※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

特定の地域に集中して店舗を出店する戦略で、神奈川県を中心に「アジアンビストロ Dai」などの人気店を次々と生み出してきた株式会社プレジャーカンパニー。コロナショックの苦境も乗り越え、現在は「2028年に50億、将来的には売上100億円」という壮大なビジョンを掲げる。その実現に向けた切り札は、M&Aによる事業再生と、ホールディングス化による「社長ポスト」の創出だ。かつて24歳のとき、同い年の店長が年収2000万円を稼ぐ姿に情熱のスイッチが入った代表取締役の望月大輔氏。数々の成功体験を経た望月氏が描く、人が育ち、企業が永続するための組織論について、話をうかがった。

成果主義の果てに気づいた「人が育つ組織」の重要性

ーー社会人としての最初のキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

望月大輔:
大学在学中にアメリカに留学、ワーキングホリデーでオーストラリアに2年滞在した後、株式会社グローバルダイニングに入社しました。入社後、私と同い年である24歳の店長が、すでに年収2000万円を稼いでいる事実に大きな衝撃を受けました。

当時の社長はよく会社をメジャーリーグに例え、「会社に年功序列はない。プロとして成果を出せば、年齢に関係なく給料で報いる」と語っていました。その言葉通り、20代という若さでも結果を出せば評価される現実を目の当たりにして、「自分もこうなりたい」とスイッチが入りましたね。そこから「2年で店長になる」と目標を決め、がむしゃらに働きました。

ーーそこから独立された経緯についてお聞かせください。

望月大輔:
エリアマネージャーになり30歳を過ぎたころ、会社の方針と私自身の理想とする会社像に乖離が生じ始めました。当時、会社は低価格路線へと舵を切ろうとしていました。しかし、私は「最高のエンターテインメントを提供するレストラン」という本来のブランド価値を守るべきだと確信していたのです。

「それなら自分で理想の店をつくろう」と考えていたとき、現在の副社長から「一緒にやれば、もっといい店がつくれる」と熱い言葉をかけられ、独立を決意しました。

当初は資金も乏しく、たまプラーザにある築40年、17坪の物件からのスタートでしたが、勝算はありました。都心へ出向かずとも、クオリティの高いアジアンビストロがあれば、地元の住宅街に住む富裕層の方々に必ず支持されると分析していたからです。34歳、退路を断っての挑戦でした。

ーー経営するうえで、最重要視されていることは何ですか。

望月大輔:
「人」を大切にすることです。現在は年に2回、私自身が全社員約130名と個別に面談を行っており、これは7年ほど継続している取り組みです。面談では、半年後の目標や将来の展望、時には会社への不満まで、膝を突き合わせて語り合います。社員の主体性を引き出し、彼らの人生設計と会社の成長ベクトルを合致させることが、現在の私の最大の責務だと考えています。

この取り組みを始めたきっかけは、尊敬する株式会社ワンダーテーブルの秋元社長(現・会長)からの教えでした。成果さえ出せばいいという考えに偏っていた時期もありましたが、秋元社長から「経営理念だけでは古い、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)が重要だ」と説かれ、トップ面談の手法も取り入れました。こうした対話を通じて組織を筋肉質に鍛え上げることが、結果としてお客様に感動を提供し続ける力の源泉になると確信しています。

ホールディングス化は次世代リーダーへの招待状

ーー今後の成長戦略について教えていただけますでしょうか。

望月大輔:
2028年までに50億、将来的には売上高100億円企業を目指しています。この目標を達成するための要となるのが、ホールディングス化です。ただし、これは単なる管理機能の強化や組織再編ではありません。真の目的は、共に成長してきた信頼できる幹部たちに「社長」というポジションを用意することにあります。

現在、社内にはいつでも経営を担える能力を持った人材が育っています。彼らが単なる事業部長に留まるのではなく、子会社の社長として決裁権を持ち、経営の舵取りを行う。活躍のフィールドを広げることが人材の定着を促し、結果としてグループ全体の拡大に直結すると考えています。

ーー今後の出店戦略についてもお聞かせください。

望月大輔:
昨今は建築資材の高騰により、何もない状態から店舗を作るリスクが高まっています。そこで注力しているのが、独自のネットワークを通じて得る、市場に出回らない良質な情報を元にしたM&Aです。たとえば、後継者不足や一時的な経営難で譲渡を検討している店舗を適正価格で引き継ぎ、弊社のノウハウを注入して再生させる。この手法であれば初期投資を抑えつつ、早期の黒字化が実現できます。

また、銀座で取得した焼肉店のように、インバウンド需要を確実に取り込める高収益モデルの構築も進めています。既存のドミナント戦略に加え、こうした高収益店舗を飛び地的に展開していく計画です。

フィリピン進出を起点にアジア市場での収益基盤を確立

ーー海外展開について、具体的に教えていただけますでしょうか。

望月大輔:
現在はフィリピン、特にマニラへの進出を計画しています。欧米への出店も選択肢としてありますが、コストや撤退リスクを考慮すると、まずはアジアで足場を固めるべきだと判断しました。

フィリピンは人件費が日本の5分の1程度と低く、堅実に売上を作れば営業利益率で30%超えを狙える魅力的な市場です。現地ですでに実績を持つ信頼できるパートナーと合弁会社を設立し、リスクを最小限に抑えつつ展開します。まずは焼肉やラーメンといった「日本の食」の強みが発揮できる業態から着手し、アジア市場での収益基盤を確立する予定です。

ーー最後に、これからの時代を担う若い世代へメッセージをお願いします。

望月大輔:
20代、30代のうちは、とにかく死ぬ気で仕事に向き合ってみてください。その時期にどれだけ密度の濃い時間を過ごし、経験という財産を蓄えられるかで、40代以降の人生が決まります。近年は安定やワークライフバランスが重視される傾向にありますが、若いうちに流した汗は、決して裏切りません。自分の可能性に蓋をせず、ハングリーに挑戦を続けてほしいと願っています。

編集後記

かつては徹底した成果主義の世界に身を置き、若くして成功をつかんだ望月氏。しかし、そんな同氏が、いま最も熱を入れているのが「全社員との対話」であるという事実は興味深い。ホールディングス化による社長ポストの創出も、M&Aや海外展開も、すべては「育った人材が活躍できる場所を作るため」という一貫した論理に支えられている。100億円企業への道は、多くの社長たちと共に歩む、活気あふれた挑戦になるだろう。

望月大輔/1975年山梨県甲府市生まれ。小中高はサッカーに打ち込み、亜細亜大学在学中にアメリカに留学。大学卒業後はワーキングホリデーでオーストラリアに2年滞在。帰国後2000年に株式会社グローバルダイニングに入社し、お台場モンスーンカフェ、たまプラーザモンスーンカフェのマネージャーをした後、エリアマネージャーに就任。2010年同社を退社し、2010年2月に株式会社プレジャーカンパニーを設立。