
ディーライズ株式会社は、家電製品を中心にインターネット販売を展開する少数精鋭の企業だ。代表取締役社長の貴島康博氏は、SEだった自身の経験を生かし、ECサイトのシステム効率化を実現。さらに在庫共有プラットフォームを構築するなど、新たな仕組みを取り入れている。同社設立のきっかけや事業内容、今後の展望を聞いた。
ECの黎明期から開発に携わる
ーー貴社設立までの経緯を教えてください。
貴島康博:
もともとSE出身ということもあり、パソコンが好きでよく触っていました。当時はインターネットのプラットフォームがまだほとんど存在しない時代でしたが、その頃から何となくECのイメージというのは頭の中にありましたね。
1995年にWindows95がリリースされ、インターネット上にコミュニティが少しずつでき始めた頃、自分でオリジナル商品をつくり、オークションサイトで販売していました。まだECサイトが確立する前でしたが、オークションサイトを通じて自分の商品が全国各地の方に購入される体験をし、さらにECの解像度が自分の中で高まっていくのを感じました。
その後さまざまなプラットフォームが誕生し育っていく中で、いわゆるECの黎明期がやってきました。当時私は29歳でしたが、運よくECの会社に転職することができたのです。
当時のECはインフラシステムの技術力が発展途上で、非常にアナログな世界でした。そんな環境で働くうちに、システムの効率化や販売力強化のアイデアが自分の中にたくさん溜まっていったのです。そして、自分の理想とするECサイトをつくろうと、2008年に弊社を設立しました。
ーー起業に際して苦労されたことはありますか?
貴島康博:
ECサイトというのは、資金力が必要な事業です。売上に対する原価率も高く、資金力が仕入れ能力や販売能力につながります。弊社は大手企業から資金援助を受けたわけでも、手を結んで設立したわけでもありません。ワンオーナーで資金繰りを行わなければならなかったため、その点が一番苦労しましたね。
自社システムの導入で労働量を大幅に削減

ーー貴社の事業内容や強みを教えてください。
貴島康博:
弊社はインターネット販売事業を展開しており、主に家電製品やカー用品、パソコン関連用品を扱っています。総合家電店のイメージを持っていただくとわかりやすいかもしれません。
弊社の強みは、EC業界の中でも特にシステム開発に力を入れているところです。商品の入荷から出荷までに複数の自社開発システムが介在しており、アナログ作業を必要とせずすべて自動で行います。また、現在ある9店舗の管理を一元化しているため、不良在庫の発生を抑え、在庫1つからでもお客様に露出できている状況です。
こうしたシステムは効率性を高め、省人化を可能にします。弊社は社員数が約25名と少ない会社ですが、生産性が高く少人数でも十分に回っている状態です。残業もほとんどなく、社員の多くは定時で帰宅できます。
ECサイト自体の効率化もそうですが、職場環境の改善にもシステムが寄与していますね。効率化による生産性の高さは売上拡大にもつながりますので、今後もシステム開発を続けていこうと考えています。
ーー現在注力していることをお聞かせください。
貴島康博:
実は弊社のBtoCのECサイトは、約4割が法人のお客様です。私自身この数年で、ECサイトにおける法人のお客様との距離感が変化していると感じていました。特に、企業に購買部があった時代と比較すると、法人のお客様と販売元の距離感が縮まっているように思います。
そのため、現在あるBtoCのECサイトとは別に、いわゆる業販用販売サイトを開発して、運用を始めています。販売業のお客様が仕入れ先として弊社を活用していただいている状態ですので、今後はこのサイトの展開と共に、全国でBtoBの新規取引先を増やしていく予定です。
もう1つは、効率性の追及ですね。社員約25名という現在の体制を維持しながら、年商250億円までは目標にできると考えています。
在庫提携プラットフォームの展開でECに新たな風を

ーー今後の展望を教えてください。
貴島康博:
ECサイトを始めるにあたって1番ネックとなるのは資金力です。特に家電は単価が高く、在庫を増やすのも簡単ではありません。現在弊社では、これから起業したい方やECサイトで家電を扱いたい方が弊社の在庫を使えるような、在庫共有プラットフォームの提供を実験的に始めています。弊社の在庫とシステム、物流を利用し、お客様に商品展開をしていく形ですね。
現在は家電が中心ですが、今後このプラットフォームを成長させ、食品や雑貨、ブランド物など、カテゴリー問わずニーズに合わせて取り扱い商品を横展開していきたいと考えています。ゆくゆくは、さまざまな商材がある程度弊社の倉庫で揃うという状況まで持っていくことが目標です。
また、今後私1人ができる範囲を越えて会社を拡大していく時には、現在のオーナー企業の体質から脱却しなければいけないと考えています。ですので、必要に応じて大企業との資本提携なども視野に入れていきたいです。資本提携をするとしたら、それを弊社の未来にどうつなげていくのか、さまざまな角度から検討していきたいですね。
編集後記
ECサイトを頻繁に利用している身からすると、使いやすいサイトやシステム設計は非常に魅力的だ。貴島社長の持つエンジニア的な視点が、今後EC業界に革命をもたらすだろう。ECサイトの可能性を追求する同社の今後から目が離せない。

貴島康博/1972年、東京生まれ。SEや営業などさまざまな業種を経験する。2008年ディーライズ株式会社を創業し、代表に就任。価格.comや楽天市場、au PAYマーケット、Amazonなどのプラットフォームで9店舗を展開。