※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

「事件が起きてからしか動けない」。警察官時代に抱いたジレンマから民間でのトラブル解決の道を選んだ株式会社ヴァンガードスミス、代表取締役の田中慶太氏。同社は警察では介入が難しい「事件未満」の近隣トラブルを解決する独自サービスを展開。2015年の創業から苦難を乗り越え、現在は約370万世帯を守る防犯インフラへ成長し、2026年3月6日に東京証券取引所 TOKYO PRO Marketへ新規上場を果たした。圧倒的なノウハウを武器に「究極の防犯集団」を目指す田中氏に、創業の原点と未来のビジョンをうかがった。

キャリア警察官への志と民間ビジネスでの「予防」への転換

ーーまずは、起業へと至った経緯を教えていただけますか。

田中慶太:
私は幼い頃から「踊る大捜査線」に憧れていて、目の前の人を助けたいという思いから警察官になる道を選びました。しかし実際に働き始めると、仕事の中身が自分が思い描いていたものと少し違っていたのです。警察という組織はその特性上、明らかに事件性のある事柄を優先して動かざるを得ないのが実情です。ですが、現場を見て「もっと事件が起きないように、予防の方もきっちりやりたい」と強く思うようになったのです。

ーーそこで民間ビジネスでの解決を目指されたのですか。

田中慶太:
最初は制度を変えるためにキャリア警察官になろうと考え、当時の上官に宣言して、一時的に退職しました。その後、生計を立てるために民間企業に入ったのですが、そこでの経験が私にとって大きな衝撃でした。法律で決められたことだけをやる世界から、ゼロからビジネスをつくり出していく民間のスピード感に夢中になり、事業会社での仕事にのめり込んでいったのです。「社会の仕組みを変えることは、民間のビジネスでもできる」。そう気づいた私は、事件未満のトラブルを解決するため、2015年に弊社を創業しました。

4年間の無収益期間を経て築いた30万件の解決ノウハウ

ーー創業当時の状況についてお聞かせいただけますか。

田中慶太:
最初は本当にノウハウがありませんでした。警察は「事件になったものを処理する」のに対し、私たちは「事件にさせない」という真逆のゴールを目指すわけですから当然です。そこで知り合いの不動産会社さんからトラブルの相談をいただき、無償で解決にあたりました。法律ベースではなく双方の感情を鎮めて我慢して生活できる状態にするという独自の評価軸をつくり上げるために研究と実践を重ねました。

ーーその仕組みがビジネスとして成立するまでどれくらいかかったのでしょうか。

田中慶太:
サービスとして成立し売れる状態になるまで4年かかりました。その間はお金をいただけなかったので貸し別荘などの不動産事業で食べていました。しかしこのお金にならない4年間に積み上げた経験こそが私たちの最大の強みです。現在までに30万件を超えるトラブル解決の実績があり、これだけの実践経験とデータを持っている会社は他にありません。この圧倒的なノウハウがあるからこそ、業界大手の管理会社を含む、多数の企業に導入いただき、今では約370万世帯をサポートする巨大な防犯インフラ基盤ができています。

TOKYO PRO Market上場と「3000万世帯」のインフラ構想

▲日々の鍛錬のために、社内には柔道場がある

ーー上場後の展開をどう描いていますか。

田中慶太:
現在370万世帯という数字は私たちが目指す3000万世帯という目標のまだ10%ちょっとに過ぎません。日本の約6000万世帯のうち半分を私たちがカバーすれば、交番の手前で事件未満のトラブルを受ける「究極のインフラ」になります。上場はそのための通過点であり、採用活動やアライアンスにおいて安心感や信用力を高めるための重要なステップだと捉えています。最終的には日本人のライフスタイルを変えるほどのサービスへと昇華させていきたいです。

ーーサービス内容もさらに拡大していく予定ですか。

田中慶太:
私たちは、「防犯のブランド」として、ノウハウと実行力を兼ね備えたプロ集団を組織し、サービスの幅を広げています。相談受付だけでなく一昨年からは身辺警護の部隊も組織し、トラブルが危険な状況に発展しそうな場合には実働部隊が対応できる体制を整えました。またサービスを販売してくださる不動産店舗や携帯ショップ向けに防犯訓練も提供しています。単なる相談窓口にとどまらず防犯に関するすべてにおいてブランド化していきたいと考えています。

ーー最後にこれから一緒に働く仲間に向けてメッセージをお願いします。

田中慶太:
採用において私が一番こだわり、決して譲れないのは「勤勉であるか」と「正義感が間違っていないか」という点です。トラブル対応は精神的な負担もかかりますが、困っている人を直接助け、感謝の言葉をもらうことに大きな喜びを感じられる「おせっかい」な性格の人でないと続きません。特に元警察官の方などにとって、かつて培った経験が私たちのビジネスではそのまま「社会をつくる力」へと直結しやりがいに変換されます。このビジネスモデルを心の底から愛し、社会のインフラをつくることに自分の人生を費やす価値があると感じてくれる方であれば大歓迎です。ぜひ一緒に新しい社会の仕組みをつくり上げていきましょう。

編集後記

元警察官という経歴を持つ田中氏の言葉には、社会課題を本質的に解決しようとする強い覚悟が滲んでいた。コロナ禍での資金繰りの危機には自己破産すら覚悟して事業を存続させようとしたというエピソードからも、並々ならぬ執念と熱量がうかがえる。「事件未満」のトラブルを未然に防ぐというこれまで誰も成し遂げられなかった領域をビジネスとして成立させた株式会社ヴァンガードスミス。TOKYO PRO Market上場を足がかりに、3000万世帯の防犯インフラへと駆け上がり日本人のライフスタイルをも変えうる、同社の今後の飛躍から目が離せない。

田中慶太/1981年北海道生まれ。2003年、北海道警察官を拝命。「事件未満のトラブル」に悩む人々を目の当たりにする中で、自身が求める正義と人助けの在り方を追求し、民間へ転身。不動産金融会社の役員等を経て、2015年に起業。元警察官が初期から収束まで対応する「近隣トラブル解決支援サービス」を展開し、2026年には累計会員数340万人を突破した。誰もが安心できる防犯インフラの構築を、一貫して目指している。