※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

建設事業者向けのマッチングプラットフォーム「ツクリンク」を運営するツクリンク株式会社。全国10万社以上の事業者が登録し、法人企業の利用率の高さや、未払いを防ぐ独自の保証サービスを強みとしている。同社を率いるのは、鳶職からキャリアをスタートさせ、建設業界の課題を自らの体験として知る代表取締役社長の内山達雄氏だ。現場で感じた営業の非効率さや業界への不安を原動力に、ITの力で業界構造の変革に挑む内山氏。「正しい人が正しく評価される世界をつくる」という強い信念の背景にある思いと、同社が描く建設業界の未来像について話を聞いた。

鳶職からITの世界へ 建設業界の課題解決を志した原点

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

内山達雄:
私は19歳で建設業界に入り、最初は鳶職人としてキャリアをスタートしました。その後、社員として職人の管理や営業といったポジションを任されるようになりましたが、ちょうどその時期にリーマンショックや政権交代が重なったのです。公共工事の削減などにより業界全体が急速に縮小し、発注単価の下落や職人への支払いが厳しくなる現実を目の当たりにしました。「このままでは業界自体が立ち行かなくなるのではないか」という強い不安を覚える中で、人が直接稼働せずとも仕組みで価値を生み出せるITの世界に大きな可能性を感じ、独学で学び始めたのが転機でした。

ーーそこから貴社の創業に至るには、どのような経緯がありましたか。

内山達雄:
建設会社を退職後、まずは自身でウェブ制作やデザインを手がける会社を設立しました。その経営の最中に、あるイベントで出会った仲間たちと「新しい事業を作ろう」と意気投合し会社を共同創業しました。当初、私は別の会社を持っていたため代表ではありませんでしたが、どのような事業を行うか模索する中で、私の建設業での原体験に基づいた課題解決のアイデアを提案したところ、現在の事業の原型が生まれました。その後、事業拡大のために出資を受ける段階で、株主やステークホルダーへの責任を全うすべく、私が代表に就任することになりました。

「営業の非効率」から誕生したサービス ユーザーの声が育んだ信頼

ーーサービスを構想する上で、どのような課題を感じていましたか。

内山達雄:
私自身が営業職時代に痛感していた「営業の非効率さ」が最大の着眼点です。飛び込み営業を行っても、多忙な現場では話を聞いてもらえません。しかし、かつて断られた会社から、繁忙期になると「仕事をお願いできないか」と電話がかかってくることがありました。つまり、需要と供給のタイミングが合っていないだけだったのです。「仕事が欲しい人」と「仕事を受けられる人」を適切なタイミングでつなぐことができれば、業界の営業効率は劇的に改善されるはずだと考えました。

ーーサービス開始当初、業界の反応はどのようなものでしたか。

内山達雄:
当時はまだITに不慣れな建設会社も多く、「仕事に困っている会社しか登録していないのではないか」「ネットで知り合った相手は信用できない」といった懐疑的な声も少なくありませんでした。そこで私たちは、広告宣伝に頼るのではなく、ユーザー同士の口コミを通じて地道に信頼を積み上げる道を選びました。

サービスを継続する中で、大手ハウスメーカー様にご利用いただいたり、技術力の高い協力会社様が増えたりと、徐々に質が高まっていきました。今では「ツクリンクのおかげで数千万円の利益が出た」という嬉しいご報告もいただくようになっています。

他社との違いはユーザーへの寄り添い 独自の強みとサポート体制

ーー「ツクリンク」の強みを教えてください。

内山達雄:
最大の強みは、法人企業の利用が非常に多く、元請け(発注者)と直接つながる機会が豊富にあることです。建設業界特有の重層下請け構造を解消し、適切な利益を確保しやすい環境を提供しています。また、オンラインだけでなく、全国各地でユーザー交流会を開催するなど、リアルの接点を重視している点も私たちの特徴です。

ーー他にどのような特徴があるのでしょうか。

内山達雄:
建設業界では、工事代金の未払いが深刻な課題となっており、新規取引に不安を感じる事業者が多くいらっしゃいます。そこで私たちは、安心して取引ができるよう、工事代金の未払いに対する独自の保証サービスを提供しています。数十万円の未払いが倒産に直結しかねない中小企業にとって、この保証はまさに生命線です。未払いを撲滅し、真面目に仕事をしている方々を守ることは、プラットフォーマーとしての私たちの重要な責務だと考えています。

“正しい人が正しく評価される”建設業界を目指す

ーー現在の建設業界が抱える最大の課題と、その解決策についてお聞かせください。

内山達雄:
一般の方がリフォームや家づくりを考える際、「どの会社が信頼できるか」を判断する指標がほとんどないことが課題です。一部の悪質な業者の存在によって業界全体のイメージが損なわれていますが、実際には日本のインフラを支える素晴らしい技術を持った事業者の方々がたくさんいます。私たちは、プロの事業者同士が評価し合うデータを蓄積し、将来的にはそれを一般消費者にも可視化したいと考えています。飲食店を選ぶ際にレビューサイトを参考にするように、建設業者も「信頼できる評価」で選ばれる世界を作る。真面目に良い仕事をする人が正しく評価されるようになれば、業界の魅力が増し、若者の入職にもつながると信じています。

ーーその先に描かれている、業界の未来像とはどのようなものでしょうか。

内山達雄:
最終的な目標は、建設業に携わるすべての方々が経済的に豊かになり、自分たちの仕事に誇りを持てる業界にすることです。そのために最も重要なのが「評価の可視化」です。技術や対応の良さが正当な対価として返ってくる仕組みを社会に提示し、建設業界の地位向上に貢献していきたいと考えています。

フルリモートでもチーム力を最大化する 組織づくりの哲学

ーー事業を推進する組織づくりにおいて、特に大切にしていることは何ですか。

内山達雄:
スキル以上に「人柄」を重視しています。個人の能力も大切ですが、チームで連携することでより大きな力が発揮できると考えているからです。現在、弊社は全社員がフルリモートで勤務していますが、オンライン上でも「感謝の連鎖」が生まれる仕組みを導入しています。専用のチャンネルでお互いに「ありがとう」と称賛し合う文化です。最初は私自身が感謝を伝え続けることから始め、時間をかけて組織全体に浸透させました。離れた場所にいても、仲間の頑張りが見え、認め合える環境が、組織としての一体感を生み出しています。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

内山達雄:
私たちは、日本の国土を支える建設業という重要な産業を、テクノロジーの力でより良く変えていけることに誇りを持っています。同じ志を持つ仲間や企業の皆様と手を取り合い、建設業を通じて日本全体を元気にしていけるよう、これからも全力を尽くしてまいります。

編集後記

鳶職として現場の厳しさを知り、営業として業界の不条理を感じた内山氏の言葉からは、自らの原体験に根差した建設業界への深い理解と、それをより良い場所にしたいという強い意志がうかがえる。テクノロジーの力で業界の「評価」を可視化し、再構築しようとする挑戦は、日本の未来を支える産業の姿を、より明るく、誇り高いものへと変えていくに違いない。

内山達雄/1977年生まれ。1998年関東学院大学中退後、株式会社大久保恒産入社。鳶職人として5年ほど現場作業を経験し、営業兼施工管理者として10年、建設業に携わる。2012年家入一真氏のイベントをきっかけにツクリンク株式会社を創業。2013年「ツクリンク」をリリース。