
SOMPOグループのインシュアテック企業として、デジタルの力で保険に新たな価値を創造するMysurance株式会社。同社は、Eコマースサイトに保険商品を容易に組み込める技術「Tag-in(タグイン)」を開発。近年では国内大手OTAや航空会社とも提携し、シームレスな保険加入体験を実現している。さらに、旅行やスマートフォン、不動産、自動車など多様な領域で商品を展開している。チャレンジ精神を胸に、大手損害保険会社でキャリアを積んできた代表取締役社長、清水廣臣氏に、同社が目指す未来と事業の核心について話を聞いた。
ヨット部で培った一番を目指す精神がビジネスでの挑戦心の原点
ーー社会人としてのファーストキャリアはどのようなものでしたか。
清水廣臣:
大学時代は体育会のヨット部に所属しており、集大成である4年生の時期はヨットに注力したかったため、就職活動の時期が比較的早い金融機関を志望していました。銀行や証券などさまざまな分野があるなかでも、自動車や建物といった生活の身近なリスクを扱う損害保険業界に興味を持ちました。数ある損害保険会社のなかでも、当時私が入社した安田火災海上保険株式会社(現:損害保険ジャパン株式会社)は、業界2位でありながら常に新しいことに挑戦する社風が魅力的で、チャレンジして一番を目指せる環境が自分に合っていると感じ、入社を決意しました。
ーーそうした挑戦心や向上心の原点は、何にあるとお考えですか。
清水廣臣:
高校時代までの10年間はサッカーをしていたのですが、大学から始めても日本一や世界を目指せるスポーツをやりたいと考え、ヨット部に入部しました。ヨットは大学から始める人が多く、努力次第ではオリンピックにも出場できるチャンスがあります。朝から晩まで海上でトレーニングを続ける中で、「どうせやるなら、心からワクワクできることに全力で取り組みたい」という価値観が、自分の中に深く根付きました。その姿勢は、今も仕事のスタンスそのものだと感じています。
営業現場とデータ分析の知見を武器に 事業成長を加速させる
ーー貴社の社長へ就任されるまで、どのようなご経験を積まれてきたのでしょうか。
清水廣臣:
入社後11年間は、福岡と千葉で営業に従事し、主に自動車ディーラーや保険代理店の販売支援を担っていました。特に保険専業の代理店さんに対して経営コンサルティングのような支援を行う中で、代理店のみなさんの特性に合った「売れる仕組み」を一緒に見いだすことに面白さを感じる日々でした。その後、お客さまやマーケットのことをより深く知りたいという思いから、「ドリームチケット」という損保ジャパンのFA制度を利用してマーケティング部門へ異動しました。配属後はマーケット動向分析チームに所属し、約2,000万人の顧客データと向き合いながら、お客さまを知るための分析を行いました。営業現場で抱いていた仮説を、データで検証していく経験は非常に刺激的でした。その後、デジタルマーケティング業務にも携わることになったのですが、Webサイトのデザインやメールの件名の工夫ひとつでお客さまの反応が劇的に変わる点に衝撃を受け、お客さまの行動がリアルタイムに分かる面白さやその技術を学べたことが、その後のキャリアにおいても大きな経験となっています。
ーーその後、どのような経緯で社長に就任されたのでしょうか。
清水廣臣:
マーケティング部門でキャリアを積んだ後、新規事業部門の立ち上げに参画しました。その後、全社マーケティング戦略を企画する部門に復帰したタイミングで、Mysuranceの社長に就任しました。
Mysuranceは、私が新規事業部門にいた頃に立ち上がった会社であり、その成長のプロセスを間近で見てきたため、驚きこそありましたが、親しみのある会社だったこともあり、大きな喜びを感じました。
就任当時のMysuranceは、創業フェーズから成長フェーズへと移りつつある段階で、累計契約件数は150万件を超え、協業するアライアンスパートナーも数十社に拡大している状況でした。この成長の勢いをさらに加速させつつ、収益基盤やガバナンスを整え、持続的に成長できる企業へ進化させていくことが求められている中で、これまで培ってきたデータ分析やマーケティングの知見を活かし、会社を次のステージへステップアップさせることが、私に期待されているミッションなのだと認識しています。
API開発は不要で実現するEC時代の新たな保険体験

ーー貴社ならではの強みについて詳しくうかがえますか。
清水廣臣:
事業面での最大の強みは、私たちが開発した「Tag-in」という技術です。これは、パートナー企業のEコマースサイトにお客さまが入力した情報を保険の申し込み画面に連携できる技術です。従来必要だったAPI開発(※)が不要になるため、開発リソースやコストを極小化し、スピーディーにエンベデッドインシュアランス(組込型保険)を実現できます。この仕組みは特に旅行業界で高く評価されており、最近ではANAトラベラーズ 海外ダイナミックパッケージおよび海外パッケージツアーの予約サイトにもご採用いただきました。今後はこの「Tag-in」の技術を、すでに商品展開しているスマホ保険や賃貸物件入居者向けの火災保険などの領域にも横展開し、新しい顧客体験を創っていきたいと考えています。
また、こうしたユニークな商品を生み出し続けられる組織体制も、もう一つの大きな強みです。弊社では全員が、商品開発の担当者でありお客さま対応の責任者でもあるという意識を持っています。部門の垣根を越えてプロジェクト単位で集まり、権限を委譲してスピーディーに意思決定を行う文化が、お客さまの課題解決につながる開発を実現しています。
(※)API開発:Application Programming Interfaceの略。ソフトウェア同士をつなぐ接点のことで、システム連携を行うための開発作業。
ーー最後に、貴社の今後のビジョンについてお聞かせいただけますか。
清水廣臣:
私たちは、「保険に新しい価値を。お客さまに新しい体験を。そして世の中をもっとスマートに。」というミッションを掲げ、デジタルの力で保険をもっと分かりやすく、シンプルで身近なものにしていきたいと考えています。今後、Eコマースはあらゆる業界でさらに拡大していくことが見込まれます。私たちはその変化の先頭に立ち、ユニークな商品をお届けし続けることで、インシュアテック企業といえばMysuranceと言われるような存在を目指します。従業員やパートナー企業のみなさまと共に、これからもワクワクしながら新しいチャレンジを続けていきたいです。
編集後記
学生時代から常にワクワクすることを追い求めてきた清水氏。そのチャレンジ精神は、インシュアテックという領域で新しい価値を創造する原動力となっている。Eコマースの裏側にシームレスに溶け込む「Tag-in」技術は、保険のあり方を根底から変える可能性を秘めている。顧客体験を第一に考え、全員で事業を創りあげる組織文化こそが、同社の躍進を支える核心である。

清水廣臣/1978年、愛媛県出身。2001年関西学院大学商学部卒業後、安田火災海上保険株式会社(現:損害保険ジャパン株式会社)に入社。営業部門・新規事業開発部門・マーケティング部門を経験し、2025年4月より同社代表取締役社長に就任。成長期に入ったMysuranceのさらなる飛躍を牽引する。