
全国21拠点に根を下ろし、地域に密着したITサポートで中小企業や自治体、学校を支え続ける株式会社内田洋行ITソリューションズ。同社を率いる代表取締役社長の内藤祐介氏は、システム開発から現場の最前線へと役割を変える中で、「顧客起点」という揺るぎない信念を築き上げてきた。同氏が掲げるのは、AI時代にお客様の「本当の右腕」となる変革組織だ。システム開発、納品で終わらせることなく、持続的に企業の成長を支え続ける伴走型パートナーシップとは何か。その原点と、今後のビジョンをうかがった。
開発一筋から一転、現場に足を運び続け培った「顧客起点経営」
ーーまずは、これまでのキャリアの原点について教えてください。
内藤祐介:
親会社である内田洋行に新卒入社した私は、約11年間、オフィスコンピューター向けの建設業パッケージシステムの開発部隊に所属していました。当時の上司がまさに「建設業のプロ」で、建設業向けのシステム開発を進めるにあたり、常に、一本筋の通ったコンセプトやビジョンを持ち続けることの重要性を徹底的に叩き込まれました。
このように開発部門で経験を積んできましたが、突然もらった辞令で私は開発を離れ顧客対応の最前線へ身を置くこととなったのです。配属先では、弊社にとって非常に大きな取引先であった道路会社のプロジェクトリーダーを担当することになりました。
ーー開発から現場のリーダーへの環境の変化はいかがでしたか。
内藤祐介:
初めてのことばかりで最初は不安も大きく、営業的な側面とSEとしてプロジェクトマネジメントの両方を求められ、相当困惑しました。しかも、私が着任するタイミングで、前任の営業課長とSEリーダーの双方が外れるというお客様からしてみれば大きな変化があったのです。新しく担当をさせていただく私への期待は大きかったと思います。しかし、私はシステム開発の経験はあっても、そのお客様の業界や個別のプロジェクトのことは全く分かっていませんでした。着任して早々、お客様のトップから「もっとできるやつだと思っていたのに期待外れだった」と厳しい言葉を突きつけられました。あのときは本当に悔しい思いをしたものです。
ーーそうした挫折から、どのようにして信頼を回復していかれたのですか。
内藤祐介:
お客様のことを分かっていないことが一番の課題だと考え、まずは徹底的にお客様を知るということをテーマに、とにかくお客様の元へ日参することに決めました。当時、並行して動いていた30ほどのプロジェクトのミーティングすべてに顔を出し、先方のプロジェクトに深く入らせてもらうことで必死に学びました。
そのように現場に足を運び、自らの理解を深めると同時に、チームのメンバーに対しても変化を促しました。「自分の担当プロジェクト以外でも、周りが何をしているのかに興味を持とう!横のチームの状況を知ろう!」と働きかけ、チーム全体でお客様の全体像を把握するよう努めたのです。
こうした日々を数年積み重ねたことで、「お客様を中心に考えて動く」という意識がチームの中でしっかりと浸透していきました。この現場での体験が、「お客様を大事にする」という私の信念となり、今も最も大切にしている「顧客起点」の考え方のベースにつながっているのだと思います。
21拠点の強みを活かし地域企業の「本当の右腕」へ

ーーどのようにして貴社の経営に携わることになったのでしょうか。
内藤祐介:
2011年、株式会社内田洋行の情報関連事業分野のグループ会社7社を東西2社に再編・統合し、弊社が設立されたのですが、私は当時東日本を担当する役員に就任しました。その後、一旦、内田洋行の開発部門へ戻りましたが、一昨年再び弊社に戻り、昨年社長に就任しました。会社が合併を経て大きくなっていく中で、私が一番に取り組むべきテーマは、若い頃に現場で学んだ「顧客起点のビジネス」を組織全体により一層浸透させ、磨き上げていくことだと考えています。
ーー貴社の特徴や最大の強みはどこにあるとお考えですか。
内藤祐介:
最大の強みは全国に21の拠点を持ち、個々の地域に密着した活動を展開している点です。地方の民間企業はもちろん、自治体や学校といった個々のお客様との信頼関係を大切にし、ITをベースに経営のご支援をさせていただいています。
また、お客様に本当にご納得していただけるサポートを提供するために、自社ならではの強みを持ちたいと考えています。そこで現在は「食品業」と「建設業」の2分野を重点業種と定め、専門プロジェクトを立ち上げています。全国の拠点で蓄積された商談やサポートの成功事例を単に共有するだけでなく、「なぜうまくいったのか?」「お客様の求めるものは何か?真のニーズは何だったのか?」と深く追求することで、お客様により一層お役に立てるスキル、ノウハウの獲得に取り組んでいます。
