※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

建設業界において、「発注者サイドに立つ」という独自のポジションを確立し、技術サービスで成長を続けるフロンティアコンストラクション&パートナーズ株式会社。大手ゼネコンでの人事経験、そしてバブル崩壊という時代の荒波を乗り越えた同社代表取締役社長の松村力氏は、ゼネコンと事業主の間に存在する根深い「情報の非対称性」を解消し、業界の新たな可能性を切り拓いてきた。「建設業×人材派遣」のパイオニアとしてスタートし、今なお進化を続ける同社が見据える未来とは。創業の原点となった強烈な原体験から、現在進行形で取り組む3つの事業戦略、そして社員が輝く組織づくりにかける熱い想いまでをうかがった。

大手ゼネコン時代に見た「光と影」 創業へと導いた痛切な原体験

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

松村力:
私の原点は、新卒で入社したフジタ工業株式会社(現・株式会社フジタ)での経験にあります。建設という技術の会社でありながら、私は管理部門、特に人事としてのキャリアを長く歩みました。入社からバブル経済の絶頂期にかけて、会社も日本経済も凄まじい勢いで膨張していました。しかし、宴は長く続きません。バブル崩壊とともに状況は一変しました。人事として私が直面したのは、かつて夢を語り合って採用した仲間や、お世話になった先輩方のリストラ計画の策定という、あまりに過酷な現実でした。

「早く自分をリストラしてくれ。そうしないと会社がもたないだろう。」社員から発せられる悲痛な声を聞きながら、自らの手で彼らを送り出さなければならない。その痛みは筆舌に尽くしがたいものでした。当時、建設業界では法律で人材派遣が禁止されていましたが、「もし柔軟な雇用形態があれば、彼らの雇用を守れたのではないか」、そんな強烈な歯痒さが、私の胸に深く刻まれました。これこそが、起業へと突き動かす原動力となったのです。

ーーそこから、どのような転機を経て創業を決意されたのですか。

松村力:
転機が訪れたのは、当時の労働省(現・厚生労働省)へ足を運んだ時です。「建設業界でもホワイトカラー(施工管理技士等)に限り、人材派遣が解禁される」という情報を耳にしました。その瞬間、背中に電流が走るような衝撃を覚えました。「時代が変わる。これは私がやるべきことだ」と直感したのです。入社当時から漠然と抱いていた「いつか独立したい」という野心と、リストラの痛みから生まれた「雇用を守りたい」という使命感が、パチリと音を立てて重なった瞬間でした。その1年後の2001年、当社を設立。「建設業×人材派遣」という、当時としては全く新しいビジネスモデルへの挑戦が幕を開けました。

業界の「情報のブラックボックス」を解消する

ーー創業当初の事業構想についてお聞かせください。

松村力:
当初の柱は、先ほどお話しした「建設業×人材派遣」のモデルです。しかし、私にはそれともう一つ、どうしても実現したい構想がありました。それが、私がゼネコンの営業時代に抱いていた「ある違和感」から生まれたビジネスです。当時、発注者であるお客様と、請負う側のゼネコンの間には、埋めがたい「情報の格差」がありました。お客様は提示された金額が適正なのか、品質管理が十分なのかを判断する基準を持たず、プロであるゼネコンに対して圧倒的に不利な立場に置かれていたのです。

この「情報の非対称性」を解消したい。その一心で、発注者側の味方となってコストや品質を厳しくチェックする、いわば“用心棒”のような役割を果たす「コンストラクション・マネジメント(CM)」という手法を採用しました。バブル崩壊後、自衛のために管理体制を強化したいデベロッパーのニーズと合致し、結果としてこの事業が急速に拡大していくことになりました。

ーー競合他社と比較した際、貴社独自の強みはどこにあるとお考えですか。

松村力:
そもそも「発注者側に立つ」というスタンス自体が珍しいのですが、最大の特徴は、私を含めゼネコンで施工管理の現場を経験した「技術者」が主体である点です。単なる机上の空論や数値管理だけでなく、現場の泥臭い実態、コスト構造、職人の動きまでを熟知しているからこそ、実効性のある管理が可能です。現場を動かすリアルなノウハウ、それこそが他社には真似できない決定的な違いだと自負しています。

未来を拓く3つの戦略と「ガラス張り」の組織

ーー今後の成長戦略について、具体的にお聞かせください。

松村力:
私たちは今、次のステージへ向かうために「3つの柱」を掲げて取り組んでいます。1つ目は「アットリスクCM」への挑戦です。従来のような助言に留まらず、我々自身が工事金額や工期に対してリスクを負い、プロジェクトの成功を保証する高度な手法です。2つ目は「マンションのアフターサービス事業」です。今後ますます増加する既存マンション(ストック市場)に対し、約500名の専門訓練を受けた部隊を活かし、質の高いサービスを提供していきます。3つ目は「PPP(官民連携)事業」です。特に公園事業に注力しており、地域の賑わいを創出し、住民の皆様に愛される空間づくりを官民一体となって進めています。

ーー最後に、どのような組織を目指されているか、社員の皆様への想いと共にお話しいただけますか。

松村力:
私は常に、会社は「自己実現のステージ」であってほしいと願っています。そのために、会社の業績や賞与の原資総額はすべてオープンにし、経営の透明性を徹底して確保しています。また、時間管理ではなく、成果と挑戦で評価される文化を大切にしています。社名にある“フロンティア”の通り、私たちは常に未開拓地を切り拓いてきました。業界の常識にとらわれず、「新しい仕組みを作りたい」「自分の可能性を試したい」という挑戦心と柔軟性を持った方にとって、弊社は最高の舞台になるはずです。ぜひ、私たちと一緒に新しい未来を創っていきましょう。

編集後記

バブル崩壊後のリストラという強烈な原体験から生まれた「雇用を守りたい」という意志。そして、発注者サイドに立つという逆転の発想。松村社長の言葉からは、業界の構造的課題に挑み続ける開拓者の気概を感じた。アットリスクCMやPPPといった新領域への挑戦も、その延長線上にある確かな一歩だ。社員の自主性を信じ、ガラス張りの経営で挑戦を促す同社は、これからも建設業界の新しい地平を切り拓いていくだろう。

松村力/1964年神奈川県生まれ、慶應義塾大学法学部卒。1988年にフジタ工業株式会社(現・株式会社フジタ)に入社し、現場事務、営業、人事を経験。時代の変わり目を感じ、2001年にフロンティアコンストラクション&パートナーズ株式会社を設立、代表取締役に就任。その後、子会社の吸収合併などを行いながら、近年はPPP(官民連携事業)にも注力し、会社の新たなステージを築いている。