※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

海外のアニメ・漫画ファンが集う世界最大級のコミュニティ「MyAnimeList」。登録者数は1950万人を超え、利用者の99%以上を海外ユーザーが占めるグローバルなプラットフォームである。同サービスを運営するのは、株式会社MyAnimeListだ。代表取締役を務める溝口敦氏は、NTTドコモで音楽配信事業の黎明期を、メディアドゥで電子書籍市場の成長期を牽引した。日本のコンテンツビジネスの変遷を知る人物である。日本のコンテンツを世界に届けるという強い情熱を胸に、巨大コミュニティの舵をとる同氏に、その戦略と展望について話を聞いた。

音楽配信の黎明期から電子書籍の未開拓市場へ

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

溝口敦:
新卒でNTTドコモに入社しました。もともと音楽が好きで、技術と音楽を絡めた仕事がしたいと考えていました。ちょうどその頃にドコモが携帯電話で音楽配信を始めると知り、入社を決めたのがきっかけです。幸運にも希望の部署に配属され、「着うた」が生まれる前の、まさに音楽配信サービスの黎明期から事業に携われました。

ーーその後のキャリアについて、転機となった出来事をお聞かせください。

溝口敦:
前職のNTTドコモ時代の取引先の一つに、のちに転職することになるメディアドゥがありました。仕事をご一緒する中で、創業者である藤田恭嗣氏の人柄に強く惹かれたのが私のキャリアの大きな転機です。

彼は地元やルーツを大切にする方で、私自身も故郷に貢献したいという思いがあったため、その価値観に深く共感しました。大企業を離れる決断でしたが、挑戦は魅力的でした。よりユーザーに近い立場でコンテンツに携わり、まだ未開拓だった電子書籍の市場を拡大させる。そのことに心を動かされ、新たな世界へ飛び込みました。

世界1950万人が集う巨大コミュニティ「MyAnimeList」の正体

ーー改めて、「MyAnimeList」がどのようなサービスなのか教えていただけますか。

溝口敦:
一言でいえば「アニメ・漫画版の食べログ」のようなサービスです。特徴は、主に三つの機能が一つになっている点にあります。一つ目は膨大な作品のデータベース。二つ目は自分が何をどこまで見たかを記録するリスト管理機能。そして三つ目が、レビューやユーザー同士で交流できるコミュニティ機能です。登録者数1950万人以上という規模でありながら、利用者の99%以上が海外の方である点も特筆すべきことでしょう。

ーー海外のファンに支持されている理由について、どうお考えですか。

溝口敦:
海外では日本に比べて、アニメや漫画の情報が少ないという背景があります。そのため、膨大な作品の中から自分好みの面白いものに出会うのが難しいのです。アニメや漫画は一度見始めると多くの時間を使います。だからこそ「外したくない」という気持ちが強い。そこで、10点満点のスコアやレビューで事前に作品の評価を確かめられる「MyAnimeList」が、信頼できる指標として利用されています。

日本のコンテンツを世界へ プラットフォームが描く未来

ーー「MyAnimeList」を通じて、どのような未来を実現したいですか。

溝口敦:
日本には、世界でも稀に見るほど素晴らしいコンテンツが常に生まれています。しかし、そのポテンシャルが海外市場で十分にビジネスとして花開いているとは言えません。私たちはこのギャップを埋めたいと考えています。日本の優れた作品を世界中の人々にもっと楽しんでもらい、コンテンツ産業全体の成長に貢献することが目標です。

ーー「MyAnimeList」は、他社のビジネスにおいてどのように活用できるのでしょうか。

溝口敦:
活用の可能性は多岐にわたります。たとえば、アニメ・漫画ファンという特定の層に対して、広告を出したりアンケート調査を行ったりできます。また、作品の人気動向などのデータを販売する事業も展開中です。

アニメ業界に限りません。日本の文化に関心が高いユーザー層なので、旅行会社や日本の製品を扱うメーカーが海外プロモーションを行う際にも、非常に有効なプラットフォームになるはずです。

ーー最後に、事業にかける思いについておうかがいできますか。

溝口敦:
私は、日本という国と、そこで生み出される作品や文化が大好きです。エンターテインメントの力は、国境を越えて人の心を動かし、文化への理解を深めます。「MyAnimeList」を通じて日本の魅力が世界に伝わり、日本を好きになってくれる人が増える。それ以上にうれしいことはありません。事業はその思いを実現するための手段であり、情熱があれば結果はついてくると信じています。

編集後記

音楽配信の黎明期から電子書籍の成長期へ。そして今、世界最大級のコミュニティを率い、日本のコンテンツを世界に届ける挑戦を続ける溝口氏。そのキャリアは常に日本のコンテンツビジネスの最前線にある。根底に流れるのは、日本の作品や文化そのものへの深い愛情と、エンターテインメントが持つ力への揺るぎない信頼だ。プラットフォームを通じて日本の魂を世界に伝えたい。同氏の静かな情熱が、コンテンツ産業の新たな未来を切り拓いていくのだろう。

溝口敦/2000年に株式会社NTTドコモに入社。「着うた」の立ち上げなど、コンテンツ事業に携わる。2008年に株式会社メディアドゥ入社後、営業本部長、グループCOOなどを歴任。2019年より、世界最大級の日本アニメ・漫画データベース・コミュニティサイトを運営する株式会社MyAnimeList代表取締役に就任。電子書籍の流通や新規事業の経験を活かし、コンテンツ流通の拡大やグローバル市場の開拓に取り組む。