※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

カーテンとカーペットの専門店として、圧倒的な品揃えと専門知識で顧客の暮らしを彩る株式会社カーテン・じゅうたん王国。同社はプライベートブランド商品の開発に注力し、素材選定から縫製に至るまで徹底した品質管理を行うことで、他社との差別化を図っている。また、デジタル技術を活用しつつも、あくまで「店舗」と「人」を軸に置いた独自の戦略で、新たな顧客体験の創出に挑んでいる。異業種での経験を経て入社し、組織の変革と成長を牽引する代表取締役社長の今井満春氏に、事業にかける情熱と今後の展望について話を聞いた。

ボランタリーチェーン発祥のユニークな背景

ーーこれまでのご経歴をお聞かせください。

今井満春:
私が弊社に入社したのは2012年のことです。それまではハウスメーカーやコンビニエンスストアチェーンの本部で経験を積んでおり、全く異なる業界からの転身でした。当時、弊社はキャリア採用を行っており、私が培ってきたインテリアの知識やフランチャイズビジネスのノウハウが活かせるのではないかと感じたことがきっかけです。

弊社はもともと、全国のカーテン・カーペット販売店が集まってできたボランタリーチェーン(※)が始まりです。個性の強いオーナー様たちが集まり、お互いに切磋琢磨しながら成長してきたというユニークな背景があります。そこに面白さとポテンシャルを感じ、「この会社で日本のシェアを獲得したい」と強く思いました。

(※)ボランタリーチェーン:独立した小売店が、経営の独自性を保ちながら仕入れや業務を共同化するために、主体的に結成する事業形態。

細部への徹底したこだわりが光る主力商品

ーー貴社の事業の特徴、そして特に注力されている商品にはどのようなものがありますか。

今井満春:
弊社はカーテンとカーペットに特化した専門店として、地域密着型の店舗展開を行っています。最大の特徴は、販売しているドレープカーテンの約85%、レースカーテンの約90%がプライベートブランド(PB)商品であるという点です。単にメーカーから仕入れた商品を販売するのではなく、自分たちがこだわり抜いて開発した商品を、自信を持ってお客様にご提案しています。

中でも特に力を入れているのが、「ビバス(Vivaz)」シリーズです。この商品はドレープ生地の裏にもう一枚別の生地を縫い付けているのが特徴で、高い遮熱・断熱効果を発揮します。昨今の電気代高騰などの背景もあり、室内の快適な温度を保つ機能性は多くのお客様にご支持いただいています。

また、縫製には徹底的にこだわっています。通常、裏地付きカーテンは一度の工程で縫い合わせてしまうことが多いのですが、「ビバス」は表地と裏地を別々に縫製した後、最後に貼り合わせるという非常に手間のかかる工程を採用しています。これにより、生地の間に空気層が生まれ、断熱効果が高まるのです。

ーー製造工程に手間をかける理由と、接客サービスのこだわりについて教えてください。

今井満春:
「世界一美しいカーテンをつくろう」というスローガンのもと、他社が真似できない品質を追求しているからです。たとえば、「柄出し縫製」という技術では、カーテンの山の部分で柄が美しく揃うように、ミリ単位で調整を行っています。また、生地の継ぎ目が目立たない位置に来るよう計算して縫製したり、製造工程でアイロンを複数回かけたりと、職人が一つひとつの作業に時間をかけています。

さらに、専用の型紙に合わせて熱処理を行う形状記憶加工を施しているため、洗濯しても美しいウェーブが持続します。一見すると非効率に思えるかもしれませんが、こうした「面倒くさいこと」をやり続けることが、専門店としての品質を支えているのです。

接客においては、お客様の目的に寄り添うコンサルティングセールスを重視しています。ご自宅までうかがって採寸を行ったり、実際にサンプルを窓に合わせてイメージを確認していただくサービスを提供しています。プロのスタッフがお客様の不安を解消し、最適なご提案を行うことこそが、私たちの強みです。

