※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

アパレル業界特化の人材サービスを展開し、「おもてなしの心」を軸にクライアントの信頼を得る株式会社インター・ベル。同社は単なる人材派遣にとどまらず、EC運営代行や社員の自己実現を促すプロジェクトなど事業を多角化している。代表取締役社長の田中克典氏は、アパレルでの販売経験と独立、そして一度経営から離れた経験を持つ人物だ。社員の成長と業界の発展を目指す同氏に、その歩みと展望を聞いた。

アパレル業界への道と「社長」への思い

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

田中克典:
もともとは別の業界を目指し就職活動をしていたのですが、なかなか決まらず難航していました。そんな折、知り合いの方にご縁をつないでいただき、アパレルメーカーに入社したのが社会人のスタートです。

その会社は、当時めざましい成長を遂げていました。百貨店への卸売が主流だったアパレル業界において、同社はVMD(※)や接客といった「売り方」まで自社の社員が徹底的に管理する、独自のスタイルを築き上げていたのです。どんな商材でも、「飾り方と売り方にとにかくこだわれば絶対に売れる」という強い信念が社内にありました。その徹底したやり方が圧倒的な業績につながっていました。キャリアのスタートから、売ることに対する姿勢や考え方を深く学ぶことができたのは、非常に大きな経験です。

一方で、その徹底したスタイルは、「歯車になって働け」とはっきり言われるような、強力なトップダウンの文化によって支えられている側面もありました。

(※)VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング):商品の企画・構成と視覚的な表現を連動させ、店舗の売上向上につなげるための戦略的マーケティング手法。

ーー独立に至った経緯をお聞かせください。

田中克典:
一社目の後、知り合いが立ち上げたコンサルティング会社に転職しました。そこでは販売教育やVMDのコンサルを手がけ、海外出張などを通じて多くのことを学びました。一方で、次第に自分の中での不満も感じるようになりました。そんな中、当時流行りだしていたEC販売に興味を持ち、勉強のために一時、化粧品会社でも経験を積みました。

その会社で働きながら自分でオークションに出品を始めたところ、USEDの洋服が安定して売れるようになりました。そこで「これはいける」と確信し、以前の会社の仲間と二人で、2005年に弊社を立ち上げました。一社目でカリスマ的なオーナー社長の存在を知って以来、「いつか社長になりたい」という思いを漠然と抱いていましたが、さまざまな経験と葛藤を経て、その思いが実現した形です。

経営から離れたことで得た客観性

ーーこれまでのキャリアの中で、転機となる出来事はありましたか。

田中克典:
1つ目は、株式会社クリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)のグループに加わったことです。経営の難しさに直面するなかで、自分自身の成長にも限界を感じていました。当時は、他者の意見に耳を傾けず、厳しい指導ばかりしていたため、「裸の王様」のようになっていたのかもしれません。そんな状況を変えたいと思い、尊敬できる方のもとで働ける環境を探していました。

2つ目は、2016年に一度社長を退き、6年間経営から離れたことです。C&R社のグループに入ってすぐは、自分自身あまり変わっていませんでした。しかし、経営の第一線から離れたことで、客観的に物事を見られるようになったのです。後任の社長の「思っていてもすぐに口を出さず、相手に考えさせる」姿勢を見て、「余計な口出しをせず、むしろ任せた方がうまくいく」と気づかされました。

経営の現場を離れて客観的な立場になれたことで、自分の至らなさを改めて痛感しました。復帰の打診を受けたときでさえ、「今の社長の方が会社にとって良い」と本気で思ったほどです。現在は、口を挟まずに任せる姿勢を大切にし、支える立場に徹するよう心がけています。

ーー貴社が大切にしている企業文化についてお聞かせください。

田中克典:
社員が自発的に、会社が掲げる目標を「自分ごと」として捉え、仕事を通じて自己実現していくことを大切にしています。理想は、ある程度権限を任せ、裁量の中で仕事をしてお客様や仲間に喜ばれることです。そしてそれが、評価に繋がる環境を目指しています。その文化を象徴する具体的な取り組みの一つが「ブランドプロジェクト」です。

