
株式会社ハッピースマイルは、幼稚園・保育園や学校、スポーツイベントで撮影した写真を手軽に購入できる写真販売プラットフォームサービス「みんなのおもいで .com」を手がける会社だ。同社はほかにも、カメラマンの派遣事業も手がけている。
「ありがとうと言われる仕事がしたかった」と語る代表取締役社長兼CEOの佐藤堅一氏に、創業の経緯やサービスの魅力を聞いた。
「ありがとう」の言葉をきっかけに自衛隊を退職し、写真業界で独立・起業
ーーまずは、起業までの経緯をお聞かせください。
佐藤堅一:
中学生の頃から、将来は人から「ありがとう」と言われる仕事がしたいという思いがあり、高校卒業後は自衛隊に入隊しました。自衛隊の仕事に興味を持ったのは、阪神淡路大震災の際、救助活動をする自衛隊員の姿をテレビで見たことが影響しています。
入隊後はすべての仕事が楽しく感じましたし、また楽しいから勉強にも力が入り、成績優秀者として表彰されることも多々ありました。ただその一方で、災害派遣に行くということは日本に悪いことが起こることを意味し、「自分の“災害派遣”に行くという夢が、日本の不幸に直結している」という事実に複雑な気持ちも抱いていました。
そんな気持ちを抱えながら日々を過ごしていたとき、日本で初めてデジタルカメラが発売されました。フィルムカメラと違い、現像したい写真を自分で選ぶことができるなど、今までにない革新的な技術に大きな衝撃を受けたのです。
そこで実際にデジタルカメラを購入し、隊員たちの写真を撮影してみることにしました。撮影した写真を渡すと、隊員たちはとても喜んでくれて「ありがとう」と言ってくれました。
このときに、災害のような不幸な出来事ではなく、自ら誰かを幸せにして言ってもらう「ありがとう」の言葉が、とても良いものだと強く思ったのです。
そして、この出来事をきっかけにプロカメラマンを目指そうと決意し、2006年に自衛隊を退職しました。その2年後には写真撮影だけでなく、保育園・幼稚園へのカメラマン派遣なども個人で手がけられるようになり、事業の拡大に伴い、2012年にハッピースマイルを立ち上げました。
「現場の困りごとを解決する」を起点に、顧客に寄り添ったサービスを開発

ーー事業の内容を教えてください。
佐藤堅一:
弊社のメイン事業は、保育園や老人ホーム、スポーツチームなどに向けて、写真販売プラットフォームサービス「みんなのおもいで .com」の運営です。
昔は、修学旅行の写真などは学校の壁に貼られ、生徒や保護者はその中から買いたい写真を選んで注文していました。それを学校の壁ではなく、インターネット上で行えるようにしたのが「みんなのおもいで .com」です。
たとえば、自分の子どもの写真がほしい保護者は、保育園まで行かずともプラットフォーム上から手軽に写真を選ぶことができ、また保育士側は写真を壁に貼る手間などの業務を削減できるのが魅力です。
弊社では、ただ写真を売るためではなく、「現場の困りごとを解決するため」にこのサービスを開発しました。そのため、たとえばAI顔認識技術を活用し、写真に登場する子どもの回数を測定することで不公平感をなくすなど、お客様に非常に寄り添ったサービスとなっています。
ーー「みんなのおもいで .com」のサービスを思いついたきっかけは何ですか。
佐藤堅一:
カメラマンとして保育園へ訪れた際、写真の販売作業で大変な苦労をしている先生たちの姿を見たのがきっかけです。
当時、保育園の先生たちは膨大な枚数の中から写真を厳選した後、何百枚もの写真を壁に貼り、それぞれに写真番号を記入するといった作業をしていました。
先生たちがこうした大変な作業をするのは、保護者に喜んでもらいたいから。しかし、保護者からは「もっとほかの写真が見たい」などと言われることも珍しくありません。そんな状況を見て「先生たちを救いたい」という思いからこのサービスを始めました。
世界中の人々の「想い出を残す支援」や他業種での展開が今後の目標
ーー今後の目標をお聞かせください。
佐藤堅一:
弊社のサービスは47都道府県の企業や施設で導入されていますが、今後はそれを海外に広げ、国や人種関係なく写真を通して想い出を残す支援をしたいです。また、自分の撮った写真をお金に変えられる仕組みをつくるなど、世界中のカメラマンを金銭的に助けることができるサービスにしたいとも考えています。
さらに、ほかの業界への展開も進めていく予定です。実際にスポーツ業界や芸能関係でも弊社のサービスは導入されており、たとえばスポーツ選手のバックヤードでの姿を撮った写真をファン向けに販売するといった形でも活用されています。
ーー最後に、貴社に興味のある方へメッセージをお願いします。
佐藤堅一:
弊社は「想い出」という無形商材を扱っている会社であり、お客様の想い出づくりのお手伝いができる点が魅力です。
また、弊社には『笑顔・提案・創意工夫・挑戦・ポジティブ・一体感・感謝』の7つのカルチャーがあり、これらに当てはまるメンバーが社内に集まっています。実際に会社説明会に参加した新卒の方などは、このカルチャーに魅力を感じて入社を決めてくれることも多いです。
こういった弊社の特徴やカルチャーに共感し、ともにサービスを広げていきたいと思う方は、ぜひ一緒に働けると嬉しいです。
編集後記
ハッピースマイルの写真販売プラットフォームサービスが、現場の課題を的確にとらえたものになっているのは、「現場の課題を解決したい」という佐藤代表の強い使命感が背景にある。同社のサービスが世界中に広まり、置かれた立場に関係なく、誰もが手軽に想い出を残すことができる。そんな世界が訪れることを期待して待ちたい。

佐藤堅一/1979年新潟県生まれ。1998年に高校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。三等陸曹まで昇進した後、プロカメラマンを目指して2006年に退職。複数の撮影事務所でスキルを磨き、2008年に独立。個人事業として保育園・幼稚園へのカメラマン派遣や写真スタジオの運営を行い、2009年に写真販売プラットフォームサービスの全国展開を開始。2012年4月より株式会社ハッピースマイルを法人化し、代表取締役社長に就任。