
「光の演出で人の心を彩る」を経営理念に掲げ、世界へ挑む株式会社タカショーデジテック。環境エクステリア事業を手がける株式会社タカショーの社内ベンチャーとして発足し、屋外照明やLEDサイン、イルミネーション事業で急成長を遂げている。照明メーカーの枠を超え、「光」の事業を通じてワクワクする「モノづくり」「コトづくり」を提供し続けることで、地方創生にも取り組む同社。代表取締役社長の古澤良祐氏に、起業の経緯から市場創造の戦略、これからの企業に求められるあり方について話を聞いた。
創業者の傍で身につけたポテンシャルを秘めた領域を探す視点
ーー最初に、これまでのご経歴について教えてください。
古澤良祐:
大学卒業後にイギリスへ留学し、帰国後、株式会社タカショーに、社長秘書兼通訳というポジションで入社しました。そこでは、創業者の横で経営の意思決定や考え方を間近で学ぶ貴重な機会を得ました。
実は、もともと独立意欲が非常に強く、入社時の履歴書に「3年で辞めて独立します」と明記していたほどです。常に「自分ならどうするか」と事業に結びつけて考えており、虎視眈々と起業のチャンスをうかがっていました。
ーーその経験は、現在の経営にどのような影響を与えていますか。
古澤良祐:
大きく影響しているのは、「物事を俯瞰する視点」と「コミュニケーション力」です。秘書として会社全体を見る中で、主要な事業部に人が集まる中、あえて誰も気づいていない領域に可能性を見出す、潜在的な可能性を探す視点が養われました。この視点は、現在の事業選定にも通じています。
また、海外では、言語や文化、宗教の異なる多様な人々を束ねる経営者のマネジメントを目の当たりにしました。その難度に比べれば、言葉が通じる日本での経営はシンプルに感じるほどの度胸がつきました。さらに、「日本はカリフォルニア州の中にすっぽり収まる程度の大きさ」というグローバルな縮尺感覚を持てたことも大きいです。地方にいても、東京や世界を相手にビジネスはできる。そうした感覚は、この時期の経験がベースになっています。
ーー数ある選択肢の中で、なぜ今の事業に着目されたのですか。
古澤良祐:
当時、主要事業に人材が集中する中、まだ誰も手をつけていない、「今、光が当たっていない場所」はどこかと考えていました。そして、ポテンシャルを感じたのが「光」「照明」でした。折しも青色LEDの発明によって、光の三原色が揃い、LEDであらゆる色が表現できるようになった時期。熱を持たず、長寿命で、虫が寄らないというLEDの特性は、親会社の事業である「庭」の領域において、顧客に対し、これまでにない価値を提供できる強力な武器になると確信したのです。
ーー具体的にどのように事業化へと進めていったのでしょうか。
古澤良祐:
現場で経験を積むうちに、ビジネスで最も重要なのは、解決したい課題に対して最短距離でアプローチすることだと気づきました。そして、起業はゴールではなく、目的を達成するための手段だと気づき、社内ベンチャーという形で事業展開を始めました。
独立すればゼロからのスタートですが、社内ベンチャーであれば、親会社が持つ巨大なマーケットやブランド力、そして資金を最初から活用できます。幹から枝を広げるように事業を展開するほうが、早く花を咲かせられる。そう判断し、入社2年目のときに事業計画書を提出して、弊社を設立しました。
妄想から確信へ 文化なき場所につくった「新しい当たり前」
ーー創業当初、どのようなご苦労がありましたか。
古澤良祐:
最初の10年間は、理想と現実のギャップに苦しむ日々でした。照明という新しい武器を提供しても、使い方が分からない営業担当や現場からは「ただ重い荷物を持たされた」と敬遠され、全く売れなかったのです。原因を探ると、庭のプロである造園業者であっても電気工事士資格がないと照明を扱えない構造的な理由がありました。
そこで、資格がなくても安全に施工できるローボルト(12V)を中心とした照明器具を開発。さらに、製品があっても使い方が伝わらなければ意味がないため、照明に関しての知識・テクニック・施工・メンテナンスが学べる「ライティングマイスター制度」を立ち上げ、市場をイチから開拓していきました。
ーーその制度を、どのようにして業界へ浸透させていったのでしょうか。
古澤良祐:
私が講師となって全国各地を回り、4時間話し続けるセミナーをひたすら繰り返しました。累計で100回以上開催し、今では9000人を超える認定者がいます。コロナ禍以降はオンライン化し、さらに裾野が広がりました。
これに加え、優れた施工例を表彰するコンテストや、事例を共有するポータルサイトも運営し続けました。こうした地道な活動の結果、「ライティングのセンスが良い人は、庭のセンスも良い」という認識が広まり、照明が庭づくりに欠かせない「新しい当たり前」になっていったのです。
独自の強みを活かし地方創生へ挑む新たな光

