※本ページ内の情報は2025年9月時点のものです。

ドアノブの交換から住宅の建て替えまで、住まいに関するあらゆる工事を手がける一級建築士事務所 ROY株式会社。同社は、建築・土木工事やリフォーム、害虫・害獣駆除などを1社で完結できる総合力と、約200名の自社職人による高品質な施工を強みとしている。人を大切にする経営で職人が主役の会社づくりに取り組む、同社代表取締役の大石竜次氏に話をうかがった。

お好み焼き屋からリフォーム営業を経て、起業へと至った

ーー大石社長の経歴をお聞かせください。

大石竜次:
私の経営者としての原点は高校生時代にさかのぼります。私が17歳のころ、知り合いのおじさんがお好み焼き屋をやっていたのですが、あるとき「店をやめたいと思っている」と言われたことをきっかけに、店を引き継いで経営を始めたのです。

その後、バーの経営も経験しましたが、18歳で結婚し子どもも生まれたことから、19歳のときに「手に職をつけよう」と考え、義理の兄が代表を務めていた会社に入社しました。

そこではリフォームの営業に5年ほど携わり、トップセールスとして実績を積みながら住宅関連の知識を吸収し、独立の準備を進めていました。「仕事を覚えたら独立させてください」と入社時に伝えていたこともあり、23歳で最初の起業に踏み切ったのです。その後も経験を積み重ね、2009年に現在のROY株式会社を設立するに至りました。

自社職人が実現する高品質な総合リフォームサービス

ーー貴社の事業内容について教えてください。

大石竜次:
弊社はリフォームをメインとした会社で、ドアノブ1つから建て替えまで請け負っています。特徴的なのは、社員の半数以上が職人であることです。屋根や壁、内装、水回りなどあらゆる工事を自社で施工できるため、品質にこだわったサービスを提供できています。

また、建物に関することだけでなく、ネズミやシロアリ、ハチなどの害獣・害虫駆除も行っていることも特徴といえるでしょう。駆除後は建物の被害状況を確認し、必要に応じて建材を交換するなど根本的な解決を図っています。

ーー貴社の強みについても教えてください。

大石竜次:
強みは、弊社の高い技術力です。特に雨漏りを止める技術に関しては、日本トップクラスだと自負しています。この技術が磨かれたきっかけは、2011年の東日本大震災です。テレビで被災地の状況を見て「何とかしなければ」と思い、震災発生から10日後に仙台に事務所を開設し、自社の社員と全国から集めた職人たちで復旧工事に取り組みました。

被災した建物は通常の劣化とは異なり、強い力でねじ曲げられていたため通常の技術では対応が困難だったのです。そこで試行錯誤を重ねた経験が、結果的に私たちの技術力を高めてくれました。

職人が主役として輝ける会社づくりを推進していく

ーー組織運営において重視している点を教えてください。

大石竜次:
社員が働きやすい環境づくりを心がけています。各営業所をそれぞれ「1つの会社」のような形で運営し、上からの指示に頼らず自分たちで考えて仕事ができる環境を整えました。

また、子どもの学校行事や家族の予定に合わせて休みを自由に決められるようにして、仕事と家庭の両立を支援しています。これらの制度は採用活動にも良い影響を与えており、弊社の社員は9割ほどが縁故採用です。社員からの紹介で入社する方がほとんどです。これは会社への信頼の表れだと感じています。

また、技能実習生を年に1回、会社負担で航空券を手配して故郷に帰国させる取り組みも行っています。これは、実習生が日本へ向かう際、空港で家族と抱き合って泣いている姿を見たことから、家族に会わせてあげたいという思いで始めました。

こうした数々の取り組みの結果、「ここで働き続けたい」と思う社員が多くなり、離職率は年間1%程度という低さを実現しています。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

大石竜次:
弊社を「職人が主役の会社」にしたいと考えています。建設業界では、これまでゼネコンや施主が注目される傾向がありましたが、実際に現場で技術を持って働いているのは職人たちです。私は彼らが尊敬される存在として認知される環境をつくりたいのです。

現在は風向きが変わり、業界全体で「職人がいなければ工事ができない」という認識が広がりつつあります。今後もこの流れは続き、徐々に職人と施主が対等な立場で仕事ができる時代へと変わっていくでしょう。弊社はその先駆けとなり、技術者が誇りを持って働ける会社づくりを進めていきたいと思います。

編集後記

大石社長の言葉からは「人」への敬意が常に感じられた。自社職人の技術を誇りに思う気持ち、社員のプライベートを大切にする制度設計、技能実習生の帰国を支援する温かい配慮。こうした人間味あふれる経営姿勢が、ROYの高品質なサービスと強固な組織基盤を支えているのだろう。現場で技を磨く職人たちが正当に評価される社会の実現に向けた同社の取り組みに、建設業界の明るい未来を感じた。

大石竜次/1973年、神奈川県川崎市出身。17歳で知人からお好み焼き屋を引き継ぎ、経営者としてのキャリアをスタート。19歳のときに、義兄が代表を務める会社に入社し、トップセールスとして活躍。23歳で初めての起業を経験し、その後2009年にROY株式会社を設立し、代表取締役へ就任。