※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

株式会社ゼロエミッションは、東京・多摩地域を中心にリユースショップのフランチャイズ店舗を展開している。同社を率いる代表取締役社長の永長照敏氏は、親族が創業した企業の子会社代表を経て、2021年に現職へ就任した。目先の利益よりも「信用」と「プロセス」を重んじ、社名が示す「廃棄物ゼロ」の実現に向けて独自の取り組みを推進している。現場スタッフへの権限移譲や、素直さを最重視した組織づくりで成長を続ける同社の経営信念と、次世代を見据えたビジョンをうかがった。

「損して得取れ」 目先の利より相手の思いを優先する経営の原点

ーーまずは、永長社長のキャリアの原点についてお聞かせください。

永長照敏:
幼い頃から親族が商いを営む背中を見て育ったこともあり、小学校6年生のときには将来の夢に「社長になりたい」と書いていました。しかし、実際に社会に出てから、自らトップになりたいと強く志願したわけではありません。まずはリンナイ株式会社や親族が創業した株式会社ムラウチにて現場や関節部門などを経験しました。そうして目の前の役割を全うしていく中で、親族企業という枠を超え、周囲から「任せていただける」存在へと成長し、今日に至ったのだと感じています。

その後、弊社の子会社で代表を約5年間務め、2021年に弊社の代表取締役社長へ就任しました。さまざまな現場で培った経験や、先代たちから学んだ姿勢のすべてが、現在の経営を支える土台となっています。

ーー経営において最も大切にされている価値観は何ですか。

永長照敏:
私が第一に置くのは「信用」です。経営においてはどうしても自社の利益を優先してしまいがちですが、私は相手の思いを尊重することを軸としています。叔父より聞いた話ですが、昔のムラウチ電気時代に駐車場が不足した際、近隣の方が土地や建物を売りたいと声をかけてくださりました。その際、私たちは先方の希望する提示額で買い取っています。相場より高額だったかもしれませんが、買い手の利益より相手の状況を優先し、長年商いをしてきた地域での信用を重んじた結果なのです。「損して得取れ」と言いますが、目先の利益を追わない姿勢は、祖父の代から続く親族の背中を見る中で自然と培われた信念と言えます。

ーーそうした考え方は、社長ご自身の経営判断にどのように影響しているのでしょうか。

永長照敏:
信用を築くためには、目先の結果ではなく、そこに至る「プロセス」こそが重要だと考えています。そのため、社長就任後も急激な変革を起こすのではなく、先代が大切にしてきた根幹を守り、プロセスを重視する姿勢を貫いてきました。

弊社の経営理念には「社会のためになるか」「お客様のためになるか」「社員・スタッフのためになるか」「会社のためになるか」という問いがあります。新たな施策を実行する際は、常にこの理念に照らし合わせるのです。売上高という結果だけを追うのではなく、「接客の質が向上したか」「店舗が清潔に保たれているか」といった地道な過程を評価し、着実に組織の底力を高める文化を育てています。

廃棄率約2%の独自性と現場に光を当てる自律型組織

ーー貴社の事業における強みや独自性はどういった点にありますか。

永長照敏:
最大の強みは、値段がつかない品物であっても、お持ちいただいたものを極力お断りせずにお引き取りしている点です。社名である「ゼロエミッション」には、資源循環型社会に向けて廃棄物をなくすという強い覚悟が込められています。リユース業界全体では一定の廃棄が出てしまうのが一般的ですが、弊社は協力会社と連携して細かな仕分けを行い、海外へ輸出するなど徹底的なリユースを実施しています。その結果、廃棄率を全体のわずか約2%にまで抑えており、これが他社にはない独自性です。

また、弊社がフランチャイズ加盟している「ハードオフ」の基本モデルは「地産地消」です。地域で不要になったものを買い取り、同じ地域で販売するため、店舗ごとに並ぶ商品が異なります。弊社ならではの強みと、こうしたお店を巡る楽しみが合わさることが、お客様に選ばれる理由へとつながっています。