ーー製品面での特徴についても詳しくお聞かせください。
内藤祐介:
民間企業向けの基幹業務システム「スーパーカクテル」シリーズや建設業ERPシステム「PROCES.S(プロセス)」を軸としながら、近年特に注力しているのが自社開発のクラウド型マイクロサービスである「UC+(ユクタス)」シリーズです。これは、電子帳簿保存法やインボイス制度などの法改正やお客様固有の課題に合わせ、柔軟に機能を拡張できるサービスです。はじめから完成形をご提供するのではなく、いくつかの機能や段階に分け、まずはスピーディーに必要な機能をご提供することで、お客様の声を聞きながら拡充していく開発手法をとっています。
このように個別の課題に寄り添うアプローチは、私たちが強みとして掲げる「顧客起点」の考え方と非常に親和性が高いものです。「UC+(ユクタス)」シリーズの企画・開発を担う専門部隊を設置し、変化の激しい時代におけるお客様の業務継続を力強く支えています。
労働人口減少の時代を迎える中で必須となる「データ活用」と今後のビジョン
ーー5年後、10年後を見据え、どのような会社を目指していますか。
内藤祐介:
私たちが目指すのは、環境が大きく変化する中、あらためて「お客様を知る」ことと「高度な技術力」を持って、個々のお客様の課題解決に役立つ価値を提供できる企業です。これからの日本全体が直面する最大の課題は、少子高齢化とそれに伴う労働人口の減少です。その中で、私たちITベンダーの役割も大きく変わります。これまでのように、基幹業務をサポートするシステムを提供するだけでは不十分です。
これからは日々の業務から蓄積された「全てのデータ」をいかに経営に役立てていくか、つまり「データの活用」が企業存続の鍵を握ります。人口が減少していく中で効率よく着実に経営を進めるために、AIやデジタルなどの最先端技術を駆使してデータを活用することが求められます。個々の企業の経営の羅針盤を作り、経営判断につながるご支援を進めて行きたいと思います。
ーーAIを活用する上で、クリアすべき課題はあるのでしょうか。
内藤祐介:
弊社のお客様の中には、20年、30年と基幹データを蓄積されている企業が数多くいらっしゃいます。そうしたお客様の基幹データを有効に活用するためには蓄積されたデータのクレンジングが必要となります。
AIは間違いなく強力なパートナーですが、重要なのはそれを「正しい方向」に向かわせ真のパートナーにすることです。クレンジングされたデータを基に解析させる仕組みを構築し、お客様が最適な経営判断を行えるようサポートしていきたいと考えています。
ーー最後に、今後の意気込みをお聞かせください。
内藤祐介:
重要なのは、私たちがお客様の「本当の意味での相談相手」であり、トップの「右腕」になっていかなければならないということです。ITの分野において私たちはプロフェッショナルですから、その立場で「こうすべきではないか」と経営に踏み込んだ提案ができなければなりません。新規のお客様を開拓することはもちろん大切ですが、契約はゴールではなくスタートです。そこからいかに長く継続的なリレーションシップを築き、お客様の成長と私たちの成長を融合させていくか。これまでの歴史の中で培った顧客起点の精神を胸に、社員一人ひとりの声を取り入れながら、新しい時代のITソリューションズをつくり上げていきます。
編集後記
システム開発から現場の最前線へといった経験をもとに、顧客と真正面から向き合い続けた内藤氏。そのエピソードから「顧客起点」という言葉の真の重みを感じた。AI活用が急務となる中、システムを導入して終わりではなく、そこで生まれるデータを経営に活かすための「右腕」となる存在は、多くの中小企業にとって不可欠である。地域に密着し、真のパートナーシップを追求する同社の挑戦は、労働人口減少という社会課題に直面する日本企業を力強く導いてくれるに違いない。同社のさらなる飛躍に注目していきたい。

内藤祐介/1962年、神奈川県出身。1984年明治大学政治経済学部卒業後、内田洋行に入社。2005年ソリューションサービス部長に就任後、同社のソリューション営業部長やプロダクト開発部長を務め、グループ関連会社の取締役常務執行役員、代表取締役社長などを歴任し、2025年7月、内田洋行ITソリューションズ代表取締役社長に就任。