
「行動あるのみ」。その言葉を体現し、広島に根付く安定した基盤を持つ企業グループの中で、新たな道を切り拓いてきた経営者がいる。広電建設株式会社の代表取締役社長、瀬﨑敏正氏だ。同氏は不動産、タクシー、電車事業、さらには墓苑の造成まで、多岐にわたる事業経験を武器に、組織の変革に乗り出している。
横並びの文化から、成果主義への転換を目指す。その根底には、致命的な失敗でなければ挑戦を歓迎するという覚悟と、仕事は楽しむものだという揺るぎない哲学がある。社員を巻き込み、自ら先頭に立って行動で示すリーダーは、会社の未来をどう描くのか。その挑戦と変革の先に広がるビジョンに迫る。
保守的な広電グループの異端児 常識を破るキャリアの原点
ーーまずは、これまでのキャリアについてお聞かせください。
瀬﨑敏正:
大学卒業後に広島電鉄株式会社へ入社し、最初は配属された不動産部門にて営業を担当しました。住宅の企画から宅地開発まであらゆる業務を経験した後、グループ会社である「広電タクシー」へ出向しました。
広島電鉄の本社に戻ってからは、電車の企画や運行管理などを担当し、その過程で電車の運転免許も取得しました。電車はペーパードライバーですが、不動産の宅建免許と両方持っているのは珍しいかもしれません。
その後、再び不動産部門で大規模な開発などを手掛ける中で、社内では誰もやったことのない墓苑の造成・販売に挑戦したこともあります。周りの目を気にせず、やりたいことをやってきたので、グループの中では異例の存在だったと思いますね。そうした経験を経て、現職に至ります。
誰も止められない行動力の源泉 楽しむことが全ての始まり
ーー仕事をする上で、大切にされている考えについてお聞かせください。
瀬﨑敏正:
最終的には「楽しむ」ということが一番だと考えています。もちろん、周りからは多少の警戒感を持たれていたかもしれませんが、自分が楽しい・面白いと感じることに向かって行動し、その行動によって周りを巻き込んできました。それが私の根本的なスタンスです。
ーー前例のないようなプロジェクトには、どのような気持ちで挑戦されてきたのでしょうか。
瀬﨑敏正:
やり方が分からないからこそ面白い・やりがいがあると感じ、挑戦してきました。様々な分野の先輩方から助けてもらい、学びながら形にしていく。そのプロセス自体が楽しかったです。周囲は「一体どこまでやるんだろう」と不安だったかもしれませんが、その後の広島の野球場20個分もの大規模な造成工事や、タワーマンションの分譲など、さまざまな事業に繋がりました。
減点主義から成果主義への転換
ーーグループ会社の広電建設社長就任後、取り組まれている改革についてお聞かせください。
瀬﨑敏正:
社員一人ひとりがチャレンジできる環境づくりに力を入れています。そのために、これまでのような横並びの人事評価を見直し、本当の意味での成果主義を導入したいと考えています。ミスを恐れて何もしないより、挑戦した結果の失敗の方がずっと価値がある。社員みなが挑戦をしていける会社にしたいと考えています。
ーーどのような評価制度を目指しているのでしょうか。
瀬﨑敏正:
たとえ失敗が続いたとしても、失敗の経験を糧とし成功を収めた人間はきちんと評価されるべきです。私一人でできることには限界があります。しかし、社員みんなの力を合わせれば、会社はもっと大きく、より良く成長できるはずです。そのために、挑戦を促す仕組みが必要不可欠なのです。
ーーその強い信念はどこから来るのでしょうか。
瀬﨑敏正:
誰でも最初は「未経験者」です。私自身もそうでしたが、今までの道のりの中で、多くの方々から学び、助けられてきました。今度は私が社会に恩返しをする番だと感じています。これまでの経験を活かし、社会に貢献する。誰でも最初は不安を感じると思いますが、社員の挑戦をサポートします。そして、そういった恩返しの流れや意思も次世代に紡いでいきたいです。
行動で示し広島から全国へ 広電建設が描く新たな成長曲線

ーー今後のビジョンについておうかがいできますか。
瀬﨑敏正:
まずは、この広島エリアにおいて、広電建設の存在感をさらに大きなものにしていきたいと考えています。地域からの信頼をさらに確固たるものにし、それが実現できれば、次のステップとしてさらにエリアを広げていきたいですね。
このビジョンを実現するために、安定した基盤に安住するのではなく、常に新しいことにチャレンジできる組織づくりを進めていきます。
広島電鉄グループが持つ安定感や信頼感は、弊社の大きな強みです。その強みを活かしながら、グループ外での仕事にも積極的に挑戦し、新しい価値を生み出していく。安定と挑戦。この両輪で成長していける会社にするつもりです。
今後、広島で何か面白いことを仕掛けたい、自分の力を試したいという意欲のある人に、ぜひ仲間になってほしいと思っています。
編集後記
「楽しいかどうか」。取材を通して見えた瀬﨑社長の判断基準は、とても明快であった。このシンプルな哲学が、常識にとらわれず、周りを巻き込みながら道を切り拓く原動力となっている。トップ自らがリスクを取り、挑戦の面白さを行動で示すことで、組織の熱量は確実に高まっていくに違いない。社員一人ひとりが挑戦を楽しめるようになったとき、同社は想像を超える飛躍を遂げるだろう。その未来から目が離せない。

瀬﨑敏正/1966年広島県生まれ。中央大学卒業後、広島電鉄株式会社に入社。2019年に広電グループの広電建設株式会社 代表取締役社長に就任。2021年に広島電鉄株式会社の常務取締役に就任し、現在は不動産事業本部・地域共創本部・広報ブランド戦略室を担当。