※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

世界中のトップDJから絶大な信頼を得る「AlphaTheta」/「Pioneer DJ」ブランドを展開し、DJ機器市場を支えるAlphaTheta株式会社。同社は、日本の高い技術力と海外のマーケティング力を融合させ、世界中の音楽シーンを支えている。コロナ禍や半導体不足という未曾有の危機を乗り越え、成長を続けている同社の舵を取るのが、エンジニア出身の片岡芳徳氏だ。顧客の熱狂を原点とする現場主義と、DJの枠を超えて音楽の新たな可能性を追求する壮大なビジョンについて、同氏に話を聞いた。

エンジニアとして顧客の熱狂を知った原体験

ーーまずは、片岡社長のキャリアの原点についてお聞かせください。

片岡芳徳:
新卒でエンジニアとして配属され、DJ事業の立ち上げに関わりました。正直、最初は上司に言われるがまま開発を進めており、「本当にこのような商品が売れるのか」と半信半疑でした。ところが最初のモデルが想定以上の売上で、顧客の反応も非常に良いと営業担当から聞き、驚きました。自分たちが開発室でつくったものが、これほどまでに熱狂的に受け入れられるのだという事実は、当時の私にとって大きな衝撃であり、仕事への向き合い方を変える喜びでした。

ーーエンジニア時代の経験は、現在の経営にどう生きていますか。

片岡芳徳:
現在の経営スタイルの根幹になっています。製品づくりにおいて「顧客第一」や「現場主義」を貫くこと。そして、お客様に選んでいただくための「絶対的な理由」をつくること。その大切さは、この時代に叩き込まれました。机上の空論ではなく、現場で顧客が何を求め、何に熱狂するのかを肌で感じた経験が、今でも私の経営判断の指針です。

グローバルな視点と挑戦する文化が生む圧倒的信頼

ーー貴社の最大の強み、独自の価値についてお聞かせください。

片岡芳徳:
弊社は日本発の企業ですが、最大の市場は欧州・北米であり、グローバル市場をリードしています。この強みを支えているのが、日本の商品企画チームと、海外の商品企画チームの密な連携です。週次のミーティングなどでの情報共有を徹底しています。海外スタッフが市場の状況を的確に共有し、日本の開発部隊と深く連携しています。この日本と海外の融合こそが、世界中で支持される製品を生む源泉となっています。

ーー組織づくりにおいて、大切にされている社風や文化を教えてください。

片岡芳徳:
米国駐在時の経験から、特に「意見と人格を切り離す文化」を大切にしています。日本では発言の誤りが人格の否定につながると捉えられがちですが、米国をはじめとする海外では意見が違っても人格は尊重されます。この開放的な議論の土壌があるからこそ、失敗を恐れずに新しいアイデアを発信できるのです。

実際の社風もフラットで風通しの良い社風で、従業員の自主性を重んじています。たとえば、定時後に社内ラウンジでDJイベントを自主開催するなど、自分たちで考えて楽しむ文化があります。指示を待つのではなく、熱意を持って能動的に動けることが弊社の強みです。

一方で、ただ自由なだけではよいパフォーマンスは生まれません。お客様から信頼される絶対的な品質を守るため、ものづくりには厳格なプロセス管理があります。自由な発想を大切にしながらも、プロとして成果には厳しく向き合う。この「自由と規律」のバランスこそが、世界中のプロに選ばれる製品を生む源泉となっています。

逆境を乗り越え急成長へ導いたリーダーシップ

ーーコロナ禍や半導体不足には、どう向き合われたのでしょうか。

片岡芳徳:
特に意識したのは、情報の透明化です。リモートワーク中心の中で従業員の心を一つにするため、オンラインでの夕礼や経営方針説明会を定期的に始め、会社の状況を包み隠さず共有しました。危機的な状況であっても情報をオープンにし、全員が現状を正しく理解できたことが、組織としての結束と急成長につながったと考えています。

ーー近年の成長を支えている要因は何だと思われますか。

片岡芳徳:
端的に言えば、やるべきことを、正しくやっている点に尽きるでしょう。商品開発において、「できそうなこと」ではなく「やるべきこと」を目標に設定することを徹底しています。高い目標こそが、技術を進化させるからです。楽な道を選ばず、顧客にとって本当に必要なものを追求し続ける。社員の多くが音楽やDJ文化を愛しており、その文化を支える誇りがあるからこそ、困難な目標にも挑戦し続けられるのです。

ーー経営者として、リーダーシップとはどのようなものだとお考えですか。

片岡芳徳:
リーダーシップとは、大きな志や夢を従業員に見せ、共感してもらうことだと考えています。社長に就任してから他社の経営者の話に触れ、意識が変わりました。謙遜しがちな日本人ですが、世界で勝つためには、自分たちの夢や野心、そして誇りを強く打ち出していく必要があると思っています。

DJの枠を超え「音楽で人をつなぐ」 AlphaThetaが描く未来

ーー社名を「AlphaTheta」へ変更された背景と、今後の展望をお聞かせください。

片岡芳徳:
以前の社名、Pioneer DJ株式会社には、DJ専門という印象が強いですが、事業はすでにその枠にとどまりません。現在の社名、AlphaThetaという名前は、最高のパフォーマンス時に発せられる脳波に由来しています。音楽は人々の感覚を研ぎ澄ませ、インスピレーションに満ちた状態へと導きます。私たちは、音や音楽を作る上で革新的な技術を駆使し、至高の瞬間を創造することを目指しています。ミッション「One Through Music – 音楽で人をつなぐ」のもと、社員の熱意から生まれた音楽制作機器やダンサー向けアプリ、さらにAI活用など、新しい価値創造に挑戦していきます。

ーー最後に、これからの時代を担う若手エンジニアや、ものづくりを志す学生に向けてメッセージをお願いします。

片岡芳徳:
私が重視していることのひとつは、愚直な前向きさです。言われたことをそのままやるのではなく、「なぜこれが必要か」と本質を自問自答し、納得してやり遂げる執着心が重要だと考えています。疑問に思っても「どうにかしてやってみよう」と考える前向きさは、一つの才能と言えるでしょう。自分の中で消化し、道を切り拓いていける人と一緒に、新しい未来をつくっていけると嬉しいです。

編集後記

エンジニアとしての原体験から生まれた「顧客の熱狂を追求する」という信念。それは、片岡氏の言葉の端々から確かな熱量を持って伝わってきた。同社の強みは技術力だけでなく、音楽への敬意と「やるべきこと」を追求する真摯な姿勢にある。ミッション「One Through Music – 音楽で人をつなぐ」のもと、変化を恐れず挑戦を続ける同社は、これからも世界の音楽シーンを革新し続けるだろう。

片岡芳徳/1971年、栃木県出身。茨城大学工学部卒業後、パイオニア株式会社に入社し、DJ事業の立ち上げにエンジニアとして従事。その後、米国駐在し米州の販売・マーケティング責任者を経て、2015年3月、事業分割によりPioneer DJ株式会社として事業独立と同時に米国販売会社のPresidentとして勤務。2020年1月より、社名をAlphaTheta株式会社に変更、代表取締役社長に就任。現在に至る。