※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

医療現場等での感染リスクの低減と医療従事者の業務効率の向上に貢献することを使命に掲げるアズテック株式会社。同社は1994年創業のファブレスメーカーとして、手術室や中央材料室、内視鏡室等向けの製品をはじめ、術野映像記録管理システムや遠隔医療支援ツールである「AZCONNECT」など、多彩な商品とサービスを展開している。病院とのコミュニケーションを大切にし、医療現場の感染リスクの低減と業務効率向上に尽力する同社の代表取締役、橋本裕之氏に話を聞いた。

30年の銀行キャリアから医療の世界へ飛び込んだ

ーー貴社に入社した経緯を教えてください。

橋本裕之:
私はもともと銀行員として、メガバンクに30年あまり勤務していましたが、2020年8月に株式会社ソフト99コーポレーションの子会社となった弊社にご縁があり、2021年に入社。当初は内部管理を中心に担当しておりましたが、2023年に代表取締役に就任することとなりました。

ーー貴社に加わってみて、どのような印象を持ちましたか?

橋本裕之:
入社して最も驚いたのは、社員全員が目標を共有し、自ら考えて行動する組織文化があることです。誰かから指示を受けなくても事業部ごとに社員たち自らで目標を立て、それを個人の活動に落とし込んで自発的に行動していました。私はこの自主性を重んじる文化を壊さず、むしろ強化するために、新たな評価制度や内部の仕組みを整えることに重点的に取り組みました。私が入社してからこれまで、退職者を1人も出すことなく、安定した業績を継続して来られたのも、この経営方針の成果だと考えています。

病院との対話から生まれる現場密着型の商品

ーー貴社の事業内容について教えてください。

橋本裕之:
弊社の事業は大きく分けて4つの分野があります。1つ目は「フロア衛生」です。ここでは、手術室や中央材料室等での水回りの衛生やフロアの汚染防止にお役立ていただくため、抗菌・吸水性に優れたグリーンシート、手術室等の床汚染防止に役立つフロアシート、本体に薬液を充填可能なタンクを有するオートモップ等の多様な商品をご提供しています。

2つ目の「業務サポート」では、看護や中材業務に携わるスタッフの方々の業務効率化・負担軽減に向けて、洗浄の際に手術用鋼製小物を保護するシリコンマットや、テープ等の粘着剤からお肌を守る保湿ジェルのアドバリア、経腸経腸ライン用大型活栓のロペツバルブなどを取り扱っています。

3つ目の「院内設備」では、手術前に使用する手洗い装置やシンク、薬液ディスペンサー、滅菌タオルと専用のホルダー等の商品をご提供しています。

そして4つ目の「事業開発」では、RO水製造装置のメンテナンス業務のほか、さまざまな新規事業領域の開発に携わっており、足元では術野映像記管理システムや遠隔医療支援ツールである「AZCONNECT」の取扱いに注力しています。

「AZCONNECT」は、国内の病院等での医療人材不足が懸念される中で、特に地方や島嶼エリアでの医療支援への活用が期待でき、現在弊社が注力している業務領域のひとつとなっています。

ーー貴社ならではの強みとはどのようなものでしょうか?

橋本裕之:
最大の強みは、病院と直接コミュニケーションをとり、そのニーズに柔軟に対応できる点です。病院はそれぞれ抱える課題や必要とする商品が異なるケースも多いですが、弊社ならではのフットワークを活かして現場の声を拾い上げ、商品開発に活かしています。

また、ファブレスメーカーとして工場を持たないことも強みです。これにより財務的に流動性の高いバランスシートを維持でき、またさまざまなメーカー様と連携し、柔軟な商品開発が可能です。

小さな会社だからこそできる医療現場への寄り添い方

ーー商品開発の取り組みについて教えてください。

橋本裕之:
継続的な新商品開発が弊社の課題であると認識し、社内に「新商品開発委員会」を立ち上げました。担当する業務の垣根を越えて、社員全員が新商品開発に携わる機会を設けることで、点だった活動を線、そして面へと広がっていくようにしたのです。

その成果として、最近では、手術器具を洗浄する際に大切な器具が跳ねて破損するのを防ぐ新商品「マルチシリコンメッシュ」が生まれました。器具の上に置くだけで使えますので、医療現場の業務効率化と負担軽減にお役立ていただいております。

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。

橋本裕之:
今後は手術室や中央材料室といった領域だけでなく、内視鏡室ほかへの新たな市場への展開を加速しながら進めていきます。また、メーカー様や商社様との連携を深め、より多くの医療現場に弊社の商品やサービスをご提供する体制の構築を目指しています。現場に寄り添い、医療従事者の皆様の負担を少しでも軽減できるよう、これからも挑戦を続けていく所存です。

編集後記

少数精鋭だからこそ実現できる現場密着型の商品開発は、大手メーカーでは対応しきれない病院の「困った」を解決し続けている。厳しさを増す医療環境の中、小回りの利く企業だからこそできる支援の形を模索し続けるアズテックの今後に、期待は膨らむばかりだ。

橋本裕之/1965年、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。大学卒業後、メガバンクで国内外の業務に従事。その後、2021年にアズテック株式会社に入社し、2023年に同社代表取締役へ就任。