※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

展示会やイベントの企画提案から設計施工までをワンストップで手がける、レプラスデザイン株式会社。「RE+DESIGN」を社名に掲げ、豊富な自社資材を活かし、廃棄物を極力出さず、環境負荷とコストを抑えるサステナブルな空間づくりは、現代的な価値を提供する。3代目として事業を継承した代表取締役社長の坂本貴徳氏は、苦境にあった家業へUターンした経歴を持つ。父が築いたリユースの精神をいかに深化させ、業界の未来をどう切り拓くのか。その情熱と経営哲学に迫った。

苦境の家業へ 大企業からUターンした3代目の決意

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

坂本貴徳:
父はイベント会場のレンタル業を営んでいました。大学時代は継ぐことを考えておらず、大学卒業後は前澤化成工業に入社しました。しかし、その頃には家業の売上がピーク時の半分ほどに落ち込んでいたのです。父は「無理に戻らなくていい」という考えでした。しかし、私はイベント業界の「開かれた楽しさ」に強く惹かれ、家業を継ぐことを決心しました。

入社当時、父の代のピークだった年商8億円が4億円ほどまで落ち込んでいました。そこで、目標を8億円に設定し、営業活動に取り組みました。同時にレンタルだけでは限界があると感じ、「会場そのものをつくれる会社になろう」と決めたのです。海外で多様な商材を仕入れて事業の幅を広げ、売上を目標まで回復させることができました。

ーー社長就任時、どんな心境でしたか。

坂本貴徳:
社長に就任した経緯は、生涯現役を掲げていた父の体調不良がきっかけです。急遽、事業を引き継ぐことになりました。当時、私は東京オフィスの立ち上げの最中で、父の入院前に社長を託されたのです。「やるしかない」と覚悟を決めましたが、幸いにも私の思いに共感してくれる仲間がほとんどでした。「困難はあるだろうが、このメンバーと会社をさらに盛り上げていこう」と前向きな気持ちでした。

未来志向のリユースサービスを武器に業界をリード

ーー事業承継で受け継いだものと、変えていこうとしていることは何ですか。

坂本貴徳:
先代が築いた「イベントレンタル業」という事業モデルそのものが、受け継ぐべき最大の財産だと考えています。これは、一度きりの使用で多くの廃棄物を生む木工造作とは異なり、資材を繰り返し使うことで環境負荷を低減する、まさにサステナブルな取り組みです。

私はこの考えを、「未来志向のリユースサービス」としてさらに進化させ、極めていきたい。資材高騰が続く今だからこそ、廃棄物もコストも抑えられる私たちのサービスを広げることが、業界全体への貢献にもつながると信じています。

ーー貴社の事業の強みやこだわりを教えてください。

坂本貴徳:
企画提案から設計施工までワンストップで対応できる総合力。そして、他社との明確な差別化ポイントとなっているのが、環境に配慮した「未来志向のリユースサービス」です。

私たちのこだわりは、自社で多種多様な資材を豊富に保有し、それらを繰り返し活用する点にあります。一度きりの使用で多くの廃棄物を生む木工造作とは一線を画し、廃棄物の削減とコスト抑制を両立するサステナブルな空間づくりを可能にしています。自社で資材を持つからこそ、リユースを前提とした最適な設計提案ができる。この点が、私たちの最大の強みです。

「RELATION+」を体現する空間作りに夢中なチーム

ーー今後の注力テーマについて、お聞かせいただけますか。

坂本貴徳:
事業方針として「RELATION+(リレーション+)」、つまり「つながりの拡大」を掲げています。特定の顧客に依存せず、常に新しい繋がりを広げていくことを重視しています。入社以来、顧客数は5倍ほどに増えました。その成長は若手社員たちの柔軟な発想と活躍なくしてはありえません。

私たちの仕事は、設計、営業、施工管理など各分野のプロが連携して初めて成り立ちます。そのため、チームワークと、そのための発信力が重要です。毎日が違うお客様との新しいプロジェクトの連続なので、それを楽しめる人が活躍できる環境だと思います。

ーーチームワークを育むために取り組まれていることはありますか。

坂本貴徳:
事業方針である「RELATION+」を体現してもらうため、ユニークな新人研修を用意しています。その集大成として、新卒メンバーだけでチームを組み、実際に展示会に出展するのです。自分たちが出展者の立場を経験することで、仕事の根幹を理解するのが狙いです。テーマ決めから運営まで、すべて彼らに任せます。毎年、本当に斬新なブースが生まれるので見ていて楽しいです。彼らの自主性に任せることで「すごいものをつくりたい」という意識が高まり、年々クオリティが上がっています。自由と自主性の大切さを改めて実感します。

社員が「楽しさ」を実感できる会社を目指して

ーー仕事をする上で大事にしている考え方をお聞かせください。

坂本貴徳:
私が仕事をするうえで何よりも大事にしているのは、社員が楽しんで働けることです。そして、会社は「楽しんで報酬を増やせる場所」であるべきだと考えています。業績が良くても社員が楽しんでいなければ意味がありません。一人ひとりが仕事を楽しんだ結果として成果が伴い、どこにも負けない報酬を得られる。それが理想です。社員みんながそう実感できる会社になることが、私の目標です。

編集後記

父親が創業した婚礼家具店からイベントレンタル業へ、そしてサステナブルな空間を創造する企業へ。レプラスデザインの変革の歴史は、時代の変化を的確に捉えてきた証しである。その根底に流れるのは、父から子へと受け継がれた「リユース」の精神だ。「社員が楽しめる会社」を追求する坂本氏の眼差しは、苦境を乗り越えた強さに裏打ちされている。同社がデザインする「つながり」の未来に、これからも注目していきたい。

坂本貴徳/1977年大阪府西区南堀江にて生まれる。大阪経済大学を卒業後、前澤化成工業株式会社に入社。3年間の修業を経て、2005年イベントレンタル業を商っていた当時の「株式会社大阪屋家具店」に入社。2015年代表取締役社長に就任。東京・大阪・名古屋に拠点を持ち、100人規模となり現在も成長中。未来志向のリユースサービス=サステナブルデザインを、展示会・イベント業界に広める活動に注力している。