※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

介護人材を軸とした人材派遣サービス、人材紹介サービスを展開する株式会社プラス・ピボット。同社はあえて資格保有者・経験者に特化したサービスを提供し、介護士がプロフェッショナルとして正当に評価される世界の実現を目指している。新卒で参画した介護人材派遣事業の立ち上げで急成長と大きな挫折の両方を経験した代表取締役社長の山本直生氏。その経験から導き出した「長期利益」という経営観と、それを実現するためのコンセプトを軸に、再び介護業界の課題解決に挑む同氏に話を聞いた。

急成長の陰で生まれた組織の歪みとギャップの認識

ーー社会人としてのキャリアは、どのようにスタートされたのでしょうか。

山本直生:
人材領域で幅広いサービスを展開する株式会社ネオキャリアに新卒で入社し、1年目から介護人材派遣の立ち上げメンバーとして参画しました。立ち上げ当初、数人でのスタートでしたが、成長角度は非常に高いものでした。1年目で売上8億円、2年目で29億円、3年目で約50億円に到達。5年目で100億円と一気に成長したのです。その過程で多店舗展開や従業員の増加を経験し、組織が大きくなることの体感的な経験ができたのは非常に大きな財産です。

当時の経験を通じて、数字では測れない成長の「体感値」を得たことが、現在の成長に対する確かな基準となりました。この経験があるからこそ、今の弊社の成長スピードを見ても、私からすると「まだまだ余裕がある」と思えるのです。

ーー順調な成長の一方で、何か課題は感じていましたか。

山本直生:
10年が経った頃、創業メンバーのうち残っていたのは私だけでした。「お客様はサービスに満足しているか」「従業員は誇りを持っているか」と考えたとき、必ずしも理想通りの状態ではない部分も見えてきました。会社の成長と個人の幸せが比例すべきだと思っているのですが、そのギャップに悩むことになりました。

介護派遣のイメージを変える創業の動機

ーー貴社創業のきっかけについて教えてください。

山本直生:
ネオキャリア時代、立ち上げ当時は、無資格・未経験の方を積極的に活用することで、一気に人手不足の解消に貢献し、マーケットを広げるという“その時代に合った正解”を実現できたと思います。その一方で、事業が成熟していく中で、「より専門性の高い介護士が正当に評価される世界をつくる」という次のステージの課題も見えてきました。

急拡大していく過程で、介護派遣に対する受け止め方にゆらぎが生まれましたが、それも当時の市場の成長段階では自然な現象だったと捉えています。

そして、この経験があったからこそ、プラス・ピボットでは「資格保有者・経験者に特化する」という、次のフェーズにふさわしい新しい価値づくりに挑戦しています。

ーー創業にあたり、どのような体制でスタートされたのでしょうか。

山本直生:
派遣業を大きく展開するには資産要件があり、資金調達が必要でした。今のグループの会長と知り合い、出資していただくかとグループの中でやるかという選択肢がありましたが、後者を選びました。私自身、財務や経理などに興味がなく、すべてを自分でやると小さくまとまってしまうと感じました。そのため、グループのリソースを使う方が良いと判断したのです。

資本力に勝る組織力を生む「コンセプト」の統一

ーー貴社の強みと、その核となる考え方について教えてください。

山本直生:
私たちのビジネスモデル自体に特別な秘訣はありません。人材派遣事業は「資本のゲーム」であり、本来は資本力が大きい企業が有利です。しかし、この常識を打ち破る唯一の要素が、私たちが掲げる基準値や方向性、すなわち「コンセプト」です。組織全体がこのコンセプトのもとにまとまり、方向性を揃えていることこそが、弊社の強みだと考えています。

そのコンセプトとして、会社の経営目的を「長期利益」と定義しました。長期的に利益を出し続けるためには差別化が必要であり、そのためにコンセプトが重要になってくるのです。介護派遣事業においては、派遣スタッフの方が「始めること」よりも「続けること」を大切にしています。

たとえば、お仕事された時間に応じて時給とは別に「ホップポイント」というものをお付けしています。働いた総時間でランクが上がり、ランクが上がるとポイントの付与倍率が上がる仕組みです。これはポイント自体が得だというより、「私たちが何を評価しているか」を表すものです。ポイントを付与することで「私たちは応援していますよ」というメッセージを、社員、お客様、そして派遣スタッフである「ホップメイト」全員に伝えています。

ーーアイデアを形にすることや、実行力について、社長が特に重視されていることはありますか。

山本直生:
「言ってるけどやってない」という人は多いですが、よく見ると「やろうとはしている」ケースがほとんどです。たとえば、英会話をやろうと思ったとき、スクールを調べるという行動まではしても、申し込みや時間調整といった作業の段階で止まってしまう。「やりたい」という意欲ではなく、「作業力」がなくて止まっているケースが多いと、起業して必死に動く中で気づきました。

この考えは、ポイント制度の導入にも表れています。「人材業界でもポイントやランクをやった方が良い」と考えるのは、誰しも同じでしょう。ですが、それを実際にどうやって集計し、管理し、反映させ、伝えるかという具体のところまで落とし込むのは、根性だと思っています。アイデアを具現化する「作業力」こそが重要だと考えています。

壮大な計画の実現に向けた採用と人物像の基準

ーー今後の展望について、具体的な計画があればお聞かせください。

山本直生:
47都道府県全てに出店し、100拠点を達成します。同時に、介護×人材の領域で10個のサービスを展開する計画です。特定技能(外国籍人材の在留資格)や採用支援、入居者の募集支援など、お客様の課題を解決するサービスを増やし、既存顧客との関係性を深耕していきます。

ーー今後、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

山本直生:
その人がどういう目標を持っているかと、私たちの「長期目線」や「コンセプト」が合うかが非常に重要です。「早く出世したい」とか「稼ぎたい」という思いも良いですが、それが長期目線の上にあるかどうかが大切です。ただ稼ぎたいだけなら、うちではミスマッチになる可能性があります。

私たちは一緒に働きたい人を「素直でイイ奴」と呼んでいます。これは利他的であったり、ギブアンドテイクでいう「ギバー」のような人です。そして何より、長期的に考えられるからこそ、今の自分の欲望や願望をちゃんとコントロールできる人。目先の利益にとらわれず、未来のために今何をすべきか考えられる人と一緒に働きたいです。

編集後記

前職で「膨張」とも呼ぶべき急成長を経験し、その歪みも体感したからこそ、山本氏の言葉には重みがある。短期的な成果がもてはやされがちな現代において、あえて長期的な視座を持ち、それを「根性」とも言える地道な「作業力」で実行に移す。介護業界の未来を本気で変えようとする同社の挑戦は、キャリアを考える多くの若手ビジネスパーソンにとって、自らの働き方を深く見つめ直すきっかけとなるだろう。

山本直生/1989年東京都生まれ。国士舘大学体育学部卒業後、株式会社ネオキャリアへ入社。入社1年目にして介護人材派遣事業の立ち上げメンバーに抜擢され、最年少で支店長に就任。2023年に株式会社プラス・ピボットを創業。翌年の2024年に10拠点へと拡大し、2期目で売上18億円を実現。2033年までに10の事業サービス、100の拠点、全国47都道府県に進出を計画。介護×人材を軸に、全国にリアルプラットフォームを広げる。