※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

野村證券でキャリアをスタートし、ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)の創業に携わってきたギグワークスクロスアイティ株式会社の代表取締役、小島正也氏。多くの経営者と向き合いながら磨いてきたのは、ビジネスを見極める眼と経営の本質を掴む力だ。SBI時代やその後の上場会社での経営経験を活かし、グループ内に複数の事業を展開しながら、教育と仕組みにこだわった独自の経営スタイルを貫いている。その背景について話をうかがった。

キャリアの原点と、事業家としての覚悟

ーーこれまでのご経歴をおうかがいできますか。

小島正也:
大学卒業後は野村證券へ入社しました。多くの同期が営業職に配属になるなか管理部門でキャリアを積みました。多くの同期とは違った立場で経験を積んだことが結果としてキャリアの差別化を図ることができたと思っています。最年少での業務責任者や新設店舗の開設業務など他の同期社員ではできない経験は貴重な財産になりました。

そして、その後、ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)へ転職し、創業メンバーとして半年で100名以上の採用や上場準備、社内の管理体制の構築等の業務に携わりました。またSBIは数多くのITベンチャー企業へも投資をしていましたので、IT企業におけるビジネスモデルへの理解も深まりました。その結果、私自身もいつか自分で会社を経営してみたいとの思いが強くなっていきました。

経営するにあたっては、もちろん不安はありました。その一方で、多くのベンチャー企業や起業家を見てきたことや上場会社の経営経験もありましたから、「自分もきっとやれる」という自信もありました。現在当社はシステム開発を中心に事業を展開しておりますが、同時に自社開発プロダクトや中小中堅企業向けのDXコンサルティング業務にも力を入れております。

顧客の問題解決のために、同業他社と手を取り合う

ーー貴社のサービスとその特徴について教えてください。

小島正也:
弊社はITコンサルティングを中心に、ソフトウェアやWebシステムの企画・開発・運営と幅広く事業を展開しており、お客様の課題を一緒に考え、業務フローの改善からシステム開発、アフターサポートまで一貫して行います。見積書一つとっても、「この業務にどう役立つか」という視点で設計し、相手の業務に深く入り込むのが当社のスタイルです。

お客様の課題に対して弊社だけで対応できない場合は、協力関係にある同業他社にも協力を仰ぐことがあります。長期的な視点で見ると、IT業界では敵をつくるよりも同業であっても信頼関係を築いて協力し合った方が、価値あるサービスを提供できると考えています。

ーー最近、注力されている事業はありますか。

小島正也:
最近は、お客様へのシステム開発を行うだけではなく、自社製品の開発にも力を入れています。代表的なサービスとしてコールセンター向けのCRMシステムやパソコンの不正操作防止のためにPC操作をフル録画するクラウドサービス「ごきげんモニター」などを開発しました。

開発を進める際、生成AIなどを活用していますが、AIをどう使うかを設計するのは人間です。「このシステムを現場で使いやすくするためにどうするべきか」を熟考しながら取り組んでいるのが、当社の強みでもあります。

「人」と「仕組み」で強い組織をつくる

ーー採用や教育において、特に重視していることは何ですか。

小島正也:
採用の際に重視しているのは、スキルや経験よりも、挑戦したいという意思と素直さがあるかどうかです。完全未経験からのスタートでも活躍できるよう、弊社では6ヶ月間の育成プログラムを整えています。

この研修は、単なる知識の詰め込みではなく、実務に即した内容を取り入れています。最初は現場の空気やITの基礎から丁寧に教え、徐々にシステム開発や業務改善といった実務で活かせるスキルへとつなげていきます。この研修のおかげで、実際、未経験で入社したメンバーが、今では大手企業の案件を任されるまでに成長しています。

また、誰もが経営視点や数値感覚を持てるようになると会社全体が強くなると考えているため、私自身が講師として登壇することもあります。

ーー組織運営の面で、その他に力を入れていることはありますか。

小島正也:
社員一人ひとりの「やってみたい」を大切にしたいと思っていますが、個人の努力だけに頼るのではなく、仕組みで解決することが大事だと思っています。ですので、営業活動一つとっても、再現性のあるプロセスを整え、誰がやってもある程度の成果が出るように設計しています。ツールも日々改善しています。

ーー今後、どんな人と一緒に働きたいと考えていますか。

小島正也:
新しいことに挑戦することにワクワクを感じてくれる人、それと誠実に努力ができる人ですね。先ほどもお話ししましたが、私はスキルよりも姿勢が大事だと思っています。たとえ今は未経験でも、学び続ける意志がある人なら、きっと大きく成長できます。

成長するための環境は整っていますので、新しいことにどんどんチャレンジしたいという方とぜひお会いしたいですね。

編集後記

小島氏のインタビューの中で印象的だったのは、信頼を積み重ねる姿勢だ。顧客の業務に徹底的に入り込む伴走力と社員一人ひとりへの丁寧な教育、その両輪が会社の土台となっている。単なるITベンダーにとどまらず、人を中心に据えた企業の在り方が今後の事業拡大にどう影響していくのか、目が離せない。

小島正也/新卒で野村證券に入社後、ソフトバンク・インベストメント株式会社(現SBIホールディングス)にてコーポレート業務を担当。その後上場会社で取締役として経営企画部門を管掌。現在はIT支援、業務コンサル、システム開発などを中心とする事業を展開中。人材育成と伴走型の顧客支援を軸に、社員とクライアントの両方に寄り添う企業経営を貫く。