
株式会社ギフトパッドは、従来の紙のカタログギフトをWeb化するオンラインギフトサービスから出発し、企業や自治体のニーズに応える多様なソリューションへと事業を拡大してきた。同社は、関わる全ての人々が幸せになる「三方よし」の精神をビジネスモデルの根幹に据え、顧客起点の柔軟なサービス開発力を強みとする。ギタリストから英会話講師、医療コンサルタントという異色の経歴を持つ代表取締役の園田幸央氏に、その独自の経営哲学と日本経済の未来を見据えた展望について話を聞いた。
異色の経歴が培った課題解決への情熱
ーー社長のご経歴をおうかがいできますか。
園田幸央:
学生時代にジャズギタリストとして渡米し、留学していました。ミュージシャンを目指していましたが、アメリカのバブルが弾けたタイミングで帰国することになりました。それが1991年頃です。日本に帰国してもすぐに音楽で食べていけるわけではなかったので、何か仕事を探さなければなりませんでした。
帰国後、たまたま新聞の求人広告で英会話学校の講師を募集していたので、その会社に就職しました。
全国に教室を展開していた大手でしたので、教え方はある程度型が出来ていました。しかしながら、若気の至りで、「このやり方では英語は話せるようにならない」と持論を社内でぶつけたところ上司に「では自分で教室を開かれたらどうですか」と言われたことは私のビジネスマンとしての生き方の大きな転機になりました。
ーーその後、なぜ医療コンサルティングの道へ進まれたのですか。
園田幸央:
英会話講師を辞めた後、父のクリニックを手伝うことになりました。ちょうど小泉内閣の医療制度改革が始まった頃です。ジェネリック医薬品の導入や電子カルテ化などを進めながら、予防医学やサプリメントといった分野にも早くから着目し、健康増進やフィットネス事業も開始しました。
こうした活動は、当時では先進的な取り組みだったことから、導入事例として講演依頼も舞い込み、注目を集めるように。やがて、その時の活動が日経ヘルスケアなどに取り上げられ、トーマツのヘルスケアチームの目に止まり、協業の声がかかりました。これがきっかけで、病院の事業承継や経営統合に関するコンサルティング業務に携わるようになったのです。
ーー株式会社ギフトパッド創業のきっかけを教えてください。
園田幸央:
医療コンサルタントとして活動していた頃、女性起業家向けのセミナーで講師をする機会がありました。そのセミナーに参加していたブライダルプランナーの方から相談されたのが全ての始まりです。「アメリカのような、新郎新婦が欲しいものをリスト化してゲストに贈ってもらう仕組みを日本で展開できないか」という内容でした。当時は2010年頃で、日本ではまだ馴染まないだろうと思いましたが、これがきっかけでギフトパッドの着想を得ました。
「三方よし」を掲げ 新たなギフト市場を創造

ーー創業当初はブライダル業界が中心だったのですか。
園田幸央:
はい、最初はブライダル業界に大きな可能性があると考え、ブライダル産業フェアなどにも出展しました。しかし、現実は厳しく、最初の1年間はほとんど売上がありませんでした。初めてまとまった受注を得たのは、自動車ディーラーのノベルティ案件でした。
そこから、ブライダルだけでなく、自動車、保険、不動産といった業界にもターゲットを広げていきました。大きな転機となったのは、創業から3〜4年経った2015年に、大手通信会社と提携できたことです。大手通信会社の法人営業部門と協業する形で、東京進出のタイミングとも重なり、大きな後押しを得ました。
ーーギフトパッドのビジネスモデルについて教えてください。
園田幸央:
「ギフトパッド」は単に商品を売るのではなく、プラットフォームのような存在です。商品を持つサプライヤー、それを利用する企業や自治体、そして最終的にギフトを受け取るエンドユーザー、これらの関係者全てがハッピーになる「三方よし」の考え方を大切にしています。「ギフトパッド」のサービスを使うことで、クライアントにとってはコストが下がるか売上が上がる、という価値を提供することを重視しています。
弊社は、「お客様が何をしたいか」というところからサービスを設計します。思いついた製品を規模拡大させるというよりは、お客様の要望を聞いてから即興で対応し、それを展開していくスタイルです。お客様とのディスカッションを通じて、どうすればうまくいくかを一緒に考えてきました。この業界では珍しいかもしれませんが、それが弊社の強みです。
顧客の声が原動力「region PAY」誕生秘話と事業の強み
ーー「region PAY(リージョンペイ)」の開発経緯を教えてください。
園田幸央:
ある自治体様から具体的なご要望があったのがきっかけです。「キャンペーンで利用できるギフトで、地元で使われるもの、かつ地域通貨のような形で運用できないか」というものでした。世の中に出回っている決済手段ではなく、その地域限定で使えるものを作ってほしいという声に応える形で開発しました。大阪市の案件が最初で、その後、全国旅行支援の後押しもあり、現在は26都府県で導入されています。
「region PAY」は、確か3〜4ヶ月で作りました。そういった開発力も弊社の強みの一つだと考えています。元々、紙のカタログギフトをWeb化するところから始まっていますが、その後はキャッシュレスのポイントやクーポン、体験型ギフトなど、中身のコンテンツは顧客のニーズに合わせて柔軟に変化させてきました。ユニークなコードで誰かに何かを渡すというコアな部分は一貫しています。
そのほか、法人向けサービスとして、株主優待や福利厚生、販売促進など、さまざまなシーンでご活用いただいています。例えば、大手生命保険会社様では、保険の契約者様へのポイント還元ギフトとして利用されています。紙のカタログでは難しかった個人情報の管理を外部委託できる点や、在庫切れのリスクをWebでリアルタイムに回避できることなどが評価されました。「ギフトパッド」の仕組みを提供することで、企業が抱える課題解決に貢献しています。
ーー競合他社についてはどのようにお考えですか。
園田幸央:
私の中では、競合という概念はあまりありません。もちろん、営業の現場ではコンペになることもありますが、事業構想としては、競合他社とも協力して市場全体をどうやって広げていくか、関係者全体がどうすればハッピーになれるかを考えるべきだと思っています。
特定の企業だけが儲けるのではなく、GDPを上げる、つまり日本経済全体を良くしていくという視点が重要です。実際に、カタログギフトの大手さんとも契約を結び、彼らの商品を扱ったり、仕組みの一部を提供したりしています。みんなで市場を広げていくことが大切だと考えています。
日本経済の未来を拓く ギフトパッドが目指す共創と組織

