※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

「テクノロジーをすべての人が使える世界に」。そんな思いを胸に、金融・コンサル業界から株式会社ペライチへと転身したのが、代表取締役CEOの藤本旬氏だ。

海外経験も豊富な藤本氏は、2022年に入社後、執行役員CFOとなり2023年1月より取締役CFOの任を経て2025年4月代表取締役CEOに就任し、短期間で経営の中枢を担う存在となった。現在は、ホームページ作成を超えた「ビジネスインフラ」としての進化に注力し、グループ会社・ラクスルとの連携、AI活用、EC強化を武器に成長を加速させている。その道のりと展望を聞いた。

金融×海外×コンサル。異色の経歴が導いた「経営者」という選択

ーーアメリカの大学へ進学した理由をお聞かせください。

藤本旬:
高校生の頃から経営に関心があり、最初は医学部志望でしたが、途中でビジネスに興味が移りました。英語と経営を同時に学べる環境として、アメリカの大学進学を決意しました。

そしてアメリカから帰国後は、新卒でみずほ証券に入社しました。日本のビジネス慣習を身につけたいという思いと、将来的な海外赴任も視野に入れての選択でした。入社後、実際に5年間アメリカに赴任できたことは、自分の選択が正しかったと感じていますね。

みずほ証券ではM&Aや経営企画などを経験し、合併準備や上場審査も担当しました。特に上場審査では、一人で調整と実行にゼロから取り組んだ経験は、今の経営にも活かされています。

ーーその後、なぜコンサルティング業界へ飛び込んだのでしょうか。

藤本旬:
投資銀行で専門特化するよりも、幅広く経営に関わりたいという思いが強くなったのです。プロジェクトごとにチームが変わるコンサルタントの環境は、自分のスタイルに合っていたと思います。特に心がけていたのは、誰もやりたがらないことを率先して引き受け、チームが最大限の成果を上げられるよう尽力した点です。それが自分の信頼を築く鍵にもなりました。

「簡単で本格的」をすべての人に!進化するペライチの可能性

ーーペライチ入社の経緯を教えてください。

藤本旬:
もともと「経営者になりたい」という思いがありました。そんな中で出会ったのが、ペライチの「テクノロジーをすべての人が使える世界に」というビジョンでした。父が自営業をしていたこともあり、ITやデジタルに詳しくない方がどれだけ苦労しているか、身近で見てきました。個人事業主や中小企業が、専門的な知識がなくても簡単にウェブサイトやECサイトを立ち上げられる、そんな支援ができる会社であることに、大きな意義を感じました。

実際、ペライチは「誰でも簡単に本格的なホームページが作れる」ことを強みに、ホームページ作成にとどまらず、予約・決済・顧客管理など、さまざまな機能を備えた「スモールビジネスのためのビジネスインフラ」へと進化しています。

ーー入社からどのようなキャリアパスを経たのですか。

藤本旬:
入社後、1〜2ヶ月で執行役員CFOになりました。その後、取締役CFOを経て、2025年4月から代表取締役CEOに就任しました。

ーー現在注力しているのはどんな領域ですか。

藤本旬:
決済機能の強化です。ペライチは直感的なUI/UXと豊富なデザインテンプレートを用意しており、技術や経験がなくても簡単にネット販売を始められる点が強みです。商品が1つであってもホームページを立ち上げて、即日販売できるのは、他のECサイトにはない魅力だと感じています。

加えて、ユーザーの成功体験を生む「導線設計のしやすさ」や「スピード感のある導入フロー」も私たちの大きな強みです。初心者でも迷わず操作でき、決済や顧客管理まで一気通貫で設定できる設計思想は、スモールビジネスの現場ニーズに即しています。今後は、こうした使いやすさをさらに追求しながら、ECに限らず予約機能やサブスクリプション型ビジネスなど、多様なビジネスモデルへの対応も強化していく方針です。

ーーラクスルとの連携も注目されています。

藤本旬:
100%子会社化されたことで、ラクスルの300万IDという顧客基盤へのアクセスが可能になりました。たとえば、ラクスルでチラシや名刺をつくったお客様に対して、ペライチのホームページ作成サービスを提案することで、販促の導線をワンストップで提供できます。

さらに、ラクスルの撮影代行などの周辺サービスとの組み合わせも可能になり、個人や中小企業のデジタル化を一層後押しできる環境が整いました。こうしたシナジーから生まれる「コラボレーション」は、今後の成長戦略の大きな柱になると考えています。

AI活用で、ユーザーの「やってみたい」を実現する未来

ーー今後の展望をお聞かせください。

藤本旬:
すでにベータ版では、AIがホームページを自動生成する機能も開発しています。URLと希望のイメージを入力すれば、AIが最適な構成とデザインでページを提案してくれる仕組みです。今後は、チラシからの生成や既存のテンプレートとの組み合わせなど、さらに多様なニーズに応えられるよう拡張していく予定です。AIを含めたペライチのアセットを通じて、ユーザーの「はじめての売る」をもっと早く、簡単に実現できるようにしたいと考えています。

ーーどんな人材とともに、未来をつくっていきたいですか。

藤本旬:
当社のビジョン・ミッション・バリューに共感し、ユーザーと真摯に向き合える人が理想です。スタートアップならではの裁量の広さを楽しみながら、変化に柔軟に対応し、責任を持って行動できる仲間と一緒に未来を築いていきたいですね。

編集後記

金融、コンサル、そしてスタートアップの経営へ。一見遠回りにも見えるキャリアだが、そのすべてが「テクノロジーをすべての人が使える世界に」というビジョンに収束しているように思えた。事業の核にあるのは、使いやすさ、スピード、そして誠実さ。藤本氏の穏やかな語り口の中に、確かな信念と戦略が感じられた。

藤本旬/1983年山梨県生まれ。カリフォルニア州立ポリテクニック大学ポモナ校卒業。新卒でみずほ証券に入社後、M&A、経営企画、海外赴任を経験。その後EY新日本有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社を経て、2022年にペライチ入社。執行役員CFO、取締役CFOを経て2025年4月より現職。