※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

「すべての動きたいを支える」をビジョンに掲げ、自転車をはじめとするパーソナルモビリティの出張修理・メンテナンス事業を全国規模で展開する、アベントゥーライフ株式会社。大手小売業での経験から業界の構造的課題を見出し、「売る」ことよりも「支える」ことに価値を置く独自のビジネスモデルを確立した。同社の代表取締役社長、片倉好敬氏の起業への情熱と、業界の未来を見据えた壮大な構想に迫る。

小売の現場で見つけた業界課題と「支える」価値への気づき

ーー起業に至る経緯をお聞かせいただけますか。

片倉好敬:
事業を営む父の背中を見て育ち、幼い頃から自然と起業に憧れを抱いていました。父が事業を立ち上げた当初の苦労も身近で見ていたため、経営の厳しさや現実も理解していました。だからこそ、将来は自分の手で新しい価値を生み出したいという想いが強くなっていったのです。大学卒業後は、商いの基本を学ぶために接客から物流まで一貫して経験できる小売業界へ進みました。

新卒で入社したイオングループの自転車専門店、イオンバイクで勤務したことが大きな転機となりました。そこで自転車業界に深く関わり、人々の生活を支える重要な乗り物であると同時に、業界が抱える多くの課題に気づいたのです。

当時の自転車業界は「売ること」が主な目的となり、修理はサポート的な位置づけになることが多い傾向がありました。しかし、お客様にとっては愛着のある一台です。それにもかかわらず、気軽に修理を頼める地域のお店は減少していました。この「修理の選択肢が限られている」という点に強く課題を感じ、売るだけでなく、直すこと、つまり「支える」ことに価値を置く会社が必要だと考え、起業を決意しました。

ーー創業時、特に苦労したことはありますか。

片倉好敬:
弊社はもともとメンテナンスを祖業としていましたが、事業を拡大する過程で物販にも挑戦しました。そして生産体制は海外におきました。日本での生産を理想としましたがエンドユーザーに提供できる価格が相場の2倍3倍になってしまうという現実に直面し、海外生産を選択しました。品質を担保するために現地に泊まりこみ生産体制を構築していきましたが、それでも当初はお願いした内容と異なるものが届くなどの多くのトラブルもありました。

しかし生産工場に対して何度も説明とゴールを説明し少しずつ改善するという経験を得ることができました。また、お客様が徐々にその対応を評価してくださり、逆に取引が深まったお客様もいらっしゃいます。この経験から信頼の重要性を痛感し、祖業であるメンテナンス事業に改めて注力するようになりました。物販での経験は、現在の事業の礎です。ここで明確に“動きたい”という人の気持ちを支える。それがアベントゥーライフの原点となりました。

全国網と高い技術力が支える独自のメンテナンス事業

ーー貴社が展開する事業のコンセプトについて教えてください。

片倉好敬:
自転車やキックボードといった移動手段は、単なる“モノ”ではなく、人の生活そのものを支える“時間の器”です。私たちが提供しているのは、修理という行為を通じて、人々の「動きたい」という願いを途切れさせない時間の価値です。社名のアベントゥーライフは、スペイン語で冒険を意味する「Aventura(アベントゥーラ)」と人生を意味する「Life(ライフ)」をかけ合わせた造語です。乗り物は人生の相棒であり、それを支えることは人々の人生や社会全体を支えることに繋がると考えています。ただ売るのではなく、「支える」ことを大切に、移動の自由をメンテナンスの力で支えるインフラのような存在を目指しています。

ーー貴社の事業における一番の強みは何でしょうか。

片倉好敬:
主力はメンテナンス事業であり、最大の強みは、都市部から地方まで日本全国どこへでも駆けつけられる出張修理のネットワークです。また、他社製品も含め、どのようなモビリティでも修理を断らない姿勢を貫き、お客様が安心して長く乗り続けられる環境を提供しています。

技術力の面でも、地域の自転車店では修理が難しい新しいタイプのモビリティに、メーカーを問わず対応できると自負しています。単に製品を販売して終わりではなく、その後の修理や点検といったアフターサポートまで一貫して担える体制です。そしてパーツに関しても中国の工場とも物販を通して繋がりがあったことで直接のサプライチェーンの構築ができている点も強みです。

販売はできても出荷時の初期整備に課題を抱えるメーカー様に代わって整備を行ったり、地方自治体やホテルが所有する自転車の保守管理を担ったりと、法人向けのサービスも充実しています。

