
日本発のファッションブランド「サマンサタバサ」で、女性向けバッグや財布、アクセサリーの販売を手がける、株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド。独自のブランドイメージを確立してきた同社では、どのようにしてブランドを体現する人材を育てているのだろうか。2024年5月に同社の代表取締役社長に就任した、古屋幸二氏に話をうかがった。
経営不振の打開策として社長に就任する
ーー社長のご経歴を教えてください。
古屋幸二:
1991年に新卒で商社に入社し、海外ブランド商品の輸出入を手がける代理店業務に8年間従事しました。しかし、海外ブランドの日本市場での拡大に伴い、現地法人の設立や吸収合併が進んだことで、代理店としての役割は次第に縮小していったのです。
その後は、小売店や飲食店のコンサルティングを手がけるベンチャー企業を友人と立ち上げましたが、方向性の違いにより退職。芸能プロダクションに転職し、物販事業を約13年間担当しました。ところが、担当していた事業の売却に伴い、再び転職を決意したのです。イギリス留学や外資系企業での勤務を経て、2018年に株式会社コナカ(以下、コナカ)に入社しました。
ーーその後、どのような経緯で現職に就任したのですか?
古屋幸二:
コナカと弊社は、親会社・子会社でそれぞれ上場しており、子会社である弊社の独立性を重視する観点から、コナカは経営への関与を控えてきた経緯があります。ただ、8期連続で赤字を出して経営不振が深刻化していたことに加えて、適切な経理管理体制も整っておらず、事業別の営業利益やKPIが把握できないなどの根本的な問題が生じていました。これらの経営課題を解決する目的で、2024年5月に私が代表取締役社長に就任する運びとなったのです。
「可愛い」を追求した世界的ブランドを展開

ーー現在はどのような事業を展開していますか?
古屋幸二:
弊社は、世界的な人気を誇る「サマンサタバサ」ブランドの商品開発および販売を手がけています。「サマンサタバサ」は、「女性の永遠のパートナー」をキーワードに、日本の主要都市を中心に若い女性向けのバッグや雑貨ビジネスを展開してきました。複数展開するブランドラインナップはそれぞれ異なる年代層をターゲットとしているのが特徴で、主に10代後半から40代ぐらいのお客様にご支持をいただいています。
ーー貴社のブランドの強みや特徴をお聞かせください。
古屋幸二:
日本発の世界的ブランドであることが、弊社の最大の特徴です。ヨーロッパやアメリカのブランドが主流となるバッグの業界において、「サマンサタバサ」の知名度やブランド力、そしてブランドイメージは、一線を画する独自性を確立しています。
ブランドの核心には「可愛らしさ」という価値観が息づいています。数多くの「可愛い」をイメージするデザインがある中で、年代やシーンに応じた「ここだ!」という最適なデザインを提供しているのが特徴です。「エレガント」や「洗練されている」といったさまざまなブランドイメージがありますが、「サマンサタバサ」のコアの部分には「可愛い」が存在するところが、特徴であり強みと言えるでしょう。
ブランドの魅力を伝えるスタッフの採用を強化
ーー今後はどのようなところに注力したいとお考えですか?
古屋幸二:
販売スタッフの採用を強化したいと考えています。販売スタッフの力量が問われる場面が多く、経営陣だけが優秀な状態では弊社のビジネスは成り立ちません。ですから、既存スタッフの力量を上げるのはもちろんのこと、新たな優秀な人材の確保に注力しているところです。
物販事業において、スタッフが提供するサービスは、商品の付加価値の一つとなります。これは、まさに現場スタッフだからこそ生み出せる価値ですよね。「優秀な販売スタッフを採用することは、弊社の生命線になる」という意気込みで、人材の確保と成長サポートに全力で臨んでいます。
弊社は成長の機会が多く、頑張った人は店長やエリアマネージャー、販売のスペシャリストの道もあり、キャリアアップのチャンスが多くあります。研修制度も充実し、1年目から3年目までの研修に加えて、役職やキャリアに応じた専門研修も用意しており、キャリアチェンジによって販売以外のキャリアに進むことも可能です。また、社員の9割を占める女性社員向けに、出産・育児と仕事の両立を支援する充実したプログラムを展開しており、多くの女性社員が育児を経て職場に復帰しています。
ーー最後に、貴社が求める人物像をお聞かせください。
古屋幸二:
私たちが求めているのは、明るく元気で、高いファッション感度と向上心を備えた人材です。現在活躍している社員は、まさにそういった人が多いです。それに加えて、「サマンサタバサ」への深い愛着を持ち、ブランドの代弁者として活躍してくれる人を募集しています。商品の特徴を十分に理解した上で、お客様との会話を通じて最適な提案ができる方に、店舗スタッフとして働いてほしいですね。
編集後記
他社からコナカに転職したときに、その真面目で堅実な社風に惹かれたという古屋社長。プロモーション費用を抑え、その分のコストを社員教育や商品クオリティの向上に充てるというやり方に、感銘を受けたのだそうだ。古屋社長が感銘を受けた堅実なやり方が、株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドの課題を解決し、新たなブランド戦略が打ち出されることを期待したい。

古屋幸二/1969年生まれ。商社、芸能プロダクション、外資系企業を経て、2018年に株式会社コナカへ入社。執行役員経営企画室長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員COOを経て、2024年に株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドへ入社。同年、同社代表取締役社長に就任。株式会社STK代表取締役社長、サマンサタバサロッテ(韓国)、サマンサタバサ上海、バーンデストローズジャパンリミテッド取締役。