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2005年の創業以来、デジタル素材のマーケットプレイスとしてクリエイティブ産業を支えてきたピクスタ株式会社。多額の赤字を抱えた創業期を乗り越え、現在は出張撮影事業をはじめとする「ビジュアルプラットフォーム」へと進化。近年はものづくり体験店舗事業も買収し、多角化を加速させている。クリエイターの才能を社会とつなぐべく歩みを進める代表取締役社長の古俣大介氏に、これまでの軌跡と未来の展望を聞いた。

創業期の苦難と逆境を乗り越えた「仕組み」の刷新

ーーピクスタを立ち上げた経緯から教えてください。

古俣大介:
学生時代から個人事業を手がけるなかで、クリエイティブ分野での事業創出を模索していました。転機となったのは2000年代前半、デジタル一眼レフカメラの普及です。アマチュアでも高品質な写真を撮影できるようになった半面、その作品を発表し、社会で活かす場が圧倒的に不足していました。この非対称性を解消し、個人の才能や情熱をインターネットを通じて社会と結びつけたい。そう考え、2005年9月に起業、翌2006年に写真・イラスト・動画・音楽等のデジタル素材マーケットプレイス「PIXTA」のサービスをリリースしました。

ーーサービス開始直後の反響はいかがでしたか。

古俣大介:
船出は平坦ではありませんでした。サイトへの投稿数は増えるものの、肝心の買い手がつかず、月の売上高は数十万円にとどまる日々。毎月400万円の赤字が積み上がるなか、リーマン・ショックが直撃しました。資金調達の道も絶たれ、個人の借入で事業資金を補填する極限状態が続いたのです。

創業10年での上場と試行錯誤を経て次なる柱『fotowa(フォトワ)』へ

ーーその窮地から、どのように事業を立て直したのですか。

古俣大介:
潮目が変わったのは、サービス開始から約3年後です。売れない原因と正面から向き合い、買い手が求める素材に素早く到達できるよう仕組みを根本から見直しました。具体的には、需要に合わない素材を弾く厳格な審査制の導入や、価値の高い写真が上位に表示される検索ロジックの改善です。

さらに、需要の多い「人物写真」を拡充するため、自社でモデルやスタジオを手配し、クリエイターに撮影を委託する企画も開始しました。折しもリーマン・ショックの影響で副業を求める投稿者が急増し、同時に企業の広告費削減によって安価な写真素材への需要が拡大。私たちが整えた仕組みと時代の変化が噛み合い、売上高が伸長しました。

ーーその後の事業拡大の歩みについてお聞かせください。

古俣大介:
専門的な知見を持つ取締役陣の参画によって組織体制が強固になり、2015年、創業から10年で上場を果たしました。上場後は海外展開や新規事業へ積極的に投資し、そのなかでも特に注力してきたのが、家族・子ども向け出張撮影サービス『fotowa(フォトワ)』や法人向けカメラマン手配・出張撮影サービス『PIXTAオンデマンド』、総合撮影代行サービス『PIXTAカスタム』などの撮影事業の立ち上げです。

才能をつなぐプラットフォームの確立と すべての才能が活かされる未来へ

ーー現在の事業の強みと、今後の新たな展開について教えていただけますか。

古俣大介:
最大の強みは、約68万人に上る顧客アカウントと、弊社の理念に共鳴して集まったクリエイターの基盤です。サービス開始から20周年を迎える本年、この両者を掛け合わせ、素材販売のみならず全国どこでも高品質な撮影を提供する「ビジュアルプラットフォーム」としての成長を確かなものにしています。

また、写真という領域を超えた新たな一手として、2025年10月に『YASUMI WORKS』を買収しました。同社はアクセサリーや陶器づくりといった「ものづくり体験店舗事業」を展開しています。近年高まる実体験への需要に応える事業であり、個人の手仕事や才能を活かし、社会へつなげるという私たちの理念と深く結びついているため、グループ入り後も順調に業績を伸ばしています。

さらに2026年3月には、AIアニメ投稿サイト『Anipops(アニポップス)』を新たにリリースしました。AIを活用して「個人がアニメスタジオになる」時代を見据え、動画やアニメーションといった新しい表現領域においても、才能の開花を強力に後押ししていきます。

ーー最後に、経営者として貫く信念と、今後のビジョンをお聞かせください。

古俣大介:
最も大切にしているのは「決してあきらめずにやり抜く」という姿勢です。創業期の負債や幾多の壁を乗り越えてこられたのも、歩みを止めなかったからに他なりません。

今後の展望として、写真やものづくりに留まらず、あらゆる分野で埋もれている才能に光を当てていきます。自己実現や活躍の場を社会の隅々まで提供し、5年後、10年後には「すべての才能が活かされている事業の集積体」をつくり上げる。それが、私たちが目指す未来の姿です。

編集後記

毎月数百万円の赤字や個人の借入という限界状況にあっても、古俣氏は決して歩みを止めなかった。買い手の利便性を追求した緻密なサービス改善が、事業を飛躍させる起爆剤となったことは想像に難くない。クリエイター基盤という確固たる強みを軸に、写真素材から『fotowa(フォトワ)』、『PIXTAオンデマンド』『PIXTAカスタム』そして『YASUMI WORKS』を通じた新たな体験価値の創造へ。「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」という揺るぎない理念のもと、ピクスタのさらなる飛躍に期待が高まる。

古俣大介/1976年生まれ。多摩大学在学中にコーヒー豆や古着のEC販売を開始。大学4年次に株式会社ガイアックスへインターン入社後、独立。2003年に美容健康グッズのEC事業を立ち上げ、2年で売上高1億円に成長させる。2005年にデジタルフォト事業としてピクスタ株式会社の前身・株式会社オンボードを設立。2015年東証マザーズ上場、現在は東証スタンダード市場上場。海外法人のDirector・会長も務める。