
ペット同伴可能な店舗検索アプリ「ぐるわん」や、ペットのための防災用品を手がける株式会社ぐるわん。同社は飼い主の視点に立ったきめ細やかなサービスで、ペットと人がより豊かに共生できる社会を目指している。その根底にあるのは、代表取締役社長、梅本直輝氏の「かっこいい大人でありたい」という純粋な思いだ。しかしそれは、決して表面的なものではない。誰にも見せない努力を積み重ね、独自の信念で事業を切り拓いてきた梅本氏。そのキャリアの原点から、事業の強み、そしてペットと共に築く未来の展望について話を聞いた。
「かっこいい大人」を目指したキャリアの選択
ーー社会人としてのキャリアのスタートから、独立・創業に至るまでの経緯をお聞かせください。
梅本直輝:
大学時代、帰り道に見かけた疲れ切った大人たちの姿を見て、「こうはなりたくない」という反骨心が芽生えました。これが、社会人としてのキャリアを考えた原点です。当時の私にとって、IT業界で働くことが「かっこいい大人」への近道に見えたため、GMOインターネット株式会社に入社しました。
私は特別な才能があったわけではありません。だからこそ、始発で出社して準備を済ませ、日中はスマートに働くというスタイルを徹底しました。人に見えないところで努力を積み重ねることで、成果を出そうと必死だったのです。
その後、C Channel株式会社へ転職し、動画メディアの営業を担当しました。当時の会社は、少額の案件をお断りしていました。その状況で、私はビジネスチャンスを見い出し、個人事業主として独立したのが創業のきっかけです。また、正直に言えば「株式会社の社長」という響きへの憧れも、私を突き動かす大きな原動力となりました。
原体験を原点に信頼と質で広げる独自のネットワーク

ーー事業を立ち上げられた経緯と、現在の事業において重視されているポイントについてお聞かせください。
梅本直輝:
まずペット事業の「ぐるわん」については、私自身の体験が立ち上げのきっかけです。昔、ゴールデンレトリバーを飼っていた際、「ペット可」のお店で「大型犬はだめ」と断られ、悔しい思いをしました。単なる「可」ではなく、飼い主が本当に知りたい詳細な情報を届けたいと考え、事業をスタートさせました。
一方、現在力を入れているインフルエンサー事業で重視しているのは、フォロワーの「数」ではなくエンゲージメントという「質」です。フォロワー数が多くても反応が薄いより、少なくても熱量の高い反応がある方が影響力は大きいと考えています。こうした質の高いインフルエンサーの方は主に紹介で集まっており、私たちが誠実に仕事を提供することで信頼の連鎖が生まれています。デジタルな領域ですが、人情やつながりを大切にした関係づくりを心がけています。
ペットとの共生を軸にした事業展開と組織づくり

ーーペットに関連する新たな展開や、組織づくりにおける独自の取り組みについてお聞かせください。
梅本直輝:
まず事業面では、ペット防災に力を入れています。災害時、ペットは人間と同じ避難所に入れないケースが多く、飼い主と離れ離れになってしまう課題があります。そこで、ペット用の防災ボックス「ぐるわん防災BOX」を開発しました。まずはコンビニエンスストアなど身近な場所に置いてもらうことで意識を広めたいと考えており、2025年10月からセブン-イレブンのECサイトでも取り扱いが始まりました。
また、こうした「共生」への思いは組織づくりにも表れています。床に人工芝を敷いた、愛犬と一緒に出社できるオフィスを名古屋に開設しました。これが採用でも大きな魅力となり、「こういう会社で働きたかった」という多くの応募をいただいています。さらに、妊娠中の方の採用や時短正社員制度の導入など、多様な人材がライフステージの変化にかかわらず長く活躍できる環境整備も進めています。

ーー今後の組織づくりと、求める人物像についてお聞かせください。
梅本直輝:
急激な規模の拡大を目指しているわけではありません。従業員とその家族、そしてペットたちも含めて、みんなが幸せに暮らせる会社にすることが目標です。福利厚生を充実させ、例えばペットが亡くなった時に休暇を取れる制度などを整えて、動物が好きな優しい人たちが心穏やかに働ける会社でありたいです。
その基盤を固めるためにも、大きく二つの役割を担ってくれる方を求めています。一つは、私と同じように対外的に仕事を取る営業の右腕となる方。もう一つは、従業員の定着率を高め、入社後の研修などを担う組織構築ができる方です。私一人の力には限界があるため、共に会社の未来を創っていける仲間が必要だと考えています。
編集後記
「かっこいい大人になりたい」。梅本氏が語る動機は、一見するとシンプルだ。しかし、言葉の裏には誰にも見せない地道な努力の積み重ねがあった。そして社会の課題を自分ごととして捉える、真摯な眼差しが感じられた。ペットと人が真に共生する社会の実現に向け、独自の信念で事業を推進する姿は、経営者としての高い志を示している。動物を愛する優しい人たちが集う会社づくりは、新たな仲間の共感を呼び、描く未来図は今後さらに彩り豊かに広がっていくだろう。

梅本直輝/1991年生まれ。愛知県名古屋市出身、埼玉県育ち。GMOインターネット株式会社、C Channel株式会社を経て独立。2020年に株式会社spread with、および合同会社フルスクラッチを設立。創業より6期目を迎える現在、既存事業の拡大に加え、2024年8月1日に新会社、株式会社ぐるわんを設立し、ペット事業へ参入。「ペット版の楽天トラベル・じゃらん」を目指し、ペットと泊まれる宿や旅行情報のプラットフォーム展開に注力している。