
「遊び」や「楽しさ」という、世界で最も数値化しにくい領域。そこに冷徹なまでのデータ分析と、独自のマーケティングロジックを持ち込んだ男がいる。株式会社ドリームワンエンターテイメントを率いる永井隆嗣氏だ。支援先の企業を十数年間にわたり連続増収へと導き、エンターテインメント業界から物販、遊戯業界まで席巻する同社。かつてゲーム業界の「勘と経験」の壁に挑み、組織のピラミッドの中で葛藤した永井氏がいかにして「勝てる仕組み」を構築したのか。その裏側にある合理性と、次代を見据えた熱きビジョンに迫る。
組織の壁に阻まれた「確信」を、自らの手で形にするために
ーーまずは起業に至った経緯についてお聞かせください。
永井隆嗣:
一言で言えば、組織というピラミッドの中で感じる「もどかしさ」でした。私は前職のゲーム関連会社でマーケティングを担当していましたが、現場では魅力的なコンテンツを作ることが最優先で、マーケティングは常に後回し。どんなに「こう分析すれば、もっと伸びる」という案があっても、組織の優先順位という壁に阻まれ、実現できない日々が続いたんです。
「自分の提案したマーケティングで、会社が劇的に伸びていくスタイルを証明したい」。その情熱が、安定した組織を飛び出す原動力になりました。
ーー起業後、その手法が「正解」だと確信された瞬間はいつでしたか。
永井隆嗣:
最初に手がけたリサイクルショップの支援です。当時はまだ運営ノウハウが確立されていなかったリサイクルショップ業界に、ゲーム業界で培ったロジックを注ぎ込みました。その会社様はこの十数年間、一度も止まることなく右肩上がりの成長を続け、今や業界を代表する専門店へと飛躍されています。
エンタメも物販も、本質的な「売れるノウハウ」を抽象化すれば他業種にも応用できる。この成功体験が、私たちの第一歩となりました。
「提案」と「供給」を分かつ 実行力という名の最強の武器

ーー多くの支援企業がある中で、貴社が圧倒的な信頼を得ている理由はどこにあるのでしょうか。
永井隆嗣:
私たちは「提案して終わり」の会社ではないからです。弊社は「提案・商社機能(販売)」と「戦略・現場運営(コンサル)」という、明確に分かれた二つの顔があります。
単にアドバイスするだけでなく、必要な商品を即座に供給できる商社機能まで持っている。このスピード感こそが、クライアントにとっての安心感に繋がっています。「ドリームワンの支援をやめると成長が止まってしまう」とまで仰っていただけるのは、私たちが現場レベルのデータを見て「何が足りないか」を客観的に指摘し、解決策まで実行しきるからだと自負しています。
複雑な課題を「簡単に」解き 日本の強みを武器にアジアから世界へ
ーー経営において最も大切にされている信念をお聞かせください。
永井隆嗣:
「世の中以上のスピードで変化し、常に進化させること」です。ただし、進化した先にある私たちのゴールは、実は「究極のシンプル」なんです。
私たちがどれほど高度で複雑なデータ分析を行っても、現場のスタッフが動けなければ意味がありません。難解な戦略を噛み砕き、現場が「簡単に、効果的に」実行できる手順として手渡すこと。これが私たちの真の提供価値です。現在取り組んでいるAIやBIツール(※)の活用も、すべては「コンサルタントの直感」をシステム化し、誰でも高い勝率を再現できるようにするため。属人性を排除し、より創造的な戦略立案に時間を割ける体制を構築しています。
(※)BIツール:ビジネス・インテリジェンス・ツールの略。企業が持つ膨大なデータを集約・分析し、経営や業務の意思決定に役立てるシステムのこと。
ーー次なるステージとして、どのようなビジョンを描かれていますか。
永井隆嗣:
国内市場の成熟を見据え、アジア圏への進出を加速させます。日本のエンタメコンテンツ、特にアニメの力は、アジア市場で最強の武器になります。そこに私たちのマーケティング手法を融合させれば、これまでにない多業種展開が可能になります。
市場は「与えられるもの」ではなく、「自分たちで作っていくもの」です。たとえば、最近の地方のクレーンゲームで、主婦層に最も人気なのは「卵」や「トイレットペーパー」といった生活用品だったりします。こうした「データでしか見えないニーズ」を掘り起こし、新しい楽しさを提供する。そんなワクワクするような挑戦を、これからも続けていきたいですね。
編集後記
今回のインタビューで最も印象的だったのは、永井氏の言葉に宿る「現場への深い敬意」だ。数値化不可能な領域を「科学」すると標榜しながらも、その先にあるのは現場が迷わず動けるための「簡単」な手順。業界の慣習を打ち破る冷徹な分析力と、クレーンゲームの景品に「卵」を見出すような柔軟な発想。この二つの融合こそが、同社を唯一無二の存在たらしめている正体なのだろう。アジア市場、そしてAI活用。同社が切り拓く「未来の遊び」の景色が、今から楽しみでならない。

永井隆嗣/1956年北海道生まれ。国立釧路工業高等専門学校電子工学科卒業後の1978年に株式会社タイトー入社。2010年、エンタメ業界にも必須なマーケティングの必要性を高める目的で株式会社ドリームワンエンターテイメントを設立し、同社代表取締役に就任。現在に至る。