員にも他人のために時間を使うことの大切さを伝え続けてきました。利益の追求だけではなく、自分の時間をいかに他人に使えるかを重要視しています。今後も、「人」の部分に目を向けて会社を成長させていけるよう、組織づくりや事業強化に取り組んでいきたいと考えています。

また、会社はチームや家族だと思っています。会議も密に行い、各地の支店長をはじめ、社員一人ひとりを「チーム」「家族」の一員だと思って大切にしています。

ーー今後の展望について教えてください。

増永勇治:
まず、2〜3年後にはグループ各社の経営者を私から次の世代へと交代したいと思っています。そして、養殖の尾数を200〜300万尾ぐらいまで増やし、それに応じて加工拠点も増やしていく方針です。

他に社長交代までに私ができることは、業界や地域への貢献です。弊社の拠点である垂水市を水産業の集積地にしたいという思いのもとに進めている「アクアカルチャーベイエリア構想」を実現させるきっかけづくりをしていきたいと思っています。

編集後記

癌にかかったことで生まれた使命感により創業したグローバル・オーシャン・ワークス・グループの事業は、今は海外を主軸としたグローバル事業になるまで成長した。

経営者の交代を自ら今後の展望として掲げ、「交代する時までにできる限りビジョンを実現させたい」と語る増永代表は、後悔のないよう最後までやりきるというマインドを原動力に、今後も多くの挑戦を続けていくだろう。

増永勇治/1969年鹿児島県指宿市生まれ、鹿児島実業高等学校卒業。1995年、指宿市の水産加工会社である株式会社奈良に入社し、営業と加工場管理に携わる。2009年、グローバル・オーシャン・ワークス株式会社を設立し代表取締役社長に就任(現任)。2012年にアクアブルー株式会社、2014年に鹿児島水産株式会社を設立し代表取締役社長に就任(現任)。2019年に米国International Marine Products Inc.を完全買収し、CEOに就任(現任 )。