太陽光発電は、世界がカーボンニュートラルを目指す中、有望な再生可能エネルギーであり、リードタイムも短く、小規模でも始められるため、多くの業者が参入しやすい事業である。そのため、近年ではグレーゾーンの販売方法で消費者をだます詐欺事件も起こり、被害件数は増加の一途を辿っている。
そんな状況を打開し、消費者が信頼できる太陽光発電システムを低価格・高品質で提供し、高い評価を得ているのが、株式会社トラーチだ。悪徳業者撲滅を目標に起業するまでの経緯や、効率的な社内教育システム、今後の目標などについて、代表取締役の稲場基泰氏にうかがった。
警察官時代に被災地で知った自家発電システムの重要性
ーーまず警察官時代のお話からお聞かせいただけますか。
稲場基泰:
警察一家に生まれ、私も大阪府警察の警察官となり、パトカー勤務や機動隊を経て、凶悪犯罪を専門に捜査する捜査一課の刑事として第一線で働いていました。30歳のときには同期約700人のうち最年少で警部補に昇格するなど、順調にキャリアを積んでいきました。
ただ、自分より年上の方を部下として指導しなければならず、少しやりにくさを感じていました。そして、階級が上がるごとに仕事量は増えるものの、給与は一向に上がらない環境にやや不満を抱くようになっていましたね。
ーー太陽光発電に興味を持ったきっかけは何だったのですか。
稲場基泰:
東日本大震災のときに、太陽光発電の重要性に気付いたのがきっかけです。当時、私は機動隊の広域緊急援助隊に所属しており、現地で支援活動を行っていました。そのときに周囲が停電している中、太陽光発電を設置している家だけは明かりがついていたんですよ。
その様子を見て、自宅にも太陽光発電を設置すれば、災害時に出動して家を空けている間も家族を守れると思ったのです。また、自宅がオール電化のため、子どもが3人いる我が家は電気の使用量が多く、電気代の高さに頭を悩ませていました。
そこで自宅で発電できるようになれば、月々の電気代も抑えられ、一石二鳥だと思ったんですよ。それを機に、自宅に太陽光発電システムと蓄電池を導入しました。するとその後、実際に停電が起きた際、周囲が真っ暗な中で自分たちの家だけ電気が使えたのです。我が家だけ明かりがついているので、近所の方々が不思議に思って集まって来ていましたね。
詐欺業者を根絶するため、自ら会社を起こすことを決意
ーーそこから今の事業を立ち上げるまでの経緯をお聞かせください。
稲場基泰:
仕事柄、太陽光発電やリフォームに関する詐欺被害が多発していることは知っていました。そんな中、私の母も太陽光発電業者を名乗る者から詐欺被害に遭ってしまったのです。身内が被害に遭ったのを機に、悪徳業者による被害がどれほど広がっているのか調べました。
すると、太陽光発電関連の詐欺事件は、全国各地で起こっていると知りました。この状況を目の当たりにし、このままではさらに被害が拡大するのでは、と危機感を覚えたのです。
その過程で、太陽光発電システムの仕入れ価格に比べ、実際の販売価格が高額であることに気付きました。そこで、適正価格で太陽光発電システムを提供すれば、詐欺業者を撲滅でき、被害に遭う方を減らせるのではないかと考えたのです。これをきっかけに、詐欺被害の多かった地元の奈良県で起業しました。
ーー創業後はどのように事業を展開していったのですか。
稲場基泰:
まず自分自身が現場のことを知らなければ説得力がないと思い、施工資格を取得しました。そして、営業活動をするかたわら、現場作業も行っていました。警察官時代にリーダーが率先して動かなければ部下はついて来ないと身をもって感じたので、先陣を切ってがむしゃらに働きましたね。
そして、工務店への飛び込み営業を重ね、現在では38社と提携しています。さらに吉本興業さんとも提携してテレビCMを放映し、イオンモール等での販促活動も行っています。その結果、創業から2年で売上10億円を達成しました。
低価格・高品質な施工で急成長。DXで効率的な教育環境を整備
