※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

日本最多の拠点数を誇るベリーベスト法律事務所は、大学の同級生である酒井将氏と浅野健太郎氏が設立し、代表弁護士を務めている。今後弁護士数でも日本一を目指すという同事務所だが、一体ここまでどのような戦略で成長してきたのだろうか。酒井氏と浅野氏に同事務所が急成長した理由や他所との違い、今後の展望を聞いた。

広告・営業に力を入れることで専門性が高まり、顧客に選ばれる

ーー事業の内容や強みを教えてください。

酒井将:
弊所は、弁護士業を行っています。個人の方からの離婚、相続などに関する弁護士依頼と共に、企業の法律問題にも携わっています。現在拠点数は全国76にのぼり、日本で最多の拠点数となっています。

実は2010年創業と、歴史はまだあまり長くありません。それにもかかわらず、ここまで事務所の規模を拡大できたのは、弊所が経営に注力しているからではないかと考えます。

多くの法律事務所は広告宣伝活動を積極的に行っていませんが、弊所は弁護士広告の規制が撤廃されてからいち早く広告を出し、営業活動にも力を入れてきました。

広告や営業を行うとなると、売り上げ目標や事業計画を立てることにもなりますし、一般的な法律事務所と比べて利益への意識が強くなります。そして、改善を続けるから利益が上がり、その分人材を採用できるようにもなります。

たとえば交通事故の案件をとりたい場合は、当該分野の広告を出したり、整形外科や整骨院とのコネクションを増やすなど、営業先を自分たちで絞ることで、仕事の種類を選べるのも弊所の強みです。案件の種類を選ぶため、その分野に関する専門チームができ、専門性が高いことでお客様は弊所を選んでくれます。

弁護士が身近でない人のために法律事務所の全国展開を決意

ーー設立の経緯を聞かせてください。

酒井将:
もともと私は法律事務所に勤めながら、弁護士ドットコムという一般企業を起業し、また弊所の前身である法律事務所オーセンスを経営していました。

一般企業と法律事務所を経営する中で感じたのは、一般企業で利益を出すのはとても大変だということ。その一方で、法律事務所は資格が必要なので大資本が参入しませんし、広告や営業に力を入れる事務所が少ないため、ライバルが少ないという点で結果が出やすいことに気づきました。

法律事務所としてプラットフォームをつくり、それを全国に拡大すれば、弁護士にアクセスするのが難しい地域の人のためになるのではないかと。そこで「自分たちのサービスを全国展開する」という大きな目標を定めて、日本一の法律事務所にしようと全力投球でベリーベストを立ち上げました。

ーー起業前の浅野さんの経歴を教えてください。

浅野健太郎:
私は4年ほど企業法務を扱う法律事務所に勤め、上場企業の大きな案件をメインに扱っていました。事務所の費用で留学をさせてくれるという話もあり、留学準備をしていたときに酒井に声をかけてもらったのが起業のきっかけです。

その法律事務所での仕事は充実していましたし、弁護士としての力が付いている実感もありました。しかし、お客様はすべて事務所の顧客になり、私個人の顧客を獲得できないことに気がつきました。そこで留学は先延ばしにして、酒井と一緒に法律事務所を立ち上げました。

強いチームをつくることが顧客のためになり人材採用の強化にもつながる

ーー今後の展望を聞かせてください。

酒井将:
私たちは、まず弁護士が身近にいない個人の方にアプローチし、そこから中小企業の案件を手がけ、いろいろな専門分野の実績を積んでから大企業の案件に関わるという戦略をとっています。この戦略において弊所は現在、中小企業の実績を積んでいる段階にあるので、将来的には大企業の仕事も多く受けられるようになりたいですね。

浅野健太郎:
5年後には弁護士数で日本一になっていたいです。弁護士というのは、自分の所属する事務所を選ぶとき、この事務所に入って成長できるかどうかを重視することが多いです。そのため弊所は、弁護士たちの好奇心を引き出して成長につなげられる、弁護士たちに選ばれる事務所でありたいと思っています。

また、専門チームの分野を広げて、各分野でナンバーワンになれるようなチームを育てていきたいとも考えています。美容医療の被害やインターネット上での誹謗中傷など、ニッチな分野でもチームを立ち上げています。

それぞれの業界に精通した弁護士が対応することで、顧客もストレスなくサービスを受けられますし、そういった弊所の姿を見た弁護士が、うちの事務所を選んで入ってくれたらと思っています。

編集後記

「一流のサービスを提供するためには一流の弁護士が必要。そのためには事務所の待遇を一流にする必要がある。弊所は、業界ナンバーワンの待遇を目指す」と意気込みを力強く語った酒井氏。また、浅野氏も「全国どこにいても、お客様が高いクオリティのサービスを受けられるようになることを目指す」と、今後の展望を熱く語った。

2010年の創業から異例の急成長を遂げた同社なら、業界ナンバーワンの待遇や、弁護士数日本一を叶える日もきっと近いだろう。

酒井将/1999年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2000年司法試験合格。2002年最高裁判所司法研修所を修了。2005年弁護士ドットコム株式会社(東証グロース6027)共同創業 代表取締役副社長就任。2006年法律事務所オーセンス開設。2010年弁護士ドットコム株式会社退任後、ベリーベスト法律事務所開設。

浅野健太郎/1999年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2000年司法試験合格。2002年最高裁判所司法研修所を修了。2006年法律事務所オーセンスにパートナーとして参画。2009年ニューヨーク大学法科大学院(LL.M.)修了。2010年ベリーベスト法律事務所開設。日本と米国ニューヨーク州の弁護士資格を持つ。