ーー採用において、どのような人材を求めていますか。
園田幸央:
心理的に制限がない人、自分で限界を決めない人と一緒に働きたいですね。ベンチャー企業なので、自分で何かを決めつけてしまうのではなく、夢や既成概念にとらわれない大胆な発想ができる人がいいです。「日本を元気にしたい」とか、そういう大きな目標を持っている人。自分の限界を作らない人と共に成長していきたいと考えています。
ーーどのような組織づくりを目指していますか。
園田幸央:
社員が「自分の会社」だと思って、主体的に関わっていけるような組織が理想です。福利厚生や制度が完全に整っているから入社するというよりは、これから一緒に会社を成長させ、制度も作っていくという気概のある人がいい。会社に何をしてもらうかではなく、この会社をどう良くしていくかを真剣に考えられるメンバーが集まることで、健全な会社に成長できると信じています。ワンマン経営ではなく、チームとして会社を創り上げていくことに魅力を感じる人に来てほしいです。
ーー働きがいやモチベーションについては、どのようにお考えですか。
園田幸央:
働きがいやモチベーションは、会社から与えられるものではなく、自分で見つけていくものだと考えています。もちろん、会社として社員が喜ぶような環境を提供していく努力は続けます。しかしそれ以上に、この会社で自分が成長できたこと、自分の力で会社を成長させたと実感できることが重要ではないでしょうか。入社してくれた社員には、その人の貴重な時間を投資してもらうわけですから、それに見合うような経験や成長を提供したいです。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
園田幸央:
究極的には、日本経済をもっと成長させ、市場を広げることに貢献したい。安売り競争に陥るのではなく、サプライヤーも企業も、そして受け取る人も含め、関わる全ての人が豊かになれるような経済のあり方を追求したいです。弊社の事業を通じて、新しいマーケティングの形を創造し、企業や地域が持つ価値を最大限に引き出すお手伝いができればと考えています。来年には全く違う事業に力を入れているかもしれませんが、それは時代や社会のニーズに応じて変化していくということです。常に世の中に役立つ会社でありたいという思いは変わりません。
編集後記
ギタリストから経営者へ。園田幸央社長のキャリアは、常に現状への問いと、より良い形を模索する情熱に貫かれている。「三方よし」の理念を掲げ、顧客の課題に真摯に向き合いながら、ギフトパッドを唯一無二のプラットフォームへと成長させてきた。その視線は自社の成長だけに留まらず、日本経済全体の活性化という壮大な未来へと向けられている。変化を恐れず、出会いを力に変えて新たな価値を創造し続ける同社の挑戦から、今後も目が離せない。

園田幸央/学生時代にJAZZギタリストとして渡米し留学。帰国後は英会話講師、医療コンサルティングの業務を経て、2011年に結婚式の引き出物に対する課題意識から、定番である紙のカタログギフトをWeb化するサービス(オンラインギフト)で株式会社ギフトパッドを創業。現在、ギフトパッドで、運営するプラットフォームを通して、企業の販路拡大とリレーション構築・自治体の地域活性化等の課題解決を支援している。