ーー貴社の強みについて教えてください。
稲場基泰:
業界最安値で製品・サービスを提供していることと、高品質な施工技術が強みです。太陽光発電システムとセットで蓄電池も取り扱い、大量に購入することで仕入れ価格を抑えています。適正価格で提供し続ければ、高額な費用を請求する業者との差別化が図れ、消費者を守ることができます。
正々堂々と真っ当な商売を行い、「太陽光発電業界の警察官」として、悪徳業者の撲滅を目指していきたいです。また、施工技術の高さから、太陽光発電メーカーの施工事例にも多く取り上げられています。
さらに、ユーザーの補助金申請のサポートも自社で行っています。このように、導入費用が安く、施工品質も高く、面倒な手続きも代行してもらえると、お客様から高い評価を得ています。この評判を聞きつけ、「ぜひノウハウを学ばせてほしい」とメーカーから出向社員が来るほどです。
ーー採用や人材育成についてはいかがですか。
稲場基泰:
性別や年齢に関係なく、成果を上げた社員にはインセンティブ(報酬)を支給しています。会社のPR動画をTikTokで配信して以降、月に100人ほどの応募が来ている状態です。特に私が元警察官ということもあり、警察官や検察事務官など、公務員出身者の応募も多いですね。
また、社内にポータルサイトを設け、24時間365日いつでも学べる環境を整えています。すべての業務フローをマインドマップで可視化できるようにし、動画マニュアルも完備しています。このように社員教育にDXを活用したことで、効率的にノウハウや技術の習得ができています。
想像以上の手厚いサービスへの感謝が、社員の自信にもつながる
ーー貴社の経営理念に込めた思いを教えてください。
稲場基泰:
これまで「お客様が喜ぶ商品やサービスを胸を張って提案できる会社」を共通理念としてきました。そこで生まれたのが、「期待を超える想像力が誇りとなる」という経営理念です。
お客様の期待以上のサービスを提供することで、弊社のファンになっていただく。それがリピートにつながり、成果を上げることで社員の誇りにもなると考えています。そのため社員には常にアンテナを張り、お客様の一歩二歩先の提案をするように心がけています。
また、弊社のビジョンは「関わる人すべての人たちに幸せを提供し、いつの時代も真に必要とされる企業になる」です。未来永劫にわたって愛される会社であり続けるため、誇りと使命感を持ってプロフェッショナルであることを心がけています。こうした理念やビジョンを浸透させるため、毎回朝礼で私の口から直接、社員たちに伝えています。
ーー最後に今後の展望をお聞かせください。
稲場基泰:
現在、奈良・大阪・京都・滋賀・名古屋に拠点を置き、2025年4月には東京支社をオープンする予定です。今期の売上は20億円ほどと見込んでいますが、5年後には売上100億円を達成し、太陽光発電業界でNo.1になることを目標としています。
これからも信頼と実績を高め、お客様の期待を上回るサービスを提供できるよう、心を込めたサービスを提供して参ります。
編集後記
被災現場で太陽光発電の重要性に気付き、さらに詐欺被害に遭う方をなくすため、警察官のキャリアを別業界で活かすために起業した稲場社長。適正価格で販売し、高品質な施工を行う同社は、まさに太陽光発電業界の頼れる警察官だ。株式会社トラーチはさらなる成長を続け、誰もが安心で安全な生活を送れる社会の実現に貢献していくだろう。
稲場基泰/1987年生まれ。双子の兄として警察一族に生まれ、大学卒業後は父と同じ警察官の道へ。同期約700人の中で最年少30歳で警部補に昇格。その後、32歳のときに未経験で住宅用太陽光発電のシステム販売営業の道へ飛び込む。入社から1ヶ月で営業成績ナンバーワンという結果を出した。2021年に独立し、住宅用太陽光発電・蓄電池システムの販売会社株式会社トラ―チを設立。創業2年目で年商10億円を達成。現在は双子の弟とともに会社を牽引している。