※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

ALSOKグループの一員として、日本の「食と環境の安全安心」を検査の側面から支えるALSOKエムビック研究所株式会社。腸内細菌検査、食品検査、アスベスト含有検査を主軸に、時代の要請に応じた新型コロナ検査、放射線検査やハラール検査など、多様なサービスを迅速に展開してきた。ALSOK本体での豊富な現場経験とマネジメント経験を経て、2024年に代表取締役社長に就任した山川和人氏に、グループシナジーを活かした今後の展望と、事業に懸ける思いを聞いた。

警備の現場経験が活きた営業時代

ーーまずは、キャリアのスタートについてお聞かせください。

山川和人:
1988年に高校を卒業後、綜合警備保障株式会社(現・ALSOK株式会社)に入社し、滋賀支社に配属されました。当初は金融機関での常駐警備、現金輸送警備、機械警備を担当し、計5年間、警備の現場を経験しています。当時は上司にも恵まれ、非常にアットホームな雰囲気で、現場の仕事に大きなやりがいを感じていました。その後、営業に配属されることになったのですが、現場が楽しかったため、正直、営業に移る時は寂しい思いもありました。

実際に営業を経験してみると、5年間の現場経験が大いに活きる結果となりました。お客様の要望をそのまま受け入れて現場に伝えるのではなく、現場が苦労しない警備体制やシステムを構築した上で交渉することを常に意識したのです。警備のプロとして、現場目線で最適な提案を続けた結果、実績を上げることもできました。営業はトータルで10年ほど経験し、その間、営業所長や営業課長も務めています。

ーー当時、営業所長として組織運営をする上で大切にされていたことは何ですか。

山川和人:
常に営業と現場が衝突しないような関係づくりを意識していました。上に立つ立場として、お互いがお客様のためにしっかり話し合い、譲り合って解決していけるような、アットホームな雰囲気をつくることを何より大切にしたかったのです。

グループの可能性を再認識した社長就任

ーーその後はどのようなご経験をされましたか。

山川和人:
海外勤務などを経て本社に戻り、北海道から東北までを管轄する地域本部に配属されました。そこでは当時の本部長(現ALSOKの代表取締役社長 栢木 伊久二)のもとで、管轄内の各社の分析や改善策の立案などに携わりました。当時受けた指示は、今の私の仕事にも非常に活きています。東日本大震災の際は、出張先の仙台で被災し、そのまま現地で体制の立て直しにあたったことも印象深く記憶しています。

ーー以前から貴社との関わりはあったのでしょうか。

山川和人:
コロナ禍でALSOKエムビック研究所がALSOKのグループ会社になったことは認識していましたが、社長に就任するまでは、業務での関わりは全くありませんでした。食品検査や新型コロナ検査をしている会社だという認識はありましたが、正直なところ、その程度にとどまっていました。

だからこそ、社長に就任して弊社の検査内容を詳しく知ったときは、「こんなすごい会社がグループにあったのか」と純粋に驚きを覚えました。そのポテンシャルの大きさを理解すると同時に、「もっと早く知っていれば、ALSOKのお客様に更なる安全安心を届けられたのに」という思いも湧いてきたのです。弊社の事業は、グループ全体にとって非常に大きなプラスになると確信しています。

食の安全を守る多様な検査とスピード対応

ーー貴社の事業内容や強みについて教えてください。

山川和人:
事業全体としては食品関連の検査が主業務であり、その中核を担うのが腸内細菌検査です。食に携わる方々の検査を通じて食中毒を未然に防ぐ、まさに日本の「食の安全安心」を支える仕事と言えます。O157などを持つ方を検査で見つけ出し、治療につなげることで、本来起きていたかもしれない不幸を防いでいます。社員も皆、世のため人のためというプライドを持って取り組みを進めています。

