※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

2016年に設立された株式会社ソーシャルインテリア。家具や家電を気軽にレンタル・購入できる、月額制サブスクリプションサービス「サブスクライフ」を運営する企業だ。現在は、オフィスづくりの支援事業や、家具什器の受発注プラットフォームも展開している。代表取締役の町野健氏に、設立の経緯や企業が掲げるミッション、今後の展望をうかがった。

会社経営に興味を持ち、2つのベンチャーを設立

ーー町野社長のこれまでの経歴や、起業の経緯をお話しいただけますか。

町野健:
起業前にIT企業を2社経験しましたが、その中で特に印象深いのはシステムエンジニアとして入社したマクロミルでの経験です。マザーズ上場と東証一部上場に立ち合い、社員も急増していくベンチャーならではの成長が楽しかったですね。経営企画や海外進出に携わる中で、事業を動かす面白さも知りました。会社の経営に興味を持ったあとに、起業のアイデアが生まれたのです。

その後、韓国に赴任し、2010年に帰国すると日本ではスマホアプリがブームでした。その頃に思いついたアイデアが、キュレーションマガジンの「Antenna(アンテナ)」です。当時の代表に提案したところ、出資という形で背中を押していただき、グライダーアソシエイツの創業に至りました。

ーーグライダーアソシエイツ時代の取り組みをお聞かせください。

町野健:
自信を持ってローンチした「Antenna」のユーザー数が伸びず、当初は心が折れそうになりました。しかし、結果的には創業から3年で500万ダウンロードを達成し、黒字化するまで育てることができました。

序盤の伸び悩みを乗り越えるために、特別なことはしていません。レビューに書かれた要望に対応するなど、ユーザーが求めていることを実践していっただけです。視点を変えると、経営の基本を積み重ねれば、会社は成長するとも言えますね。

ーー貴社を設立した背景もうかがえますか?

町野健:
「次は自分の力で起業したい」という思いと、グライダーアソシエイツを離脱するベストタイミングが重なったことが最大の理由です。新たな事業の種は、渡米時に見つけました。

当時のアメリカでは、サブスクリプション事業のスタートアップが多数登場していたのです。定額の月額課金でモノやサービスを利用できる「サブスク」の概念は、当時の日本では浸透しておらず、とてもユニークな仕組みだと思いました。

そして、もともと家具やインテリアが好きなことから「家具とサブスクをかけ合わせたら面白いのでは」と考え、2016年に弊社を立ち上げました。2019年に日本でサブスクブームが起こり、時代の波にも上手く乗れたと感じています。

サブスク運営と業務支援で家具業界を盛り上げる

ーー現在の事業内容と強みを教えてください。

町野健:
家具・家電をレンタル・分割購入できる月額制サブスクリプションサービスとして、「subsclife(サブスクライフ)」を開発・運営しているほか、法人向けのオフィスづくり支援事業、家具什器の受発注プラットフォーム事業を展開しています。

弊社が提供しているのは、家具はもちろん照明・カーテン・アロマ・植物・アートを含む、空間づくりにかかわるもの全般です。専業が多い家具業界において、BtoC・BtoBを押さえた3つの事業があることが最大の強みであり、世界的に見ても稀有な会社だといえるでしょう。

――受発注プラットフォームを開発するきっかけはあったのでしょうか?

町野健:
自社サービス向けに家具を仕入れる過程で、受発注業務を効率化したいと思ったのです。
インテリア業界は、家具を発注する側とメーカー側の双方でDXが遅れている状況でした。弊社が開発した業務管理クラウドは、家具のコーディネート・選定から一括見積、発注までワンストップで行えるサービスであり、国内外の企業様をつなぐ役割も果たしています。

ミッションは日本における「インテリアの価値向上」

ーー現在の注力テーマもうかがえますか。

町野健:
2025年4月より「インテリアの世界を変える。インテリアで世界を変える。」という企業ミッションを掲げ、他業界とのコラボなど、いろいろなことに取り組んでいます。

日本の衣食住における「住」の分野は、欧米の先進国と比較するとあまり重視されていません。不動産の先にあるインテリアには、あまり投資しない国だといえるでしょう。部屋の中で過ごす時間は想像以上に長いからこそ、僕たちはインテリアを主体とした暮らしの文化を日本に広めていきたいと考えています。

新しい仕掛けとして、東京・青山にオープンした「THE MUSEUM」は、50社以上にご提供いただいたアイテムからなるショールーム兼オフィスです。弊社の事業は家具メーカー様や内装・設計会社様がいてこそ成り立つものです。その「みんなで家具・インテリア業界を盛り上げていきましょう」というスタンスを形にしました。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

町野健:
インテリアの優先度が衣食に並ぶか、超えるぐらいの世界観をつくれたら面白いですよね。ビジネスモデルとしては、時価総額1兆円規模を目指せるため、暮らしやインテリア業界を変えるようなインパクトを打ち出していきたいと思います。

インテリアに対する価値観が変われば、ゴミが減るとも考えています。気に入ったものを長く大切に使うことで部屋のレベルが上がり、環境にもやさしく、一石二鳥ではないでしょうか。社会的意義の高さもふまえて、「住」に投資するメリットを伝えていきます。

編集後記

ITブームの最中にシステムエンジニアとして活躍し、サブスクという新たな文化の到来も見逃さなかった町野社長。その優れたアンテナで、ユーザーのみならず業界内の声を見事にキャッチし、多角的な事業を進めてきた。家具・インテリアにこだわることは贅沢ではなく、心と暮らしを豊かにする最初のステップ。新たなミッションに挑んでいく町野氏が、この価値観を当たり前にする日は遠くないはずだ。

町野健/1974年生まれ。上智大学大学院修了。株式会社日本HPのシステム開発コンサルタント、株式会社マクロミルにて経営企画や海外事業の立ち上げを経験。2012年、キュレーションマガジン「Antenna」立ち上げのため、株式会社グライダーアソシエイツを創業。2016年、株式会社ソーシャルインテリアを設立し、代表取締役に就任。2018年、日本初の家具サブスクリプションサービスを開始。