※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

資格試験などをコンピューターを活用して実施するサービス「CBT(Computer Based Testing)」を全国に普及させた、株式会社CBTソリューションズ。同社は紙媒体が主流だった試験の常識を覆し、誰もが挑戦しやすい環境を構築した。業界シェア8割超を誇るこのサービスは、いかにして生まれたのか。その裏には、小学生で経営者を志し、周囲の反対をものともせず突き進んだ代表取締役社長である野口功司氏の揺るぎない信念があった。日本の未来を見据える同氏のビジョンに迫る。

多様化する働き方に応える 試験インフラのデジタル変革

ーー貴社サービスは、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

野口功司:
弊社は「教育とITの融合」を​テーマに、​資格・検定の​世界の​DXを​提案してきた​企業です。かつて主流だった年に1、2回の一斉紙試験は、多様化する現代の働き方に合わなくなっていました。たとえば、小売店の店員が一斉に休むわけにはいきません。企業側からも、社員に個別のタイミングで受験させたいというニーズが寄せられていました。

こうした課題を解決するため、一年中、全国47都道府県の好きな会場で受験できるモデルを構築したのが弊社のサービスです。これは、元々アメリカに存在していたビジネスモデルから着想を得ました。デジタル化の波はアメリカから5年遅れで日本に来るため、現地で成功し、まだ日本にないサービスは大きなチャンスだと考えたのです。アメリカのモデルを参考に、自身の経験を加えて日本で展開するに至りました。

高い参入障壁こそ勝機 ゼロから築いたNo.1への道筋

ーー日本になかったサービスを立ち上げる上で、苦労されたのはどんな点ですか。

野口功司:
最大の課題は、事業規模の大きさでした。全国対応のシステム開発とテストセンター設置には、莫大なコストがかかります。個人で始めた事業でしたので、資金集めには大変苦労し、投資家を回っても誰一人として賛同してもらえず、「ビジネスが大きすぎる」「絶対に失敗する」と猛反対されました。

ただ私は、周囲が反対するからこそ、絶対に勝てると確信していました。多くの経営者が「やめろ」ということは、逆に言えば、それだけ参入障壁が高く、簡単に真似ができないということです。このビジネスモデルは一度シェアを獲得してしまえば、他社が追随するのは極めて困難です。社会的な価値が高いと信じていたので、否定的な意見が逆に私のやる気に火をつけました。

ーー事業が大きく成長した転換期はいつ頃でしたか。

野口功司:
ターニングポイントは2つあります。1つ目は、創業から6年かけ、ついに全国47都道府県にテストセンターを設置できたときです。それによって弊社のサービスが真価を発揮し、お客様からの信頼が厚くなりました。2つ目は、漢検や日商簿記といった著名な団体がCBTを導入し、「試験といえばCBT」という文化が社会に根づいたことです。受験者側から「なぜCBTではないのか」という声が上がるほど認知が広がり、主催者側から問い合わせが急増しました。

「生きる価値は後天的に生まれる」 経営の原点となった道徳の授業

ーーそもそも、なぜ経営者を志すようになったのでしょうか。

野口功司:
小学3年生の道徳の授業で「人間の生きる意味」を問われ、私は「生きる価値は後天的にうまれる」という結論に至りました。人間は、その行動によって社会にとって意味のある存在になれる。その価値を最大化できるのは政治家か経営者だと考え、より自由な挑戦ができる経営者の道を選びました。

ーーキャリアを重ねる中で、その思いに変化はありましたか。

野口功司:
子どもの誕生が大きな転機となりました。それまでは自分のために事業を行う側面もありましたが、子どもが生まれてからは「この子たちの世代が幸せに暮らせる未来をつくりたい」という社会貢献への思いがより一層強くなったのです。

その視点で日本社会を見渡すと、「失われた30年」の中で古い体質が新しいビジネスの誕生を阻んでいる現実が見えてきました。未来の子どもたちのために、ITやAIを活用して世界と戦える強い国にしなければならない。その思いが今の原動力です。

サービスと組織の両輪 社員の幸福を追求する独自の経営観

ーー改めて、貴社の強みについてお聞かせください。

野口功司:
弊社の強みは、サービスと組織の両面における「総合力」です。サービス面では、あらゆる項目でNo.1であると自負しています。導入団体数400以上、年間受験者数300万人という実績は日本一。テストセンターの数も全国に300会場以上あり、業界2位に倍近くの差をつけています。元々がシステム開発会社であるため技術力も高く、高品質なサービスをリーズナブルな価格で提供できる点も強みです。

また、組織づくりにおいても、社員が心から幸せだと思える会社でありたいという思いは人一倍強く持っています。役職に関係なく「さん」付けで呼び合う文化や、創立以来、産休・育休の取得率・復帰率が共に100%であることなど、働きやすい環境づくりを徹底。その他、明るいカフェのようなお洒落なラウンジエリアや、お酒を​飲みながら社員同士が交流できるバーカウンターの設置など、オフィス空間にもこだわっています。社員の定着率の高さが、結果として会社の成長を支える大きな力となっています。

ーー貴社では、どのような人材が活躍されていますか。

野口功司:
「素直」「自責」「明るい」「大人であること」。この4つを兼ね備えている人です。感情的になるのではなく、物事を俯瞰して建設的に対話ができること。そして他責にせず、コミュニケーションを大切にする姿勢が、成長につながると考えています。

経営ノウハウの全てを伝承 次世代リーダーに託す未来への構想

ーー今後の夢や展望についてお聞かせください。

野口功司:
10年以内に事業規模を1000億円レベルにまで成長させ、少なくとも10の価値ある新規事業を世に送り出したいと考えています。それらはITやAIを駆使し、日本の労働力不足などの社会課題に立ち向かうもの。私が引退した後も、日本にとって必要とされる事業を生み出し続けることが目標です。

この構想を実現するためには、事業を牽引するリーダー、つまり「社長」を育成することが不可欠です。私は常々「100の事業を創るなら、100人の社長が必要になる」と考えています。社内外から意欲ある若者を集め、私が培ってきた経営のノウハウを伝え、新規事業の責任者として積極的に抜擢していきたい。そして、その社長たちを物心両面で幸せにすることが、私の経営者としての夢でもあります。

ーー最後に、この記事の読者の方に向けてメッセージをお願いします。

野口功司:
日本の未来を本気で変えたい、あるいは経営者になって高みを目指したい。そんな強い志を持つ人は、ぜひ弊社の門を叩いてほしいです。私が大切にしている「迷ったら、かっこいい方を選べ」という言葉があります。さまざまなことで悩むと思いますが、悩んだら、必ず自分の心に問いかけて、かっこいい方を選んでください。そうすれば後悔しないし、自分のことが好きになれるはずです。

編集後記

小学3年生で抱いた経営者への志を原動力に、周囲の反対をものともせず、前人未到の事業を成し遂げた野口氏。その言葉には、日本の未来を憂い、次世代のために道を切り拓こうとする強い覚悟が宿る。100の事業創出と経営者育成を目指す同社の挑戦は、社会に新たな価値を生み出し続けるだろう。

野口功司/1973年生まれ、宮崎県出身。宮崎大学工学部卒業後、1996年富士ソフトABC株式会社に入社。その後、株式会社日本オラクル、その他外資系企業を中心に7回の転職を経て、2009年、株式会社CBTソリューションズを設立。ITを駆使し、試験業界を牽引する。年商100億を達成し、ベストベンチャー100に選出された実績も。iU情報経営イノベーション専門職大学の客員教授を務めるほか、「令和の虎」「For JAPAN」「就活サバイバルNEO」など各種メディアに出演中。