※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

GPSSホールディングス株式会社は、再生可能エネルギー発電所の開発・運営を手がけ、「地域社会と共に生きる」を基本理念に、日本のエネルギー自給率向上を目指す企業である。同社を率いるのは、大手外資系証券会社でトップトレーダーとして活躍した経歴を持つ、目﨑雅昭氏と倉田隆広氏だ。金融の最前線でモラルジレンマや自己実現との葛藤を感じていた二人は、どのようにエネルギーの世界にたどり着いたのか。その根源にある幸福論と、事業を通じて実現したいサステナブルな社会の姿について話を聞いた。

利益追求の金融からエネルギーの世界へ転身、二人の創業理念

ーー目﨑代表がGPSSを設立した経緯を教えてください。

目﨑雅昭:
学生時代から起業を考えていましたが、まずは社会経験を積むため、実力主義の外資系金融機関に入りました。しかし、私が経験したのは、人の利益を奪うことで自分の利益を最大化するような、利益至上主義の世界でした。お金儲け自体は面白かったものの、このままでは自分がなりたくない人間になってしまうという強い危機感を覚え、5年で退職。その後、何をすべきか分からなくなり、答えを求めて10年間、世界中を放浪しました。

ーー長い旅の中で、どのような気づきがあったのですか。

目﨑雅昭:
自分が見聞を広めるためだけの旅、つまり自分のためだけに生きている限り、本当に幸せにはなれないと気づきました。本当の幸せとは、社会や他者に対して貢献し、自分の存在価値をフィードバックされることで得られるものだと感じたのです。そこで日本へ戻り、自分の能力を社会に還元しようと考えた矢先に再生可能エネルギー事業と出会いました。この事業なら、自社の利益と社会的な利益が同じ方向を向いている。これこそが、私がやるべきことだと確信しました。

ーー倉田代表はどのような経緯で参画されたのですか。

倉田隆広:
私も金融の世界で、終わりのない自己実現の追求に疲弊していました。そうした中で、何となく新たな道を模索していたとき、東日本大震災が起きたのです。原発事故後の計画停電などを目の当たりにし、日本のエネルギーの脆弱性に衝撃を受けました。何かやらなければいけないと感じていたその折、偶然にも目﨑と再会し、彼の電力事業と原発事故以来温めていた自らのエネルギーへの思いが合致し、「これだ」と。自分の問題意識と、やるべきことが一致した瞬間でした。

目指すのはみんなの利益とエネルギー自給率の向上

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

目﨑雅昭:
私たちは、自社で発電所を建設し運営するIPP(独立系発電事業者)です。特に、太陽光だけでなく、地熱、小水力(小規模な河川や用水路を利用した水力)、風力、バイオガスといった、より安定的で多様な再生可能エネルギー電源の開発に注力しています。日本の再生可能エネルギーは太陽光が中心ですが、それだけでは電力需要を賄いきれません。開発に時間がかかり、事業としては非効率に見える安定電源にも、社会的な意義があると考えて取り組んでいます。

ーー特に地域との関係性を重視されるのはなぜですか?

倉田隆広:
先ず、我々にとって地域とは、田舎にある過疎集落のことです。再エネで必ず問題となるのが「各地にある再エネ・ポテンシャルは誰のものか?」で、我々は故宇沢弘文先生の考えを借りて、「集落がもつ社会的共通資本の一つ」と定義しました。その前提に立てば、明確な所有者はいないがあえて言えば集落のもの。そう考えると、そもそも我々だけでは成立しない事業なのです。限界化が進む集落に対し、再エネ事業を、集落を持続可能にする手段として位置づけ、集落や集落群と社会的共通資本の運用を目的とする共同事業体を形成する。このモデルこそ、短期的な利益を追求せざるを得ない事業者には真似のできない、私たち独立系企業だからこそ可能なアプローチだと自負しています。

ーー事業を通じて目指す社会とは何でしょうか。

目﨑雅昭:
私たちは今、化石燃料から自然エネルギーへと転換する「エネルギー革命」の真っただ中にいます。その担い手として、地域、自社、そして社会全体の利益が同じ方向を向く事業を目指しています。エネルギーの9割近くを輸入に頼る日本にとって、国産の再生可能エネルギーを増やすことは、経済安全保障の観点からも極めて重要です。日本には化石燃料がほとんどないものの、地熱をはじめ豊富な自然エネルギー資源があります。この国産資源を活用してエネルギー自給率を高めることが、サステナブルな社会の実現につながると信じています。

経験より理念への共感、エネルギーの未来を開く仲間を求む

ーーどのような人材と一緒に働きたいと考えていますか。

目﨑雅昭
私たちの事業が持つ社会的な意義や理念に共感してくれることが最も重要です。自分の仕事が世の中の役に立っていると実感したい、そんな思いを持つ方に来ていただきたいですね。もちろん再生可能エネルギーに関わったことがある経験者は歓迎していますが、業界が未経験でも、開発、エンジニアリング、管理部門など、さまざまな職種で活躍の場があります。

ーー倉田代表が求める人物像はいかがですか。

倉田隆広:
あえて言うなら、自分の人生を「生き切りたい」人です。それは単に自由に自分の思うことをやるということではありません。自分に与えられた使命や役割を認識し、たとえ間違いに気づいても微調整しながら、自分の行くべき道を探求し続けられる人です。そうした方なら、私たちの会社で本来の自分を解放しながら、生き生きと働けるのではないでしょうか。

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

目﨑雅昭
事業を拡大して、社会的なインパクトをさらに大きくしていくことが目標です。そのために、海外の最先端技術を積極的に導入し、多様な国籍を持つ人材とともに、国境のない地球規模のビジネスを展開していく方針です。日本で培った地域共生のノウハウを、台湾のように同じ課題を抱える国や地域のために役立てるプロジェクトも始まっています。また、エネルギーだけでなく食料自給率の問題にも目を向け、農業との連携を通じて、さらなる持続可能な社会の実現へ貢献していきます。

編集後記

金融の最前線で利益を追求することに疑問を抱き、世界を旅する中で独自の幸福論を築いた目﨑氏。そして、同じく金融業界で実績を積みながら、他者や社会への思いを強くした倉田氏。二人との対話からは、事業の根底にある確固たる哲学がうかがえる。同社が展開する再生可能エネルギー事業は、エネルギー問題の解決だけでなく、地域社会の活性化や関係者全員の利益が一致する経済圏の創出を目指す。この壮大な目標を推進する二人の揺るぎない信念と実行力が、持続可能な社会の実現に確かな道筋を示している。

目﨑雅昭/慶應義塾大学商学部卒業後、米国メリルリンチ証券に入社。デリバティブトレーダーとして活躍するも退社し、約10年間で世界100カ国以上を旅する。その間、ロンドン大学(LSE)にて社会人類学修士号を取得。2012年、日本メガソーラー整備事業株式会社(現・GPSSエンジニアリング株式会社)を設立。

倉田隆広/東京理科大学卒業後、米国メリルリンチ証券に入社。国債および金利デリバティブのトレーダーとして世界1位の収益を上げる。金融業界で20年のキャリアを積んだ後、東日本大震災後の植樹活動を機に新たな道へ進む。GPSSグループに創業時より参画し、2016年より現職。複数のグループ会社で代表兼CEOも務める。