
外食産業をはじめとする店舗型ビジネスの成長を、多角的に支援するナシエルホールディングス。同社は、居抜き物件の仲介からM&A支援、人材採用、組織構築まで、企業の成長段階に応じた幅広いサービスを提供している。創業の経緯や事業内容、今後の展望について、代表取締役の中村幸司氏に話を聞いた。
証券マンとして培った知識と同僚が起業の土台に
ーー起業までの経緯についてお聞かせください。
中村幸司:
私は新卒で大和証券SMBCに入社し、1年目からM&A業務に携わりました。そこでは、国内外の飲食業やサービス業の企業を中心に、数十億から数百億円規模の案件を担当していました。その後、外資系投資銀行のラザード フレールに移ったのち、2009年に独立して、大和証券の同期であった後藤と共に設立したのが弊社です。
学生時代から起業したいという思いがありました。大学では経営システム工学という経営に関する学科を選び、就職先も幅広い会社や業界の経営に関わることができる会社を選んでいました。起業に役立てたいという思いを持ちながらキャリアを積んできたので、思い切って起業しました。
ーー起業後はどのようにビジネスを展開したのですか?
中村幸司:
業界の知識、経験、ネットワークも何もない中でしたので、創業時期は大変でした。最初は居抜きの店舗をマッチングするポータルサイトを立ち上げました。売りたい人と買いたい人が、自然とマッチングする仕組みを考えていましたが、サイトをつくっただけでは全く結果が出ず、自分たちで足を使った営業活動をせざるを得なくなったのです。
そこで、大手の外食企業を中心に規模の大きいところからアポをとり、ひたすら営業を行いました。やがて、少しずつ信頼してもらえるようになり、初めての成約が、起業から7か月目でした。その後は、徐々に成約が増えていき、その後はM&Aのご相談もいただくなど、事業が本格的に軌道に乗っていったのです。
幅広いサービスと専門性で、外食企業の成長を支援

ーー貴社の事業内容について教えてください。
中村幸司:
弊社は外食企業などの店舗型ビジネス事業者向けに、さまざまな側面から成長支援を行っています。具体的なサービスとしては、出店支援や人材採用、評価制度の構築・運用支援、フランチャイズ本部体制構築、事業計画作成などのコンサルティング、そしてM&A支援まで幅広く手がけています。企業が成長する過程では、店舗展開や人材確保、組織づくりなどの課題は避けられません。弊社はそうした成長に必要なサポートをワンストップで提供できる体制を整えています。
ーー貴社の強みはどのような点にありますか?
中村幸司:
創業当初から外食産業を中心に取り組んできた専門性とネットワークが強みです。その分野に特化して事業を拡大してきたことにより、現在では7万社以上のお客様と信頼関係を構築することができています。
また、弊社自身が、M&Aを実施し、グループ化した企業と連携しながら、グループ一体で新しいサービス(人材サービスやIT関連サービスなど幅広いソリューション)を提供できている点も強みといえるでしょう。これにより、お客様の課題やニーズに応じて、適切なサービスを組み合わせてご提案できるのです。
誠実な人材とともに、日本の食文化を世界へ
ーー今後の事業展開についてお聞かせください。
中村幸司:
まずは国内エリアを拡大していきたいと考えています。現在は1都3県が中心ですが、次は関西を強化し、徐々に全国へも展開するつもりです。また、日本の食産業は、人口減少で国内消費が減り続けていくことが見込まれている一方で、諸外国から非常に人気があるんですよね。そのため、海外に出ていくことは至上命題であり、我々もその貢献をすべく、海外展開も視野に入れています。
現在、アメリカやイギリス、シンガポールなどでM&Aや人材関連の案件に取り組んでいるので、これらをさらに広げていきたいですね。海外拠点を持つというのはまだ先の話になりますが、まずは国内で海外との取引を積極的に行っていきます。必要な体制を整え、グローバル展開できればと考えています。
ーー求める人材像について教えてください。
中村幸司:
私は「良いやつ採用」と呼んでいますが、前向きで、かつ人間性の良い方を採用したいと考えています。単に仕事ができるというだけでなく、お客様に対して誠実に向き合える人材が、結果的に良いサービスを提供できると思うのです。また、弊社では幅広いビジネスに触れられるため、ビジネスパーソンとしてのキャリア形成にも最適な環境だと自負しています。
先述の通り、国内に留まらず海外も含めて事業を伸ばしていきたいと考えているので、一緒にいろいろな景色を見たいと思う方に来ていただけると嬉しいですね。
編集後記
証券会社からM&Aの専門性を積み上げ、外食産業という特定分野に深く根を下ろした中村代表。創業期の困難を乗り越え、確固たる地位を築き上げた経営手腕に感銘を受けた。特に印象的だったのは「良いやつ採用」という人材観だ。スキルより誠実さを重視する価値観こそが、顧客との深い信頼関係を構築する礎になっているのだと感じた。

中村幸司/1981年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部経営システム工学科卒業。2004年、大和証券エスエムビーシー株式会社に入社し、飲食・小売・不動産(ホテルやゴルフ場)・建設などの業界のM&A案件に従事。2008年、米国投資銀行の株式会社ラザード フレールに入社し、大型クロスボーダーM&A案件に従事。2009年、M&A Properties(現:株式会社ナシエルホールディングス)を立ち上げ、代表取締役に就任。日本証券アナリスト協会検定会員及び宅地建物取引士。