ーー組織づくりにおいて、大切にしていることは何ですか。

永長照敏:
現場のスタッフが働きやすく、やりがいを持てるような「場づくり」をすることです。その一環として、現場の一人ひとりにスポットライトが当たる環境づくりを徹底しています。現在97店舗を展開していますが、トップダウンで指示を出すのではなく、事業部長や店長へ大幅に権限を委譲し、自ら考えて行動できる組織体制にしています。私自身は現場の細かな部分まで口出しするのではなく、定期的な店舗巡回をして社員やスタッフさんに直接ねぎらいの言葉をかけるよう心がけているのです。

また、環境整備にも注力し、「向こう三軒両隣をきれいにする」といった地道な活動を日々実践しています。この凡事徹底が高い収益性を支える組織の規律を生み出しています。

さらに、モチベーションを高めるための制度として、店長同士が互いの店舗の環境整備状況を視察し、ランク付けをして表彰し合う仕組みも導入しました。上司からの一方的な評価ではなく、同じ立場の仲間から直接認められる経験が、大きなやりがいにつながっています。ゆくゆくは、一度会社を離れても、また戻ってこられるような、長く安心して働ける環境を一層整えていきたいと考えています。

素直さを最大の武器に「2030年廃棄物ゼロ」と循環型事業へ挑む

ーー採用において、特に重要視していることはありますか。

永長照敏:
最も重要視しているのは、素直さや人柄です。これまで採用へ関わる中で、即戦力として期待した方が過去のやり方に固執して壁にぶつかり、離職していく姿を何度も目にしてきました。業務に必要な能力は、入社してからでも十分に身につけることができます。こうした経験から、素直さこそが最大の成長エンジンだと確信したのです。

物事を素直に吸収し、「豊かな自然環境を後世に残したい」という弊社の価値観に共感できる方は、周囲のスタッフやお客様から多くを学び、確実に成長していきます。インターネットなどで情報があふれる現代だからこそ、自分の目で素直に事象を捉える姿勢が欠かせません。私自身も経営者として、今年の個人のテーマに素直な心になることを掲げています。

ーー最後に、今後の展望を教えてください。

永長照敏:
大きく2つの方向性を考えています。1つ目は、2030年までに廃棄物を完全にゼロにする目標の達成です。お引き取りした品をすべて資源や役立つものに変え、弊社が存在するだけで地域の環境が整い、皆様に喜ばれる存在になりたいと考えています。

2つ目は、新たな循環型事業への展開です。私自身、無農薬の自然酒造りを行う親族の影響などから、20代の頃から自然環境に貢献する仕事に携わりたいと考えていました。今後はリユース事業を深掘りしつつ、自然環境により貢献できる事業を構想していきたいと思います。

また、既存の事業においても、買い取った品物や廃棄物、不用品に、アイデアやデザインなど技術的な工夫を加えて提供する「アップサイクル」を強化していく方針です。単なる中古品販売店の枠に留まらず、すべての品物を資源に変える「循環型社会のインフラ」として機能の幅を広げていきたいと思っております。

編集後記

「能力は後からついてくる」。永長氏の言葉には、幾多の人材定着の課題に向き合ってきた現場経験から得た確信がある。目先の結果だけを追わず、地域貢献というプロセスを評価する姿勢は、「ゼロエミッション(廃棄物ゼロ)」という社名に込められた理念を体現しているといえる。一般的な水準を大きく下回る廃棄率2%という事実と、現場スタッフが互いを高め合う自律的な組織風土。確かな理念と地道な実践が結びつくことで、同社の成長は支えられている。すべての品物を資源に変える「循環型社会のインフラ」として、同社がどのような未来を切り拓くのか注視したい。

永長照敏/1973年東京都生まれ。1994年に専門学校を卒業後、リンナイ株式会社および親族企業の株式会社ムラウチにて営業・接客業務に従事。その後、実務を通じて経営の基礎を学ぶ。2012年に子会社の代表取締役に就任。2017年に株式会社ゼロエミッションへ転籍後、人事および業務推進部門を経て、2021年1月に代表取締役社長に就任。