ーー改めて、貴社独自の強みについて教えてください。
古澤良祐:
照明器具の製造だけでなく、設計・販売、そして施工までをワンストップで提供できる体制を整えている点が強みです。分業が一般的な業界において、全工程を自社で完結させることで、依頼主の思いをダイレクトに空間へ反映させることが可能になっています。
また、「海外の当たり前を日本の当たり前にする」という視点で、常に業界に先駆けた取り組みに挑戦し続けてきた姿勢も、現在の大きな競争優位性につながっています。特に地方創生につながるイルミネーションイベントは、海外で見た「ナイトタイムエコノミー」の成功事例にヒントを得て展開を始めました。
ーー現在、注力して取り組まれていることはありますか。
古澤良祐:
ローカルイニシアティブ事業と呼んでいる、地域主導で推進する地方創生の取り組みです。地方にこそ大きな可能性があり、ビジネスとしても面白いと考えています。私たちが大切にしている、「今ある光の入れ替えでは無く、今暗いところに光を灯す」という視点で見れば、課題を抱える地方こそ、「光」の力で最も輝かせることができる場所だと言えます。
弊社では公共施設・商業施設を中心としたイルミネーション事業を展開していますが、私たちが目指しているのは、単なるイベント開催ではありません。光をきっかけに街の認知度を上げ、関係人口を増やし、何よりそこに住む人たちが自分の街に誇りを持てるようにすることです。東京のような大都市に憧れるのではなく、自分たちの街を愛し、誇りを持つ若者が増えれば、地方は必ず元気になります。これは日本だけでなく世界共通の課題であり、弊社のビジネスモデルは世界でも通用すると確信しています。
ライフスタンスを基準とする経営戦略の推進
ーー今後のビジョンについて、お聞かせください。
古澤良祐:
今、時代は「モノ」の良さ、ライフスタイルという「コト」への共感を経て、「ヒト」の価値、すなわち「ライフスタンス」(誰がどんな思いでやっているか)が問われるフェーズに入っています。商品の安心・安全やブランド力だけでなく、「どんな会社が、どのような信念で活動しているか」が選ばれる基準となるのです。
弊社の目標は、このライフスタンス経営を推進し、事業を指数関数的に成長させることです。現在は、親会社という「幹」から新たな「枝」を伸ばし、多様な事業を拡大できる時期にあります。最終的には2030年にグループ全体で100億円の売上を目指し、この事業に関わる仲間を400人規模にまで増やしていきたいと考えています。
ーー今後、求める人材像について教えていただけますか。
古澤良祐:
弊社の理念に共感し、それを自分ごととして捉えて動ける仲間を増やしていきたいです。特に、「光で人をワクワクさせたい」「地方から世界へインパクトを与えたい」という熱い思いを持った方を求めています。実際弊社では、和歌山に戻ることを選択したUターンや、首都圏からのIターンなど、UIターンで入社するスタッフもここ数年で増えており、地方からのチャレンジに積極的に取り組んでいます。
全社員との面談や、売上だけでなくビジョン・パーパスに基づく評価制度など、成長できる環境は整っています。また、女性比率も41%と高く、多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍できる場所です。
地方創生や街づくり、業務改善を考える方、特に地方で自分のやりがいを見つけたいという意欲を持つ方に来ていただきたいです。やらされるのではなく、自発的に行動し、会社で成長を実感できる人と共に、明るい未来をつくっていきたいです。
編集後記
古澤氏が語る「今暗いところに光を灯す」という言葉は、照明事業の話を超え、社会や地方経済への希望のメッセージとして響いた。社内ベンチャーという形で最短距離で理想を実現し、地道な啓蒙活動によって市場を一からつくり上げた実行力。東京一極集中ではなく、地方の可能性とそこに住む人々の誇りを重視するローカルイニシアティブ事業は、企業としての社会的責任を果たす新たなあり方を示している。ライフスタンスを軸に、ビジョンに共感する仲間と共に世界を目指す挑戦は、これからも多くの人の心と地域を明るく照らし続けるだろう。

古澤良祐/1977年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、イギリスへの海外留学を経て、2002年、株式会社タカショー国際部に入社。社長秘書兼通訳として世界を飛び回る。2004年、LEDサイン、屋外照明、イルミネーションを手がける株式会社タカショーデジテックを設立し同社取締役、2019年に、代表取締役社長に就任。その他、フェスタ・ルーチェ実行委員会 会長、けやき大通りイルミネーション実行委員長、WIB(和歌山イノベーションベース)第4期会長なども務める。