これは、販売員として活躍している社員の中から、自社ブランドを立ち上げる取り組みで、すでに2つのブランドがデビューしています。このように社員が持つ能力を新たに開花させ、その可能性を活かせるような環境づくりこそが、私たちが目指す企業文化です。

社員の成長を支える企業文化の確立

ーー貴社の強みについてお聞かせください。

田中克典:
「おもてなしの心で人々を幸せに」という企業理念に基づく「おもてなしの心」が、全社員に深く浸透していることです。現場での接客はもちろん、企業様への対応に至るまで、すべてがその心でつながっています。それほどまでに浸透している理由は、何か特別な施策を行ったわけではなく、とにかく「伝え続ける」ことを徹底してきたからだと思います。そして何より、管理職を含めた全社員が、その「おもてなしの心」を正しいことだと深く理解し、日々体現してくれている。それこそが、私たちの揺るぎない強みになっています。

ーー採用で大切にされていることは、どのようなことですか。

田中克典:
採用では、基本的には「人柄」しか見ません。「人間性が良ければ、経験がなくても大丈夫」と考えています。もちろん即戦力化を期待して経験者を採用することもありますが、正直、そちらの方がうまくいかないケースも多いのです。

キャリア採用は特に難しいと感じています。どんなに高い能力を持っていても、お客様に貢献できなければ、できることにはならず、その土台となる「人間力」を何より重視しているためです。また、どんなにできる人でも、入社してから会社のやり方や文化といった「勝手」がわかるまでには、どうしても半年ほどはかかってしまいます。ですから、最初の時点で人柄をしっかり見極めることを非常に大切にしています。

業界課題を解決する新戦略と展望

ーー現在のファッション業界の課題をどう捉えていますか。

田中克典:
多くの企業が販売職の採用に悩んでいること、そして働く人も店舗内では孤独になりがちな点を大きな課題だと感じています。そこで私たちは、その課題に対し貢献したいと考えています。たとえば、新卒採用をしていないブランドに対し、私たちが窓口となって人材を受け入れ、経験を積ませた後に転籍できる、といった仕組みも始めています。これは、希望のブランドへ入るための遠回りをなくしたいという思いからです。

弊社がキャリアアップのための「ステップ」となり、働きながら自身の適性に気づけるような多様な選択肢を提供することで、業界全体の発展に貢献していきたいです。

ーー今後、特に注力していきたい分野についてお聞かせください。

田中克典:
今後注力していく新戦略として、国内では、既存のプロモーションやEC領域の強化をさらに進めていく考えです。それに加え、新たな取り組みとして、販売職の方が抱える悩みを可視化し、スキルアップにつなげるためのAI開発も進めています。これらを通じて、将来的には日本の接客力全体の底上げに貢献していきたいと考えています。

また、海外展開も重要な注力分野と捉えています。まずはアジア圏を視野に入れており、現地の商業施設では接客が課題とされていると聞きますので、私たちのおもてなしを軸にしたソリューションを提供できる可能性があると期待しています。

編集後記

一度経営の第一線から離れた6年間の経験は、田中氏の言葉に深い説得力を与えている。誰の意見も聞かなかった過去を内省し、客観的視点を得たことが、現在の経営の根幹である。貴社は、この経験から、社員の自主性を重んじ、能力を最大限に発揮させる場を文化として確立した。今後はより人材の可能性を広げ、AI開発や海外展開を通じて、ファッション業界全体の未来を拓く同社の挑戦に注目したい。

田中克典/1973年宮崎県日向市生まれ。早稲田大学卒業後、大手アパレルメーカーへ入社。2度の転職を経て、2005年に株式会社インター・ベルを設立し、代表取締役社長に就任。ファッション業界特化型の人材エージェンシーとして事業を展開。2013年からは株式会社クリーク・アンド・リバー社のグループの一員として活動。現在に至る。

■公式SNS
Instagram
YouTube

■各採用サイト

新卒向け:
・「マイナビ
・「READY TO FASHION

中途向け:
・「中途応募サイト
・「現職社員口コミサイト