※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

1960年の創業以来、親会社であるエース株式会社をはじめとした国内外の企業からのOEMにより、バッグやスーツケースを製造しているエースラゲージ株式会社。リサイクル素材の活用や工場運営におけるCO2削減などの環境保全活動にも力を入れていく。

2022年、コロナ禍の旅行者数減少によって売上が低迷する中で代表取締役社長に就任した加来剛氏は、企業体質の強化を図るとともに、社員にとって魅力ある企業となるべく変革を進めている。

そんな加来氏に、社長就任までの経験や第二創業の取り組み、見据える未来についてうかがった。

会社存続の危機を救ったポジティブ経営

ーー親会社であるエース株式会社に入社したきっかけや、若くして役員に就任した時に心がけていたことはありますか?

加来剛:
モノづくりをしていた父の影響で、人にモノを提供して喜んで使ってもらうようなメーカーに入りたいと思い、カバンが好きだったこともあってエース株式会社に入社しました。

入社後は営業部門と製造部門を経験し、39歳で執行役員に就任した時は、役員の中で私が最も若かったですね。「私が言わなければ他に言う人がいない」という状況も多く、周りに嫌がられるようなことでも会社に必要だと感じたことは、率先して行動に移していたことを覚えています。

ーー社長に就任した時はどのような状況でしたか?

加来剛:
コロナ禍で旅行どころか外出まで制限される世の中になったことで、スーツケースの製造をメイン事業としている弊社は売上が3分の1に減り、工場の稼働も週に2日になるほどの大打撃を受けました。

そんな中、当時エースの専務とエースラゲージの取締役を兼務していた私が社長を任されることになりました。「エースラゲージにもまだチャンスがある」と感じていた私は、リストラや合併するのではなく、新しいビジネスを始めようと、第二創業に踏み切りました。

自然豊かな北海道で付加価値のある商品を創出

ーー貴社の事業内容や強みを教えてください。

加来剛:
弊社は、国内外のさまざまな企業のバッグやスーツケースなどの受託製造を行っています。また、私が社長に就任した2022年以降、第二創業の取り組みとして自社ブランドの生産販売や強化段ボール開発事業を始めました。

弊社の北海道赤平工場は、ハードタイプのスーツケースを一貫生産体制で量産できる、国内唯一の工場です。さまざまな環境下で耐久性を保てるスーツケースをつくるために、きめ細かいモノづくりを心がけています。創業当初から培ってきた従業員の技術や経験が「無形の資産」であり、弊社の強みです。ただし、時代や環境の変化に応じて、お客様のニーズに合ったモノづくりをすることが重要だと考えています。

ーー新しくスタートした自社ブランドについて教えてください。

加来剛:
「yezoLABO(エゾラボ)」と「y43」という2つのオリジナルブランドを立ち上げました。「yezoLABO」の「yezo(蝦夷)」は北海道を意味し、「y43」の「43」は北海道の工場が位置する北緯43度を指しています。「y43」では、新幹線の廃材を譲り受け、新しい商品に生まれ変わらせる取り組みを始めています。

ーーなぜ強化段ボールに着目したのでしょうか?

加来剛:
強化ダンボールは木材に匹敵する強度を持つだけでなく、世界森林管理協議会から認証を得た森林を原料とするため、地球にやさしく、持続的な生産が可能です。

強化段ボール事業の一例として、子ども用の滑り台やシーソーなどの遊具を開発しています。北海道のような雪深い地域で子どもが外で遊べないときに室内で遊べるだけでなく、古くなったら簡単に処分できるというメリットがあります。

多方面に価値を生み出すクリエイティブな企業へ

ーー若い時から責任ある立場を任されてきた社長が、働くうえで心がけていることはありますか?

加来剛:
新入社員でも社長でも、お金をもらって働く以上、プロとしていかに会社に貢献するかが大切だと思っています。会社としても「価格を超える価値のあるモノを創出する」というミッションを掲げていますが、これはモノだけでなく人も同じだと考えています。私は、このことを常に意識して、仕事に取り組んできました。

ーー今後、会社をどのように発展させていきたいですか?

加来剛:
社員に夢と希望を与えられる会社にしたいですね。単なる「工場」から「モノをつくる会社」、さらに「モノをつくって売る会社」にしたいと考えています。従来のOEM事業を守りながら、自分たちのブランドをつくり、お客様にとって価値があるものを販売していきたいと思います。

また、最近では強化ダンボールでバッグや財布を売る店舗什器の注文をいただき、バッグを背負うマネキンなども製造しています。いろいろなことにチャレンジしながら新しいビジネスを開拓していきたいですね。

編集後記

新事業を展開しつつ、既存のOEM事業でも期待される以上の商品をつくりたいと語る加来社長。商品を手にとるお客様だけでなく、取引先や従業員にまで感動を与えたいという情熱を感じた。

国内生産だからこそできる繊細な技術と徹底した品質管理で、モノづくりと向き合うエースラゲージ株式会社のチャレンジに注目していきたい。

加来剛/1968年東京都生まれ。1991年エース株式会社に入社。36歳で百貨店事業部MD部長兼第2営業部長、39歳で執行役員に就任。その後、常務取締役MD本部長を経て、専務取締役MD本部長となる。2022年にエースラゲージ株式会社の代表取締役社長に就任。