※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

介護保険の適用範囲外の領域に特化し、介護を必要とする人とヘルパーをつなぐマッチングプラットフォーム「クラウドケア」。同社は、利用しやすい価格設定と、働き手のやりがいを追求した独自の仕組みを強みに、業界のパイオニアとして成長を続けてきた。創業以来変わらぬビジョンを掲げ、介護の新たな形を模索する代表取締役CEOの小嶋潤一氏に、事業の背景と今後の展望について話を聞いた。

デジタル業界からの挑戦 社会課題解決への決意

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

小嶋潤一:
キャリアのスタートはデジタルマーケティング業界でした。学生時代から「世の中に新しい価値を生み出したい」という思いが強く、いつかは起業したいと考えていました。そのために、まずは事業の成長をダイレクトに左右するマーケティングのスキルを身につけようと考えました。そして、成長著しいデジタルマーケティングの世界に飛び込んだのです。

主にクライアントの事業成長を支援するコンサルティング業務に携わりました。「どうすればサービスが世の中に浸透し、お客様に選ばれるのか」を徹底的に考え抜く毎日でした。そこで学んだのは、データに基づいた仮説検証を繰り返すことの重要性です。また、顧客のインサイトを深く理解することの大切さも学びました。この経験が、現在の会社経営の礎になっています。

ーー介護という異なる分野へ進まれたのはなぜでしょうか。

小嶋潤一:
事業を立ち上げるなら、社会的な意義の大きな領域で挑戦したいという思いが強くなったのが理由です。日本が直面する高齢化という課題に対し、自分なりに貢献できることはないかと考えました。そこでまず、自ら介護保険サービスの事業を立ち上げ、その現場でお客様と直接向き合いました。その中で、制度の枠内だけでは応えきれない多様なニーズが存在することに気づいたのです。

たとえば、通院の付き添いや買い物代行といった日常的なご要望。あるいは、趣味の観劇や旅行に同行してほしい、といったその方の人生を豊かにするご要望です。そこに大きな可能性を感じ、デジタル技術を活用したマッチングプラットフォームという事業モデルを着想しました。

暮らしの質を高める 公的保険外領域での多様な支援

ーー貴社の事業内容について、教えていただけますか。

小嶋潤一:
弊社は、介護保険外の領域に特化した、訪問型の介護・生活支援マッチングプラットフォーム「クラウドケア」の開発・運営を行っています。このサービスは、支援を必要となさる高齢者や障がいをお持ちの方、またそのご家族と、ご自身のスキルや空き時間を生かして働きたいヘルパーの方々を、プラットフォーム上で直接つなぐ仕組みです。近年では、ご自宅で専門的なリハビリを受けたいという声にお応えし、理学療法士や作業療法士といった国家資格を持つ専門家とのマッチングも開始しました。これは他社にはない、弊社独自の強みです。

公的な介護保険サービスではカバーしきれない、日常の家事や通院の付き添い。さらには、旅行や趣味活動への同行といった、ご利用者様一人ひとりの多様なニーズに柔軟にお応えできる点が大きな特徴です。

ーー利用する方は、どのような目的で使われることが多いのでしょうか。

小嶋潤一:
介護度が比較的低い方からのご依頼も多くいただいています。たとえば、お一人での外出が少し不安になってきた方が、定期的なお散歩や買い物の付き添いを依頼されるケースです。これは、身体機能の維持や社会とのつながりを保つ「介護予防」の観点でも非常に重要だと考えています。

また、ご家族が介護の負担を少しでも軽くするため、家事代行としてご利用いただくこともあります。私たちは単なる「介護」にとどまりません。生活の質を高め、心豊かに暮らしていただくためのお手伝いをしていきたいです。

高品質なサービスと働きがいを両立させる独自の制度

ーーサービスの品質を確保するために、特に重視していることは何ですか。

小嶋潤一:
登録を希望されるヘルパーの方とは、必ず対面で面接を行っています。オンラインだけで完結させず、直接お会いします。そうすることで、介護のスキルはもちろん、その方のお人柄や仕事に対する考え方まで深く理解できるからです。ご利用者様のご自宅という大切な空間で、お身体に関わる仕事だからこそ、信頼できる方をご紹介したいのです。

ヘルパーの方がやりがいを持って働けるように、環境づくりにも力を入れています。介護業界の課題の一つに、仕事内容に対して賃金が見合わないという現実があります。そこで「クラウドケア」では、実績や評価に応じて時給が上がっていく仕組みを導入しました。一度上がった時給が下がることはありません。

また、ご指名いただいた際の指名料や、急なご依頼に対応いただいた際の加算もあります。頑張りがきちんと報酬に反映される給与体系を整えているのです。経済的な安定と、専門職としての成長を実感できる環境を提供したいと考えています。

「介護を誇れる仕事に」創業以来ぶれることのない思い

ーー創業以来、大切にされている経営理念やビジョンを教えてください。

小嶋潤一:
弊社は「ケアを提供する人、ケアを必要とする人、ご家族の幸せを実現し、地域社会において必要とされることで誰もがケアの仕事を誇れる世の中へ。」というビジョンを掲げています。介護は、人の生活を支える専門性の高い仕事です。その価値が正当に評価され、働く人が誇りを持てる業界にしたい。その思いが、弊社事業の原点にあります。このビジョンを実現することが、結果としてサービスの質の向上にもつながると信じています。

ーー事業を通じて、どのような社会を目指していますか。

小嶋潤一:
私たちには「高齢者が、住み慣れた街で幸せに過ごせる社会をつくりたい」という思いがあります。年齢を重ねたり、支援が必要になったりしても、自分らしい生活を諦める必要はありません。施設に入るか、家族に負担をかけるかという選択肢だけでないのです。「必要なときに、必要な分だけ、専門家の力を借りる」という第三の選択肢を当たり前にしたいと考えています。「クラウドケア」が社会に浸透すれば、一人ひとりが望む場所で豊かな生活を送り続けられるでしょう。私たちは、そのような社会の実現を目指しています。

編集後記

デジタルマーケティングの世界で培った知見と、社会課題を解決したいという熱い思い。その二つを掛け合わせることで生まれたのが「クラウドケア」だ。小嶋氏の言葉からは、ご利用者様と働き手の双方に真摯に向き合う姿勢が一貫して感じられた。「介護を誇れる仕事に」。その思いが実現されたとき、日本の介護が抱える課題は、新たなステージへと向かうに違いない。同社の挑戦は、介護の未来を明るく照らす一筋の光だ。

小嶋潤一/2006年に株式会社アイレップへ入社。ストラテジストとしてクライアントの SEM コンサルティングを行う。その後、マガシーク株式会社へ転職し、EC サイトのマーケティング業務に従事。2011年にジェイシーイノベーション株式会社を起業し、半日型の入浴中心デイサービス事業を行う。介護の現場で経営を経験した後、2016年に株式会社クラウドケアを共同創業。