※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

最新のAI検査と本格整体を組み合わせた、「マッサージをしない整体院」を運営する株式会社NAORUテクノロジー。従来の労働集約的なビジネスモデルや不明瞭な料金体系といった業界の常識に課題を感じ、テクノロジーで顧客とセラピスト(施術者)双方にとって利点のある仕組みを構築している。代表取締役を務める若林大樹氏は、2人の経営者から「情熱」と「論理」を学び、独自の経営スタイルを確立した。業界の慣習にとらわれず、真の健康価値を追求する同氏に、その事業の核心と未来への展望を聞いた。

業界への違和感から決意した異業種での研鑽

ーー整体業界を志したきっかけについておうかがいできますか。

若林大樹:
原点は、祖父の介護を目の当たりにした経験にあります。それまで元気だった祖父が体調を崩し、介護をする母も疲弊していく姿を見て、「健康寿命」の大切さを痛感しました。誰かが健康を損なうと、本人だけでなく、それを支える家族や周囲の人の生活にも大きな影響が及びます。一度失った健康を取り戻すのは難しいため、「未然に防ぐ」「今の健康を維持する」ことの重要性を強く感じたのです。

その思いを持っていた中で、高校時代にサッカーで怪我をし、整骨院に通う機会がありました。そこで鍼灸師や理学療法士という職業に出会い、私が目指していた「予防」のアプローチができると考えたのです。ただ痛みを取るだけでなく、運動療法も組み合わせて根本から健康を作るため、鍼灸とトレーナーの資格を同時に取得できる道を選びました。

ーー起業に至るまでの経緯を詳しくお聞かせください。

若林大樹:
専門学校で鍼灸師とアスレティックトレーナーの資格を取得した後、整骨院グループに入社しました。しかし、そこでは教育が追いつかず、サービスの質が低下している現場を目の当たりにします。また、根本改善より来店頻度を優先し、回数券を売ることを目的とする業界のあり方に強い違和感を抱きました。

労働集約型の業界で、理想のビジネスモデルを拡大するには、現場の努力だけではない別の視点が不可欠だと痛感しました。そこで、仕組みから業界を変える力を養うため、上京を決意します。IT企業で3年ほど勤務し、仕事の生産性を極限まで高める論理的な手法を学びました。

整体業界でお世話になった社長は、情熱的で人を惹きつける力に溢れていました。対して、IT企業の社長は極めて論理的で、仕事の生産性を高めることに長けていました。「情熱」と「論理」という、対極にある経営スタイルから受けた影響は計り知れません。この両輪を大切にする考えが、現在の経営スタイルの原点になっています。

数値化された改善結果が導く信頼とやりがい

ーー貴社ならではの強みやこだわりを教えてください。

若林大樹:
最大の強みは、AIによる姿勢解析をすべてのサービスの起点としている点です。ご自身の体がどれほど歪んでいるのかを、客観的なデータで正確に把握していただくことから始まります。これまでの整体はセラピストの感覚に頼る部分が大きく、体の変化がわかりにくいという課題がありました。

しかし、AIの導入により、施術前後の変化を数値や画像で可視化できるようになり、お客様にご自身の改善をより深く実感していただけるようになりました。たとえば、施術前は90度だった肩の可動域が、施術後には110度に改善したと数値でわかれば、説得力が高まります。また、客観的な根拠に基づいてアプローチできることは、セラピスト自身のやりがいにも直結します。

このように、データに基づく納得感のあるサービスを提供しているため、回数券の提案などは一切行いません。お客様に安心と安全を提供することを、私たちは何よりも大切にしています。

医学的根拠に基づいた技術開発と医師との連携

ーー現在注力されている新しい取り組みはどのような内容ですか。

若林大樹:
解剖学に基づき、関節の動きを改善する技術「ジョイントモビライゼーション」(※)を軸に、新たなメニュー開発に注力しています。たとえば、背中にある大きな関節が硬くなると、体は別の場所でその動きを補おうとします。その結果、本来は動かさなくてもよい首や腰に無理な負担がかかり、痛みが生じてしまうのです。

私たちはこうした根本原因に対し、歴史ある技術をベースにしつつ、現在は2名の医師とも連携して手法を確立させています。科学的な根拠も整理しながら、既存のお客様だけでなく、より幅広い層の方々へ弊社のサービスを広げていきたいと考えています。

(※)ジョイントモビライゼーション:関節の動きを改善し、痛みやこわばりを軽減するために行う手技療法。

ーー仕事に向き合う上で指針としている考えは何ですか。

若林大樹:
人生100年時代といわれる現代において、悩むよりもまず行動し、圧倒的な経験を積むことを大切にしています。これからの長い人生を考えたとき、一つの不満に執着して立ち止まるのではなく、自らの価値を高めるために能動的に仕事をしていかなければなりません。世の中の評価を気にしすぎず、とにかく数をこなして経験を積み上げることが重要です。失敗を恐れずに挑戦し続ける姿勢こそが、自己の大きな成長につながると信じています。

規模の利点を活かした業界構造の抜本的改善

ーー事業を拡大していく上で、どのような人材を求めていますか。

若林大樹:
セラピストだけでなく、エンジニアやデザイナーなど、多様な人材を求めています。職種に関わらず重視しているのは、良いと思ったことを取り入れてすぐに行動へ移せる素直さです。未経験のことでも、まずはやってみようと一歩踏み出せる姿勢が、成長には欠かせません。

採用については、これまでの5年間は新卒採用に注力し、基盤を整えてきました。この土台が確立できたため、今後は即戦力となるキャリア採用も本格的に強化していく方針です。私たちのビジョンに共感し、責任者候補として共に拡大を担ってくれる、強い思いを持った仲間に加わっていただきたいです。

ーー将来に向けた具体的な到達目標を教えてください。

若林大樹:
5年以内に1500名体制を構築し、セラピストの働き方を根本から変えることを目指しています。現在はフランチャイズ展開を中心に、国内だけでなく海外進出も加速させているところです。

組織として規模の利点を追求し、労働集約型で待遇が厳しいとされた業界構造を変えます。社会保険の完備や安定した雇用環境を実現し、セラピストが将来にわたって安心して働き続けられる土台をつくることが私の使命です。業界のスタンダードを塗り替え、誰もが情熱を持って挑戦できる未来を切り拓いていきます。

編集後記

最先端の姿勢解析技術と人の手による技。この相反する要素を高い次元で融合させた背景には、若林氏の飽くなき探究心がある。業界で当たり前とされてきた商慣習に一石を投じ、客観的なデータで顧客に安心を届ける姿勢は、誠実そのものだ。情熱的な現場経験と論理的な思考をあわせ持つ同氏の歩みは、働く側にとっても希望となるだろう。誰もが自らの技術に誇りを持ち、長く活躍し続けられる未来が、そこには確かに広がっている。

若林大樹/1993年大阪府生まれ。大阪ハイテクノロジー専門学校卒業。鍼灸スポーツ分野を学び、整体院・整骨院グループにて取締役を歴任。その後、ヘルスケア系スタートアップでの事業経験を経て、株式会社NAORUテクノロジーを設立し代表取締役に就任。オーストラリア、ニュージーランドへの留学経験を持ち、日本および海外で整体技術の普及と事業展開に取り組んでいる。