加えて、時代のニーズに合わせた検査も多く手がけているのが弊社の特徴です。たとえば東日本大震災の時には、食肉市場から「放射線検査ができないと流通させられない」と相談を受け、いち早く検査機器を導入し、流通再開に貢献しました。また日本の食品輸出を支援するため、認証団体と協力してハラール検査の体制も立ち上げています。これは宗教的な側面も正しく理解し、構築した他社にはないサービスです。新型コロナ検査も早期に開始し、現在は、アスベスト含有検査を時代に即した検査として行っています。

弊社には、予期せぬ出来事が起きた時に、会社として「何をすべきか」「何ができるか」を即座に考えて行動に移す文化があります。震災時の放射線検査も、私たちが「動く」と決断し、いち早く行動したからこそ実現できたものだと考えています。こうした迅速な対応力こそが、弊社の強みだと自負しています。

検査の先へ グループシナジーで描く未来

ーー今後のビジョンについて、お聞かせいただけますか。

山川和人:
現在、「新規開拓」と「サービス開発」の2つの側面で取り組みを進めています。

「新規開拓」の面では、ALSOKグループの顧客基盤を最大限に活かしていく方針です。ALSOKには法人だけでも50万件以上の取引先があります。警備の提案だけでなく、私たちが持つ衛生面の知見を提供するなど、グループとしてお客様の安全安心に貢献できることはまだ多くあると考えており、連携して開拓を進めています。

もう一つの「サービス開発」の面では、検査結果を報告するだけでなく、その後の改善までを包括的に支援する体制づくりに注力しています。具体的には、衛生点検で「床が汚れています」と指摘するだけで終わるのではなく、その後の清掃まで一貫して対応できる仕組みを構築しています。これはお客様の価値向上に直結すると考え、今年から本格的に動き出しました。

ーー社員の働きやすさに関する取り組みについて教えてください。

山川和人:
「社員が働きやすいと感じられる会社にしたい」という思いは強く持っています。そのために、福利厚生の充実を図るとともに、社内レクリエーションなども充実させます。また、永年勤続表彰や年末の納会、グループのスポーツ大会への参加なども含め、働きがいのある環境を整備しているところです。

特に私たちの職場は女性社員が多く活躍しています。そうした中で、結婚や出産といったライフイベントを経ても働き続けてくれる社員が多く、産休・育休を取得した後の復職率は非常に高い水準にあります。これも、働きやすい環境づくりのひとつの表れではないかと考えています。

ーー最後に、事業を通じて大切にされている思いをお聞かせください。

山川和人:
弊社が提供するサービスは、人の命に直結するものだと強く認識しています。たとえば浅漬けでO157が発生したり、アレルギー物質の混入でアナフィラキシーショックが起きたりと、食品が原因で尊い命が失われるケースは実際にあります。弊社が提供する検査は、そうした不幸を未然に防ぐためのものです。わずかな見逃しが大きな食中毒につながりかねませんし、報告が少し遅れることで食中毒の蔓延を招く可能性もあります。

ですから、この「検査が安全安心につながる」という根本的な思いを、社員一人ひとりがプライドを持って常に胸に置いています。これからもALSOKグループの一員として、「正しい検査を迅速に報告する」という使命を果たし続けていく所存です。

編集後記

ALSOKでの警備現場経験からキャリアをスタートし、常に「現場」を思い、コミュニケーションを大切にしてきた山川氏。その視点は、エムビック研究所の社長に就任した今、「検査の先にある改善」という顧客の現場に寄り添う新たな価値提供へとつながっている。人の命を守るという共通項のもと、警備と検査のプロフェッショナル集団が一体となり、日本の「安心安全」をより強固なものにしていく未来に期待したい。

山川和人/1969年滋賀県生まれ。地元の高校卒業後、1988年に綜合警備保障株式会社(現・ALSOK株式会社)に入社。2005年まで滋賀支社に勤務し、常駐、警備輸送、機械警備業務に従事。1993年から営業部に配属。2005年から3年間、警備対策官として在ペルー日本国大使館勤務を経験する。ALSOKに復帰後、本社勤務を経て、2017年に山梨支社長、2020年に城東支社長に就き、2024年に同社代表取締役社長に就任。お客様の安全安心に繋がることをモットーに精度の高い検査を続けている。