※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

高精度3次元データを整備し、自動運転からデジタルツインまでを支える基盤を提供するダイナミックマッププラットフォーム株式会社。現在、日本発のデータプラットフォームとして、道路のみならず地球上のあらゆる空間をデータ化するビジョンに向けて歩みを進めている。商社での経験を原点に、外部の投資家視点と内部の経営者視点を併せ持つ代表取締役社長CEOの吉村修一氏に、これまでのキャリアと次世代インフラへの展望をうかがった。

商社からプロ投資家へ 組織の外と内から培った経営視点

ーーキャリアの原点について教えていただけますか。

吉村修一:
私のビジネスの原点は、新卒で入社した三井物産株式会社での日々にあります。約7年在籍し、主にイタリアやドイツ、英国といった欧州に向けた建設機械の輸出貿易や、投資業務に従事しました。当時の職場で特に印象に残っているのは、組織文化の変革を目の当たりにしたことです。単に目先の利益を追い求めるのではなく、組織全体で「”よい仕事”とは何か」を議論し、規律を持ってそれを追求する。社会にとって本当に価値のあるビジネスを、真摯に構築していく姿勢です。このときに学んだ価値観が、現在の私の経営の根幹となっています。

ーーその後プロ投資家へと転身されたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

吉村修一:
日本の産業競争力を高めるために、より広い視野で事業を支援したいと考えたのが理由です。実は株式会社産業革新機構(現・株式会社産業革新投資機構)勤務時代、投資担当者として、弊社の設立にも関わっていました。国と民間が一体となって取り組むこのプロジェクトには、日本の自動車産業の未来を左右する可能性を感じていました。その後、ご縁があって2020年に副社長として弊社に入社し、2022年に代表取締役社長CEOに就任しました。外側から企業を支援する投資家としての客観的な視点と、内側から組織を牽引する経営者としての当事者意識。この両面を併せ持っていることが、迅速かつ多角的な経営判断を下す上での私の大きな武器だと思っています。

26カ国で展開し競合に比べ圧倒的なデータ量 日本発プラットフォームの実力

ーー貴社の事業の強みはどこにあるのでしょうか。

吉村修一:
世界で戦える「日本発のデータプラットフォーム」を構築している点です。現在、私たちはグローバルに高精度3次元データを収集し、世界26カ国で事業を展開しています。保有するデータ量は、競合他社と比較しても圧倒的です。これらのデータはすでに、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)向けの38車種に採用されているのです。高精度3次元データの分野において世界をリードしている実績が、私たちの強みです。

ーーそれほどの規模に成長できた背景には何があるのでしょうか。

吉村修一:
強固な株主および支援体制の存在です。日本政府によるバックアップに加え、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車をはじめとする国内の大手自動車メーカーが共同出資して設立されました。一企業だけでは到底成し得ない「協調領域」のデータ整備です。これをオールジャパンの体制で進められたからこそ、現在の規模まで事業を拡大できました。この盤石な基盤があるからこそ、私たちはさらに先の未来を見据えた挑戦を続けられます。

道路からあらゆる空間へ 現実世界をデータ化し経営人材を育成する

ーー今後のビジョンや展望についてお聞かせいただけるでしょうか。

吉村修一:
自動運転の枠を超え、デジタルと物理空間が融合する社会の新たなインフラとなる。私たちは今、そんな未来を見据えています。掲げているビジョンは「Modeling the Earth」、すなわち地球のデジタル化です。道路上だけでなく、地球上のあらゆる空間を3Dデータで再現することを目指しています。今後、AIが現実世界を理解し行動する「フィジカルAI」の時代が本格的に到来するでしょう。配送ロボットやドローン、さらにはインフラの維持管理など、あらゆる業界で私たちのデータが必要不可欠な基盤となっていくはずです。

ーーそのビジョンを実現するため、具体的にどのような戦略を描いているのでしょうか。

吉村修一:
測量技術を持つ企業を積極的に買収し、事業の枠組みを広げています。今後は道路以外の建物内部や特定施設のデータ化についても、グループ内で完結できる体制を構築する方針です。また、こうした企業買収を通じた事業領域の拡大は、次代の経営人材を育成する絶好の機会でもあります。新しい領域を切り拓き、自ら事業を牽引できるリーダーを社内から生み出すことにも、強い興味を持っています。私たちが整備するデータが未来の社会をより安全で豊かなものにしていく。その実現に向けて、これからも歩みを進めていきます。

編集後記

商社からプロ投資家、そして経営のトップへ。異なる立場からビジネスの最前線を見つめてきた吉村氏が語る「Modeling the Earth」というビジョンは、極めて明確だ。自動運転のための地図づくりという枠を飛び越え、あらゆる産業の未来を書き換えるインフラを構築する。官民一体の体制と、事業買収による領域拡大を両輪に進む同社が、日本発のプラットフォームとして世界にどのような価値を提供していくのか。その動向から目が離せない。

吉村修一/2005年三井物産株式会社に入社。2012年に株式会社産業革新機構(現・株式会社産業革新投資機構)に入社し、2017年に投資家の立場から、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社の社外取締役に就任。その後2020年に取締役副社長、2021年に代表取締役副社長を経て、2022年に代表取締役社長CEOに就任。