統計データプラットフォームである「Statista Japan」の調査によれば、メタバースの世界市場規模は2030年に1兆ドル近くまで成長すると予想されている。そんなメタバース領域に「恋愛」という新たな風を吹かせているのが、株式会社Flamers(フレイマーズ)だ。
同社の代表取締役CEOである佐藤航智氏が手掛ける恋愛メタバースのマッチングアプリ「Memotia(メモティア)」は、アバターを介してコミュニケーションをとることで、お互いの「内面」にフォーカスした関係を築けるという。
そこで今回は、佐藤社長にMemotiaの魅力や開発の背景、実現したい夢などを聞いた。
多くの長期インターンを経験し、中学生時代から抱いていた起業の夢を実現
ーー佐藤社長の経歴についてお聞かせください。
佐藤航智:
起業を意識し出したのは中学生のときです。若くして起業で成功を収めた社長が登場するドラマ「リッチマン、プアウーマン」に影響を受け、それから「起業で成功する」という夢を追うようになりました。
大学に進んでもその気持ちは変わらず、起業の参考にするために2年生の頃から長期インターンを始め、約2年間で合計4社の長期インターンを経験しました。
インターン中の経験で特に印象に残っているのは、会社によって代表の雰囲気が大きく違っていたことです。ある会社の代表はピリピリした雰囲気の方で、話しかけるにもタイミングを見計らう必要がありましたが、その次にお世話になった会社の代表はとても明るく、コミュニケーションが取りやすい方でした。
この経験から、自分も代表になるなら明るく、会社にネガティブな雰囲気を持ち込まない存在になろうと思いました。
長期インターンを終えると、大学を休学した状態でFlamersの立ち上げに踏み切ります。大学は事業に専念するために退学し、以降は弊社の経営者としてキャリアを積んできました。
恋愛メタバース「Memotia」で、マッチングサービスの価値観に革新をもたらす
ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。
佐藤航智:
弊社の主な事業は、恋愛メタバースサービスの「Memotia」と、長期インターン求人サイト「Voil(ボイル)」の運営で、現在はMemotiaがメイン事業となっています。
それぞれのサービスを簡単に説明すると、まずMemotiaは、メタバース空間でアバターを使った交流ができるマッチングサービスです。アバターを介することで個人情報をさらす必要がなく、また、内面にフォーカスしたコミュニケーションがとれます。
Voilは、長期インターンのベストマッチングを支援するためのサービスです。長期インターンは期間が長いだけに、学生と経営者の両方にとって、ミスマッチのリスクが大きいので、学生と経営者がWin-Winになれるマッチングをプロのコーディネーターが提案します。
ーーMemotiaの魅力についてお聞かせください。
佐藤航智:
Memotiaの魅力は、従来のマッチングアプリよりも気軽に、ゲームを楽しむような感覚で始められること。そして、相手の内面を理解することで、実際に会ったときのギャップが少なくなることです。これらの強みから、お付き合いだけでなく、婚約に進んだ実績もあります。
実はMemotiaは、私自身がメタバース空間で出会った女性とお付き合いして、結婚した経験を元に作ったものです。
当時、私たちはお互いの顔や名前を知らない状態でしたが、それでも恋愛関係にありました。私はこの「お互いの立場を気にしない、純粋な恋愛体験」がとても素敵だと感じ、同じ体験をもっと多くの方に届けたいと思うようになったのです。
また、時間や場所の制約が現実より少ないのも魅力の一つです。Memotia内にはさまざまなデートスポットが用意されているほか、一緒に遊べるアクティビティもあるので、自宅にいながら現実のデートのような体験ができます。
ーーMemotiaのマッチングツールとしての強みとは何でしょうか?
佐藤航智:
Memotiaの強みは、サービス内にメタバース空間という「場」を持っていることです。
これにより、Memotiaのサービス内にマネタイズポイントを創出できます。たとえば、現実世界でデートや服にお金をかけるように、有料のデートスポットの利用やアバターの服の新調といったデジタルコンテンツの販売が可能です。
ユーザーはある程度、継続的にMemotiaにアクセスするので、繰り返しコミュニケーションを取ることができますし、新たな体験につながるコンテンツを提供できれば、売上アップのチャンスも広がります。
多くのカップルたちにとってかけがえのない体験をするツールへ
ーー今後の展望についてお聞かせください。
佐藤航智:
Memotiaを出会いのツールから、カップルが絆を深めるツールへと変えていきたいです。現在は出会いを見つけるのが主な用途ですが、今後は付き合ったカップルがメタバース上でデートをしたり、結婚後に夫婦で遊べる場所にしたりと、役割を増やしていきたいですね。
そうすれば、Memotiaが多くの人にとっての思い出の場所になりますし、弊社にとっても、長くご利用いただけるサービスとして新たな可能性が広がります。
そして究極的にはMemotiaを、多くのマッチングアプリの中でも一番自然で楽しい付き合い方ができるアプリにしたいですね。従来のマッチングアプリでありがちな「頑張って相手を探さなきゃ」というプレッシャーを感じることなく、もっと気軽に、自然な形で出会いを楽しめる場にしていきたいです。
編集後記
佐藤社長がMemotiaで目指す恋愛体験は、お互いの立場や距離などの制約を取り払った、現実よりもはるかに自由なものだ。メタバースの利用が一般的になっていくにつれ、Memotiaは次世代の恋愛のスタンダードになるかもしれない。株式会社Flamersがこの分野をリードし、デジタルとリアルの境界を越えた新しい価値を生み出す姿は、これからますます注目を集めていくだろう。
佐藤航智/1997年オランダ生まれ。2012年「リッチマン・プアウーマン」を見て起業家やエンジニアという働き方に興味を持つ。2016年に東京大学に入学後、4社で長期インターンを経験。2019年に大学を中途退学し、株式会社Flamersを創業。2020年に長期インターンの求人サービス「Voil(ボイル)」をリリース。2022年、恋愛メタバースのマッチングアプリ「Memotia(メモティア)」を開発。