店舗を軸にした独自の「OMO戦略」

ーー今後のビジョンについてはどうお考えでしょうか。

今井満春:
現在、中期経営計画の一環として独自の「OMO戦略」の構築を進めています。一般的な「OMO戦略」はオンラインを軸にオフラインを融合させる「オンライン・マージ・ウィズ・オフライン」です。しかし、弊社の場合は「店舗」を軸にオンラインを活用する、「オフライン・マージ・ウィズ・オンライン」という逆転の発想に基づいています。

そして、私たちの最大の資産は、店舗とそこで働くスタッフ、そして対面ならではのきめ細やかなサービスです。これらをベースに、オンラインでの接客や情報発信を組み合わせることで、店舗にご来店いただけないお客様にも、店舗と同じような質の高い体験を提供したいと考えています。たとえば、オンライン上でスタッフが相談に乗り、画面越しに商品の質感や縫製の良さをお伝えすることで、安心してご購入いただける仕組みを整えていきます。

デジタル技術を活用しながらも、あくまでアナログな「人」の力を中心に据えた、専門店ならではの戦略で、30代や新築購入層といった新しいお客様との接点をつくっていきたいです。

ーー現在の経営において大切にされている考えについてお聞かせください。

今井満春:
弊社が専門店としての地位や商品力を大切にしているのは当然です。しかし、実は一番大事にしているのは「社員に対する気持ち」です。トップダウンで指示を出すやり方は楽ではありますが、それでは組織としての本当の強さは生まれません。

私は、社員一人ひとりが主体的に能動的に物事を考えて行動し、会社として良いアイデアであれば積極的に取り入れたいと考えています。そのため、社員の「チャレンジ精神」を最も大事にしています。具体的には、社員が主体的に能動的に手を挙げてチャレンジできる環境を作りたいと考えています。これはどこの会社でも難しいことですが、会社の発展には不可欠であり、実現に向けて取り組んでいるところです。

ーーどのような人物像を求めているか、今後の展望と合わせて教えていただけますか。

今井満春:
求めるのは、スキル以上に「これをやりたい」という熱い思いを持った方です。「こんな商品を扱ってみたい」「お客様にこう喜んでほしい」といった主体的な気持ちがあれば、活躍の場は無限に広がっています。

私たちは、カーテンとカーペットの販売を通じて、住空間の豊かさを提案し、新たな文化を創りたいと考えています。たとえば、近年減少傾向にあるカーペットですが、ハウスダストの舞い上がりを防いだり、ペットの足腰への負担を軽減したりといった優れた機能を持っています。価値を改めて伝え、広めていくことも私たちの使命です。業界のリーダーとして、共にこれからのカーテン・カーペット文化を創り上げていく仲間を待っています。

編集後記

「世界一美しいカーテン」を目指し、見えない裏側の縫製工程にまで徹底的にこだわる姿勢に、専門店としての誇りを感じる。効率化が優先されがちな現代において、あえて手間暇を惜しまないPB商品は、まさに職人魂の結晶といえる。デジタル技術を活用しつつも、あくまで「店舗」と「人」の力を中心に据える独自の戦略は、顧客とのリアルな接点を何より大切にする決意の表れだ。住まいの快適性が改めて見直される昨今、カーテンとカーペットの新たな価値を創造し続ける挑戦に注目したい。

今井満春/1967年兵庫県生まれ。日本大学卒業後、トヨタホーム東京株式会社に入社し、7年間ハウスメーカーの営業職に従事。その後、株式会社セブン‐イレブン・ジャパンにてフランチャイズオーナー店の経営指導及びマネジャーを14年間務める。住宅インテリア知識とフランチャイズビジネスの経験を更に役立てようと奮起し、2012年株式会社カーテン・じゅうたん王国に入社。経営企画・営業部を経て、2019年同社代表取締役社長に就任。