※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

創業時のIT不況を商店街への果敢な飛び込み営業で乗り越え、現在は先進的なXR(クロスリアリティ)技術を用いて海外からも高い評価を受けている株式会社USEYA。従来の受託開発の枠を超え、スマートグラスを活用した技能伝承システム「SHUGI(手技)」など、現場の課題を解決する独自のソリューションを次々と展開している。代表取締役である大子修氏に、起業の原点から営業時代、そして世界を見据えた今後の展望について詳しくうかがった。

使われていないシステムへの悔しさが起業の原点

ーーまずは、IT業界に進まれた経緯と独立までの歩みについて教えていただけますか。

大子修:
大学時代に情報工学を学んでいたこともあり、もともとIT業界には強い関心がありました。新卒でソフトウェア会社に入社し、エンジニアとして勤務します。会社員時代は朝から晩まで働き、「これ以上きついことはない」と思えるほどの激務でしたが、その時の経験でメンタルが鍛えられたと感じています。その後、若気の至りというか少し天狗になっていた部分もあり、エンジニアとして3年働いたところで会社を辞め、フリーランスとして独立しました。

ーーそこから法人化し、貴社を創業された理由は何だったのでしょうか。

大子修:
大きなきっかけは、フリーランス時代に1年近くかかってつくったシステムが、納品後にお客様先で全く使われていないのを目の当たりにしたことでした。営業と技術の認識のズレなどが原因だったのですが、作り手としてはそれが本当に悲しくて悔しかったのです。「お客様にきちんと使い続けてもらえるシステムをつくりたい」と強く思い、起業を決意しました。

創業時には7人の友人が協力してくれました。そのうち4人は、それぞれ別の企業に勤める外部の人間でしたが、利害関係なしに私の独立を応援してくれたのです。「一緒に創り上げる仲間を大切にする」という経営理念は、この時から変わっていません。

IT不況のどん底から商店街への飛び込み営業で道を切り拓く

ーー創業当初はどのようなご苦労がありましたか。

大子修:
創業した時期はリーマンショックの影響によるIT不況の真っ只中でした。仕事が全くなく、はじめは資金繰りも本当に大変な、ゼロからのスタートです。そこで開発エンジニアだった私は営業未経験のまま、各所の商店街に飛び込み営業をかけました。「ホームページをつくりませんか」「レジのシステムをつくりませんか」と一件一件地道に足を運んだのです。

当初は断られることもあり、本当に大変な毎日でした。それでも何度も訪問するうちに、少しずつ仕事を任せていただけるようになり、着実に取引先を開拓していったのです。代理店を挟まず、エンドユーザーであるお客様と直接お話しできる関係を築けたことは、結果的に今の会社の強みになっています。

ーー受託開発から、自社独自のサービスを生み出した経緯を教えてください。

大子修:
創業後はホームページの制作などで実績を積み重ねてきましたが、他社と同じことをしていても価格競争に巻き込まれるだけだと感じていました。そこで、「他には真似できない独自の強みをつくりたい」と考えたことが、今の事業を始めたきっかけです。そこで、2013年頃から当時は国内で誰も手がけていなかったXR技術やスマートグラスに着目しました。もともと先端技術が好きだったという遊び心から始まったのですが、「これは絶対に将来役に立つ技術になる」という強い信念があり、早くから試行錯誤を続けてきました。

言葉と距離の壁を越える!技能伝承システム「SHUGI」の世界展開

ーー改めて、事業内容と具体的なサービスについてお聞かせください。

大子修:
現在はシステムの受託開発に加え、熟練技能者の手の動きをAIとXRで解析・可視化し、学習者の動作と重ね合わせて技能を伝承する、技能伝承システム「SHUGI(手技)」を展開しています。これは、熟練者の手の動きを記録し、スマートグラス上で自分の動きと重ね合わせて練習できるシステムです。言葉だけで凄さを伝えるのは難しいため、実際に技術を体験できるショールームとしてラボも開設しました。ありがたいことに直近ではその実用性が評価され、海外でも複数の賞をいただけるようになりました。

ーー海外展開を見据える中で、組織づくりや採用についてはどのようにお考えですか。

大子修:
弊社には現在、フランス出身のスタッフなど複数の外国籍メンバーが在籍しており、性別や国籍を問わず多様な人材が活躍しています。海外からのインターンシップをきっかけに入社に至るケースもあり、非常にレベルの高い技術者が集まってくれています。

今後は事業の急成長に伴い、技術力はもちろんですが、特にお客様と対話しながらプロジェクトを動かせるマネジメント層の仲間を増やしていきたいと考えています。現場の課題を深く理解し、弊社の技術を正しく届ける体制を整えることで、さらなるキャパシティの拡大を目指します。

ーー最後に、今後の展望についてお話いただけますか。

大子修:
「SHUGI」は製造業にとどまらず、飲食業や医療関係などいろいろな業界に活用できると考えています。今後は、中東やヨーロッパなど海外市場へのグローバル展開に注力していきます。スマートグラスを使えば言葉の壁も越えられますし、リモートでの技能伝承により距離の壁も越えられます。言葉や距離といった壁を超越した技能習得の仕組みを提供し、USEYAの技術が世界中で役に立つ状態をつくっていくことが、私の大きな目標です。

編集後記

「つくったシステムが使われていない」という強い悔しさが、使い続けられる真の価値を生み出す原動力となった大子氏のストーリー。IT不況下での泥臭い飛び込み営業という原体験が、現在の顧客に寄り添う開発姿勢を支えている。誰も手をつけていなかった時代からXR技術に挑み続け、今や海外でも高く評価される同社。「役に立つ」を追求し、言葉や距離の壁を越えて新たな技能伝承の形をつくり出す。その挑戦の先には、日本発の技術が世界を変える未来が広がっている。

大子修/1979年大阪府堺市生まれ。2002年ソフトウェア会社にSEとして入社。2008年、友人3名と株式会社USEYAを設立し、代表取締役に就任。2013年スマートグラスとXR技術のシステム開発に取り組み開始。2022年ドバイ法人USEYA-FZCOを設立。2024年、国内外でXR技術に関する技能伝承で数々の受賞。2025年、大阪公立大学スーパーシティ研究センター客員准教授に就任。