※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

株式会社プラゴは、EV(電気自動車)向けの充電インフラを提供する会社だ。商業施設や宿泊施設など、日常生活に密着した場所にEV充電器を設置し、ユーザーが気軽に利用できる環境を整備している。さらに、専用アプリでの日本初の充電予約をはじめ、満空情報の確認や決済機能の提供で、利便性の高いデジタルカーライフの実現を目指す。同社がどのような経緯で事業を立ち上げ、何を目指しているのか。代表取締役CEOを務める大川直樹氏に話をうかがった。

有形と無形の価値を融合する挑戦

ーーどのような経緯で貴社の設立に至ったのですか?

大川直樹:
実家は自動車用の各種金属加工品の開発・製造・販売の会社を営んでおり、もともと「いつかは家業を継ぎたい」という思いを抱いていました。そのため、将来のために異なる業界での経験も積んでおきたいと考え、大学卒業後、2002年に株式会社電通に入社しました。

そして、30歳を過ぎた2010年に家業を継ぐことを決断。自動車部品製造業である大川精螺工業株式会社に入社し、取締役に就任しました。2013年、開発体制の強化と販路拡大のためにメキシコに渡り、現地法人および工場を立ち上げに関わる中で、ゼロから事業をつくることにやりがいを感じるようになりました。

2018年、日本に帰国し、大川精螺工業の代表取締役に就任。ちょうどその頃、電気自動車で家族旅行に出かけた際、旅先で充電する場所がなかなか見つからず、非常に困った経験をしました。そのとき、「充電の予約システムをつくれば、新しいビジネスのチャンスになるかもしれない」と考えたことが、弊社設立のきっかけです。

2021年12月、大川精螺工業の代表取締役を退任し、以降、弊社の経営に専念しています。

ーー事業に対する思いをお聞かせください。

大川直樹:
有形価値と無形価値を融合させた、新しい価値を創造したいと考えています。私は電通時代に、携帯電話市場のマーケティングという無形価値の仕事をして20代を過ごし、30代は自動車の部品製造という有形価値の仕事に携わりました。その経験から、「今後は有形・無形を合わせた新しい価値創造に取り組みたい」と考え、弊社を立ち上げたのです。

EV充電で「デジタルカーライフ」の実現を目指す

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

大川直樹:
弊社は、EV充電サービスを提供する会社です。EV充電ステーションの設置・運用や、EVユーザー向けアプリの提供を行っています。自動車がデジタル化することによって起きる生活習慣の変化を「デジタルカーライフ」と定義し、それをどうやって実現するかを考えてきました。

創業時は、EV充電予約システムをつくり、ホテルやゴルフ場にはじまり、商業施設、スーパー、コンビニに至るまで、生活圏の中に充電器を設置する取り組みを行いました。その取り組みの中で、「弊社だけで『デジタルカーライフ』を実現するのは難しい」と気づき、オープンなアライアンスやパートナーシップを広げて、共創しながら事業を推進するようになったのです。

現在は、ホンダやキグナス石油、ニトリ、三井不動産など、大きなパートナー企業とタッグを組んでいます。単に多数の充電器を設置するというだけではなく、中長期的な関係を築き、その先にあるユーザー体験やプロダクトのデザインにもこだわっています。

EV充電サービスから始まる新しい購買体験を創造

ーー今後はどのようなことに注力したいですか?

大川直樹:
自動車メーカーやガソリンスタンド、スーパー、ドラッグストア、飲食店など、EVの充電サービスを一緒につくるところに注力したいですね。特に、ショッピングセンターや複合商業施設を運営している企業と、パートナーシップを結びたいと考えています。多くの人の生活習慣の中にあるコーヒーチェーン店とも相性がいいので、このような業態の新規取引先を増やしたいです。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

大川直樹:
プラットフォーム型ビジネスを目指し、最終的に、ソフトウェア・ハードウェアの両面の技術を通じて、日常の購買行動に変化をもたらすことを目指しています。それを実現するために、BtoBのパートナー企業と連携して新たな価値の社会実装を推進する方針です。「EV充電器があるから、そのお店に行く」というように、弊社サービスがお客さまにとっての付加価値となり、より豊かなデジタルカーライフを実現できたら嬉しいですね。

編集後記

EVという新しい業界で事業をスタートした、株式会社プラゴの創業の経緯には、大川CEOのキャリアに裏打ちされた視点と、「ゼロから価値を生み出す」という意欲が、根幹にあることを感じた。EV充電を通じてライフスタイルそのものを変えていく挑戦は、今後の社会インフラのあり方に大きな影響を与えるだろう。新たな未来の到来が楽しみだ。

大川直樹/慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年、株式会社電通に入社し、携帯電話市場のマーケティングを担当。2007年、株式会社インタラクティブ・プログラム・ガイド(現:株式会社IPG)に出向し、「通信と放送の融合」にかかわる新規事業開発に従事する。2010年、家業である自動車部品製造の大川精螺工業株式会社に入社、取締役に就任。2013年には開発体制の強化と販路拡大を図ってメキシコに渡り、現地法人および工場を立ち上げる。2018年、代表取締役に就任し、帰国と同時に株式会社プラゴを設立。2021年12月、大川精螺工業の代表を退き、以降プラゴの経営に専念する。