ーー特に自信のある分野はありますか。

片倉好敬:
電動アシスト自転車のメンテナンスです。豊富な知識と経験を持つ専門の整備士が、バッテリーやモーターといった複雑な電動系統のトラブルにも迅速かつ的確に対応可能です。この専門性の高さが、お客様から厚い信頼を寄せていただいている理由だと考えています。

ーーメンテナンス事業以外で展開している事業を教えてください。

片倉好敬:
最近はすでにモビリティを所有している自治体様や企業様への定期メンテナンス事業もご好評いただいております。壊れてから直すよりも定期的にメンテナンスをしておけば結果的に時間も費用も抑えることができます。

IT技術で切り拓くモビリティの未来と事業を加速させる人材戦略

ーー現在、注力されているのはどのようなことでしょうか。

片倉好敬:
私たちの原点であり最大の強みであるメンテナンス事業に改めて軸足を戻すことに全力を注いでいます。

そのための具体的な戦略は2つです。1つ目は、メンテナンス事業における法人向け販路の開拓です。メーカーはもちろん、ホテルや地方自治体など、自転車に関わるさまざまな法人のお客様との連携を強化しています。すでに複数の自治体とのお取引も始まっており、これを足がかりに、日本全国で高品質なメンテナンスを提供できる体制を構築していく計画です。

2つ目が、高い技術力を活かした自社メディアの運営です。専門的な知見を持つ技術者集団として、お客様のお役に立つ情報を積極的に発信していきたいと考えています。このメディアの最終的なゴールは、単なる情報発信ではありません。読んでいただいた方から自然とメンテナンスのお問い合わせをいただけるような仕組みをつくり、事業の根幹である「見込み顧客の獲得」と認知度向上に直結させることです。技術力を通じてお客様のお役に立つことが、事業の成長につながる流れを確立したいと考えています。

「動く」を、支える力に。

ーー貴社が事業を行う上で、大切にされている信念について伺えますか。

片倉好敬:
私たちが信じるのは、「移動は、人の可能性を広げる力である」ということ。どんな地域にも、どんな年齢にも、“動きたい”という願いがある。その願いを支えることで、人も街も、もっと自由で豊かになっていく。

アベントゥーライフは、教育・技術・システムを通じて、“モビリティの裏側を美しくする”という新しい価値を社会に届けていきます。

未来への挑戦 「モビリティ・スペシャリスト」への進化

ーー貴社の今後の展望と、具体的な取り組みについて伺えますか。

片倉好敬:
私たちが目指す究極の姿は、「すべての動きたいを支えるモビリティのスペシャリスト」です。その実現に向けて、現在、二つの柱となる革新に取り組んでいます。

教育オペレーションの構築全国の整備士・技術者が同一水準のクオリティでサービスを提供できるよう、独自の教育体系を整備中です。技術研修に加え、接客・安全・IoT対応スキルなど、次世代モビリティに求められる総合力を育成。「修理する人」ではなく、「モビリティを支えるプロフェッショナル」を全国に育てていきます。

独自在庫システムの開発多機種・多メーカーの部品を効率的に管理できる独自の在庫プラットフォームを構築。デジタル連携によって、部品の発注・配送・交換を最適化し、修理時間の短縮とコスト削減を実現します。メーカー様にとっては信頼できる保守パートナーとして、ユーザー様にとっては安心して乗り続けられる存在として、アベントゥーライフはモビリティ業界全体の“アフターインフラ”を担っていきます。

編集後記

「売るより支える」。片倉氏が繰り返し語ったこの言葉は、単なるビジネスモデルではなく、社会インフラを担う者としての強い責任感と哲学の表れである。大手での経験から業界の課題を的確に捉え、誰もが安心して移動できる社会の実現を目指す情熱は、整備士たちを惹きつけ、全国的なネットワークへと成長した。今後はITを活用し、より利用者の利便性を高める先進的なサービスの実現を目指す同氏。その視線は、自転車業界の枠を超え、日本のモビリティの未来そのものを描いている。アベントゥーライフの冒険は、まだ始まったばかりだ。日本の“移動”の概念を変えるその冒険に、これからも目が離せない。

片倉好敬/東京都生まれ。法政大学卒業後、イオンリテール株式会社へ新卒で入社。新卒でイオンバイク株式街への出向となり、流通の最前線で顧客対応と組織運営を経験した後、医療コンサルティング会社にて経営企画を担当。「移動を支える仕組み」の「修理ができない・しにくい」構造の不完全さに課題を感じたことが転機となり、2018年にアベントゥーライフ株式会社を設立。全国どこでもモビリティの修理・点検に対応できる「メンテナンスネットワーク」の構築を目指す。