※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

広島に拠点を置く株式会社上万糧食製粉所は、「青きな粉」や「だんごの粉」など、地域で長年親しまれている商品を多数手がけている製粉メーカーだ。着色料や添加物を使用していないため、素材そのものの風味を楽しめる点が強みだが、人気の理由はそれだけではない。代表取締役社長の栗栖亮輔氏を取材し、同社が長年愛される理由に迫った。

商品の見せ方を変えることで新たな市場を切り開き、海外にも事業を拡大

ーー会社を継ぐことはいつからお考えでしたか。

栗栖亮輔:
物心ついたときから「いずれは会社を継いでほしい」と祖父母からよく言われており、親族からも会社の話をよく聞かされていました。そのため、会社を継ぐことについては昔から考えており、社長になることを意識して学習院大学の経営学科に入学。大学ではブランディングについて学び、卒業後はブランディング戦略で業績がV字回復したマツダに入社しました。

マツダでは営業販促の仕事をしていたので、ブランディング業務に直接関わることはありませんでしたが、ものづくりに対する思いや、それをどのように伝えるかといった点を学ばせてもらったと感じています。

2015年に上万糧食製粉所へ入社してからは、商品の見せ方を変えることで新たな市場を開拓する仕事に取り組みました。もともと米をフレーク状に加工した「米粉フレーク」という商品を国内向けに販売していましたが、海外でグルテンフリーの需要が高まっていることを受けて、国産米からつくったパン粉「WA-PANKO」にリブランディングしたのです。

安心・安全な環境のもと、穀物を多種多様な形や味に変えられる点が強み

ーー事業内容と強みについて教えてください。

栗栖亮輔:
弊社は米や大豆、大麦などの穀物を粉にして、和菓子の原料をつくるメーカーです。これらの穀物を多種多様な形や味に変え、いろいろな食べ方や使い方の提案もしています。この「穀物を多種多様な形や味に変えられる」という点がポイントで、たとえば米を焼くこともあれば、フレークにすることもあります。一部分を変えることで、米の可能性を広げている点が強みです。

そのほか、創業時から安心・安全への取り組みとして、清掃に力を入れている点も強みです。弊社の工場に来られた方々は、「とても綺麗ですね」と、皆さん驚かれます。また、空気清浄機を個別に設置することで、粉を砕く際に粉が舞わないような仕組みなどを構築しています。

さらに、全国の製菓・製パンメーカーなどに商品を販売しているので、世界基準に対応できるよう、食品安全マネジメントシステムの国際認証規格のFSSC22000を、2022年に取得しました。

ーーどのような人材と一緒に働きたいですか。

栗栖亮輔:
現在は中途採用が多いですが、今後は新卒採用も始めたいと思っています。会社の思いやビジョン、理念を理解したうえで、一緒に成長してくれる方を採用したいですね。会社のルールを守りつつも、今よりもっと良い方法を自ら探し、販売や開発において新しい考えを貪欲に取り入れることができる方が理想です。

今後は子どもの成長のサポートなどを通して、人々の健康により一層貢献していく

ーー今後の注力テーマを聞かせてください。

栗栖亮輔:
注力テーマとしてまず挙げられるのが、ブランディングです。たとえば、きな粉を「プロテインの代わりに使える健康的な食品」として提案するなど、見せ方や売り方、食べ方などのブランディングを突き詰めながら、新規の取引につなげていきたいと考えています。そして、商品についてしっかりと発信することで、弊社が「穀物を何でも美味しく食べやすく変える会社」と、世間に認知してもらえるようになりたいですね。

また、子どもの体の成長をサポートするといった方面でも、弊社の商品を展開したいと考えています。そのほか、弊社と仕事をしたいと多くの企業から思ってもらえるよう、まずは会社としての知名度を上げることや、和菓子以外の商品にも力を入れることで反響を呼び、多方面の企業にアプローチできるようになることが目標です。

ーー最後に、将来に向けた社長の思いを聞かせてください。

栗栖亮輔:
弊社が取り扱っている米や大麦、大豆などの穀物は、手頃な価格なわりに栄養豊富で、大きな可能性を秘めています。パンや麺、お菓子の中にこれらの穀物を入れて、人々を少しでも健康にするといった形で、会社として世の中に貢献していきたいです。

弊社の手にかかれば、日本に昔からある穀物を美味しく使いやすく変えられます。今後も原料をさまざまな場面で使えるように加工し、広めていくことを使命として取り組んでいきます。

編集後記

上万糧食製粉所の商品は、広島の優れた特産品として「ザ・広島ブランド」にも認定されている。ブランディングにこだわっている同社の商品は、美味しいだけでなく、人々の健康にも貢献する。品質の良さが前提としてあるからこそ、いろいろな見せ方や食べ方を提案できるのだろう。今後は一体どのような商品が世に届けられるのかが楽しみだ。

栗栖亮輔/1985年生まれ、2008年に学習院大学経済学部経営学科を卒業後、マツダ株式会社へ入社。2015年株式会社上万糧食製粉所入社、2020年専務取締役就任、2023年代表取締役社長就任。