※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

昭和38年創業の株式会社美松製菓は、食感や形、フレーバーが異なる150種類以上のバウムクーヘンの製造・販売を行っている会社だ。「濃厚いちごバウム」や「メロンバウム」など、さまざまな味のバウムクーヘンを展開し、工場直売店では手頃な価格で購入できる。

他社ブランドの商品を製造するOEMを始めたきっかけや、新たな販売経路の開拓などについて、代表取締役の佐藤昌司氏にうかがった。

カステラからバウムクーヘンに特化し世界一を目指す

ーー貴社の特徴を教えてください。

佐藤昌司:
弊社の最大の特徴は、バウムクーヘンの専門メーカーであることです。他社の場合は、複数のスイーツを販売する中、そのひとつとしてバウムクーヘンを売っているところが大半です。

しかし私たちは、バウムクーヘン一本で勝負しています。そのため美味しさはもちろん、品質や技術においても日本一、さらには世界一を目指して日々努力を重ねています。

ーー家業を継ごうと思ったきっかけは何だったのですか。

佐藤昌司:
もともとはカステラの製造・販売をしており、父と母が夜中まで働く姿を子どもの頃から見ていました。寝食を忘れて働く両親の姿を見て少しでも力になりたいと思い、家業を継ぐ決意をしました。入社後はパンづくりの修業をしていた経験を活かし、最初の1年間はパンの製造に携わりました。

私が入社した頃にはメイン事業がカステラからバウムクーヘンに切り替わりつつあり、その後はバウムクーヘンだけに注力するようになりました。当時は、自社ブランドの商品を販売していましたが、量産につなげるためにOEM事業を立ち上げ、大手菓子メーカーのプライベートブランド商品の開発を請け負うようになりました。

バウムクーヘンのOEMを始めたきっかけはドイツでの思わぬ出会い

ーー他社のPB商品の開発に携わるようになったきっかけは何ですか。

佐藤昌司:
ドイツ研修中に、大手菓子メーカーの役員の方と偶然出会ったのがきっかけです。仕事の話をするうちに互いに打ち解け、帰国後に一緒に仕事をしようという話になりました。

その縁がきっかけとなり、プライベートブランドのバウムクーヘンの製造を請け負うことになったのです。これを機に他社からもOEMの依頼が増えていき、売上の6割程度を占めるほどになりました。それにより自社商品の製造・販売だけをしていた頃と比べ、売り上げが一気に伸びました。

ーー経営者としてどのようなときに喜びを感じますか。

佐藤昌司:
自分のひらめきから生まれた商品がヒットしたときは、とても嬉しいですね。昨今は商品のサイクルが短いため、常に新しい商品を生み出そうと24時間365日、新商品のアイデアを考えています。

新製品のアイデアを思いついたら忘れずにメモし、現場責任者に伝え、常にチャレンジを続けています。こうした努力が実り、商品が市場で高く評価されたときに、製造メーカーとしての喜びを感じます。

ーー新商品開発はどのくらいのペースで行っているのでしょうか。

佐藤昌司:
中には市場に出回らない商品もありますが、1ヶ月に3種類前後の試作を行い、各部署で試食をして、意見交換をしています。消費者の方の食に対する趣向のサイクルが早いので、常に新しいアイデアを打ち出しています。他社にないバウムクーヘンを次々と生み出し、お客様に美味しいと言っていただけるよう、日々努力を続けています。

新たな販売経路の開拓をすることで利益率を高める

ーー今後の戦略についてはどのようにお考えですか。

佐藤昌司:
流通向けの価格競争が厳しくなっているため、今後はインバウンド向けの販売経路を開拓したいと考えています。営業力強化のため、直近でインバウンド路線に特化した営業スタッフを新たに一人採用しました。

そのスタッフを中心に百貨店や空港など、外国人観光客が多く訪れる場所に商品を販売してもらえるよう、交渉を続けています。今後、適正な価格で販売できる販路を増やし、利益率のアップを目指していきます。

ーー社員教育や会社の方針について大切にしていることを教えてください。

佐藤昌司:
特に工場現場でのコミュニケーションを重視し、毎朝朝礼ミーティングを行い、お互いの情報共有を確認して細部まで伝えています。基本ではありますが、報告・連絡・相談の徹底を日頃から実行してます。

ーー最後に貴社が求める人物像について教えてください。

佐藤昌司:
黙々と作業をこなせる真面目な人材を求めています。製造工場では、淡々とバウムクーヘンを焼く職人気質な方が多いです。同じ作業を繰り返し行うことが好きな方、一つの作業に集中して取り組める方は、ぜひ弊社にお越しください。

編集後記

先代から家業を引き継ぎ、OEMの受託で事業を成長させてきた佐藤社長。「24時間365日新商品のことを考えている」という発言からもわかるように、常に次の一手を考える姿勢が、200以上ものバウムクーヘンを生み出している原動力なのだろう。新たな販路を見出し、さらなる成長を目指す株式会社美松製菓は、これからも多くの人々から愛されるバウムクーヘンを提供することだろう。

佐藤昌司/1957年東京都墨田区生まれ。1979年ドイツのデュッセルドルフで製菓、製パンの研修後、帰国し、1983年美松製菓入社現在に至る。